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アンジョンヨン

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2006.10.04
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最近、韓国の日本関係の学会で、在日文学に関するテーマがちらほら見られる。

先日の韓国日本近代文学会で、白樺派と在日文学の関連性を論じた発表、そして、今週末土曜日(14日)も金石範氏をお迎えし、明知大学でシンポジウムがあるようだ。

すでに作品集も刊行されている、大長編『火山島』の作者の話を聴きに、是非足を運びたいと思っている。

私の机の片隅に、氏の『民族・ことば・文学』という本がある。

この度、作品集が完結した在日作家に関する記事(『朝日新聞』のサイト)を以下に貼り付けておく。

****************************************

死を生きつつ悲しみ凝視 『金鶴泳作品集』が完結
2006年10月04日

 金鶴泳(きん・かくえい)(1938~85)ほど、作家生活の全期間を通して死を見つめ続けた人はまれだろう。今年、『金鶴泳作品集』全2巻(クレイン)が完結し、『「在日」文学全集』第6巻「勉誠出版」に主要作品が収められて、文学活動の全体像がつかみやすくなった。とりわけ『作品集』の日記抄は、自死に至る19年間の繊細な内面の律動を伝えて、読む者の心を打つ。

 在日韓国人二世として群馬に生まれ、東京大大学院在学中に文芸賞を受賞し、芥川賞候補4回。デビュー作「凍える口」と遺作「土の悲しみ」―二つの題が生涯の苦悩を象徴している。

 吃音(きつおん)の苦しみを描いた「凍える口」に、研究報告に失敗する場面がある。日記にも同様の体験がつづられ、「今日舐(な)めさせられたこの悲痛を……活(い)き活きと描写したい」(66年3月)とある。「吃(ども)りでなかったら、小説は書かなかったろう」(67年8月)とも。

 土の悲しみは言葉の不自由な日本で鉄道自殺した祖母にちなむ。線路際に仮埋葬されて遺骨は行方がわからず、辺りの土が骨つぼに納められ、「そこに自分の家の不安の根源」(82年5月)をみた。暴力的な父親の存在も「自分の文学の原点」(同年8月)であり、父殺しの夢さえみている。

 日記からは一貫して自死の強迫観念が読みとれる。「〈死の淵(ふち)の傍(かたわら)〉を彷徨(ほうこう)した」(67年12月)。「闇の中で、妻のからだを抱きながら、死ぬことの話」(72年10月)。「小説に行き詰まることは……人生に行き詰まることに等しい」(77年7月)。生活苦から切望した芥川賞の記述も、受賞を逸して「落涙抑ええず」(同年1月)、「あの作品が候補にならないはずはない。そんなはずはない」(83年12月)と痛々しい。

 東京都内でこのほどクレインが主催したシンポジウム「今、金鶴泳文学をめぐって」で、親しかった作家の坂上弘さんが訃報(ふほう)に接したときの思いを明かした。

 「群馬に駆けつけようと家を出た時の怒りはまだ静まっていません。吃音・父親・朝鮮という重いテーマを、もっと書いてほしかったから。『凍える口』ほど生きることの無意味さを書き表した文章を、私はあまり読んだことがない」

 金鶴泳は自分の小説が在日文学という枠の中で読まれることを望まなかった。在日朝鮮人文学や日本文学をも突き抜けた、人間の文学として包括されることを志向したい、という意味の言葉が残されている。

 小説世界は確かに暗いが、いわば死を生きながら凝視した個の悲しみは人間普遍の悲しみと化して、清冽(せいれつ)ささえ感じさせる。眠れぬ深夜、日記に「あじさいを想(おも)う」と記すほど好きだったアジサイが、土の悲しみを吸い上げてあの美しい花を咲かせたかのように。

 いま死を見つめている人に、金鶴泳の小説と日記を読んでほしい。







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最終更新日  2006.10.08 21:30:24
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