|
「お前は偽物の聖女だヘリオーネ! よって私はお前との婚約を破棄し、真の聖女であるこのマルレーネと結婚する!」 横には私と同じ服を着た、若い少女。何やらぶるぶる震えているようだが。 「はあ。左様でございますか」 「何だその言い草は! まあいい、とっととこの女を国外に追放しろ!」 「国外、でございますか」 「何度も言わすな! 国外と言ったら国外だ!」 「判りました。それではごきげんよう」 私はさくさくと衛兵に連行され馬車に押し込まれ、国境の森で突き飛ばされた。 やれやれ、と今さらの様に思う。 そもそも王も、こんな四十過ぎた女をひっ捕まえて、唐突に聖女だから結婚しろだ何だと言って面倒だったこと。歳は王も五十がところだから、まあ合ってはいたけど。 そうなると可哀想なのはあの娘だ。まだ十代の前半だろう。 でもまあいい。国境の森は元々私が住んでいた場所だし、何かあった時のために、聖女仕様の服には何かと生きるための最低限の道具や、路銀も仕込んである。 「ああ、あとこれをして置かなくちゃね。新しい聖女様のために」 私は国全体にかけていた加護を解いた。 その後どうなろうが知ったことじゃない。 まあこの性格は決して聖女ではないのだけど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.11 23:01:00
コメント(0) | コメントを書く
[婚約破棄ざまぁ大喜利ショートショート26番・一話500文字以内縛り] カテゴリの最新記事
|