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彼は私に対して一方的に婚約破棄を突きつけ、北の大地へと旅だってしまった。 私はひたすら彼を追い続けた。 ただ一つの言葉を告げるために。 旅路は長かった。 遠い北の国の美しい雪の女王と呼ばれる宝石の研究に取り憑かれた彼。 幼なじみで、両親同士も仲が良い彼。 私はひたすら追いかけた。 手がかりも、やがて路銀も尽きた時に、盗賊に捕まった。 ただそこの首領の娘は私に興味を持って、ずっとここで暮らさないか、と言ってくれた。 どうだろう、と私は思った。 彼女の視線はとても熱く甘い。 その思いに応えてしまおうと心も揺れる。 だけどそのためには。 トナカイを借りて私は彼の元へと走った。 やがて氷に閉じ込められた様な地で、彼を見つけた。 「どうしたんだいゲルダこんなところに」 「私あなたにどうしても言いたいことがあるの」 「一方的に僕が言ったことは悪かったと思う。だが両親も」 「いえそうじゃなく」 私は彼の言葉を遮った。 「そもそも私達婚約していないのよ」 だから破棄もへったくれもない。 婚約したなんて彼の幻想だ。 だけどそんな噂が立って大変なことになっていたのだから、ここは一発横っ面を張り倒しておいた。 そして私は帰るのだ。 盗賊の娘のところに。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.11 23:00:11
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