韓国人は日本人以上に、政治的関心が高いと感じる。
大学生たちも、たとえば最近の北朝鮮の核問題について、日本の学生以上に関心をもっているのではないだろうか?
先日年配のタクシー運転手が北の核保有を肯定的に話し、また日本の首相としては靖国に行かなければならないし、そうすると国民もうれしいはずだと言うのを聞いた。南北朝鮮戦争を経験した60代以上の年配者は、北に対して、根強い不信感を持ち、親米的な人がいる。その後の世代にあたるのだろう。
北核の問題にからめて、日本の核保有に警戒する論調も起こったが、学生のうちにはそのような韓国メディアの論調に影響されてる者もいる。現在のあべ首相に対しても右よりだという警戒心と相まって、そのような議論が取りざたされる。
いずれにしも、韓国の政治的関心は日本より高いと思う。
日本は安保騒動以来、学生の政治への関心は徐々に薄れていったのだろうか。
とはいえ、韓国の学生も、最近は政治的な関心を薄めていることは確かなようだ。
90年代以降の小説なども、そのような面があるようだ。
その中にあって、李文烈の小説は政治的な解釈を引き出し、話題になっているようだ。
以下は、『東亜日報』日本語サイトより、転載。
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李文烈氏「小説『ホモ・エクゼキュタンス』への政治的解釈は残念」
DECEMBER 09, 2006 07:58
「世の中の小説で作家の政治的・社会的見解を抜きにした小説はあるはずがありません。その見解というのが、現政権や近年流行っている勢力と相容れない内容であるのが問題になったでしょう」
「世界の文学」冬号に長編「ホモ・エクゼキュタンス」(処刑者としての人間という意)の連載を終えた小説家の李文烈(イ・ムンリョル、58)氏。春号から連載を始めたこの作品は初頭から政局への厳しい批判で話題を呼んだ。今回発表された完結編では、80年代の学生運動家だった若手政治家と現政権の失政、北朝鮮への太陽政策などを細かく批判し、物議を醸している。
現在米国に滞在している李氏は7日、電話インタビューで「作家の政治的見解はすべての小説に入っているのに、それぞれの考えに照らして大げさに受け入れ、いちゃもんをつけて利用しているようだ」と話した。知人と夕食を取っていたという李氏は、食堂から外へ出て1時間以上続いた電話インタビューで作品に対する意見を積極的に述べた。
李氏は「太白(テベク)山脈」や「土地」のような小説をみても、作家の社会的・政治的発言は非常に多い」とし「小説で扱う問題が数十年前のものである違いこそあるが、根幹は同じ」と説明する。
小説で注目されているくだりは現在の時局が寒い夜のようだという危機意識から開かれる「寒夜大会」。2章にわたって展開されるこのシーンでは、安全企画部の対北担当者、検察の時局公安、警察の対共分室の幹部OBからなる「三癡会」と退役将軍らの集まりである「落星」分会などが参加し、太陽政策と「内在的アプローチ」を主張する一部識者らを強く批判する。
李氏は、「『寒夜大会』は右翼の極端な一面であり、登場人物も正常的なキャラクターとして描かれていない。みんな時代に利用された後、捨てられた人の立場から極端的な状況の中で話した内容なのに、私の主張のように考えられているが、それは誤解だ」と話した。李氏は「計2800枚のうち、この部分は100枚にも満たないのに、それが作品のすべてで中核として受け入れられているようだ」と残念な思いをほのめかした。
李氏は「韓国社会は、右派的な解決策を捨て、左派的解決策を取ることにしているようだが、それは得策ではないと思われる。作品は結果として右派の肩を持つ格好になったが、むやみにある一方を支持するために構想したのではなく、小説の美学を考え、深く悩みながら書いた」と強調した。また、「かといって、右派が正解とは考えていない。現状で右派が解決策になれば、虎を追い出して狐を招き入れた格好になりかねない。真の代案が何かについては、みんなが一緒に深慮しなければならない」と話した。
大統領選挙を控え、このような小説を発表したことを批判する一部の声について李氏は、「韓国が選挙シーズンでない時があっただろうか。政治的介入を試みている、などという話は私への侮辱」と声を荒げて反ばくした。自分の小説がもっぱら政治的に解釈されているのが何よりも不満だという李氏は「この小説はエンターテインメントとして書いたのではなく、美学的装置、哲学的事由に基づいた作品だ」と強調した。また、李氏は「小説で表出された政治的見解の多くの部分は私のものかもしれないが、基本的には小説として書いた。その見解に賛同するかしないかは読者が判断するもので、小説は小説としてみてほしい」と注文した。
カリフォルニア大学バークレー校の滞在作家としてサンフランシスコで生活して1年になる李氏は、年末に帰国して来年初めに渡米する予定だ。その後、米国にどれくらい滞在するかは苦心している。李氏は「もうすぐ還暦だし、これ以上やることがあるだろうか、という考えから長く留まりたくないと思ったりもするが、残った人生のために充電すべきことがあるかについて考えてから、6ヵ月程度にするか、それともそれ以上の滞在にするかを決めたい」と述べた。