ネット予約を自社サイトと楽天トラベルのみに絞った施設さんの記事に思うこと
知り合いの数人が転送していた記事で知りました。ネット予約を自社サイトと楽天トラベルのみに絞った施設さんのブログ。二日前に書かれたこちらのエントリーは、「【重要】ネット予約は弊社自社サイトと楽天トラベルのみとなります」と題され、これまでおこなってきた複数の予約サイトからの経路をなくしたことが書いてあります。書かれた方の真意を曲げることなくお伝えするために、全文はこちらのリンクからご確認いただければと思いますが、これを読む中で私が感銘を覚えた記述がありました。それは、「なぜ楽天トラベルのみは残したのか」という理由について書かれたこちらの文章。予約サイトは「施設概要」の比較検索からスタートします。「露天風呂の有無」「ビーチまで徒歩5分」「駅から徒歩5分以内」「温泉」「部屋で夕食」などなど。そんな検索で希望施設を絞り込み、最後はクチコミで決める。色々お聞きしたり調べたところ、お客様の予約導線としてはこれが多いようです。でも、これだと宿側の思いがお客様に伝わりません。どんなお客様にお越しいただきたいか、の情報不足となりがちです。予約サイトの中でなぜ唯一楽天トラベルにだけ部屋出しをしているのか。楽天トラベルだけが自社の特徴や「思い」を乗せられるサイト作りが可能だからです。施設のいいところ、思いをきちんと伝えてくれる予約サイトと判断したためです。なぜこれに感銘を受けるのか。実はこれには私達の深い思いがあります。施設さんに“白紙の自由に表現できる場”(=カスタマイズページと名づけられたインターネットページの編集機能)をリリースしたのは、2005年でした。あらためて振り返ると、もう9年も前になるんですね。まるで昨日のことのように鮮明に覚えています。当時私たちが何を考えてこの機能を付加したか、ちょっと説明をさせていただきます。旅行代理店が登場して長らく、宿泊施設の情報は店頭に陳列された「パンフレット」に記載されるものでありました。ページ数に限りのあるそれは、「料理例」などと注意書きのついた小さな写真が中心で、とても宿泊施設の全容を伝えるようなものではありません。お客さんはカウンター窓口の担当者との会話などから限られた情報を収集しながら、宿泊先を決定します。この場合、情報が限定されているゆえに、「価格」が決定要因の大きな部分を占めてしまいがちです。たとえば、3つの宿が並んでいて、A施設 9,800円B施設 10,000円C施設 10,500円だったら、皆さんどの宿を選びますか?安いほうが良いに決まっていますね。しかし、こうだったらどうでしょう?A施設 9,800円 「駅から徒歩1分。地下道で雨に濡れずにご来館いただけます。隣にはコンビニエンスストアもあり、ビジネス街へのアクセスも楽々です。」B施設 10,000円 「50年続く檜の風呂が自慢の宿です。スタッフが毎日心を込めて磨いています。森林の若葉を眺めながら広々とした開放感をお楽しみください。」C施設 10,500円 「シェフが三ツ星レストランで修行を積んだ、ビーフシチューが美味しい宿です。セラーには常時300本以上のワインを揃えてお待ちしています。」必ずしも皆さん一番安い9,800円の施設を選ぶわけではないと思います。より詳細な情報が付加されれば、お客さんは趣味趣向やどんな旅行をしたいのかによって、自分の求めに合致した宿が選びやすくなります。「行ってみたらイメージと違っていた」というのは、利用するお客さんにとっても、受け入れるお宿さんにとっても不幸なことです。求めていたことと実際が異なると評価も下がります。下がった評価は負のスパイラルを生み出します。そんな旧来型パンフレット商売の持つ、ミスマッチを起こしやすい構造を回避しようと考えてつくったのが“カスタマイズページ”でした。「パンフレット」は編集の権限を旅行代理店が持つものでしたが、“カスタマイズページ”はページ編集の力(=それはすなわちマーケティングパワーそのもの)を施設さんの手に取り戻し、宿泊業界が自らの足で立って商売を行なっていくものだと私達は考えました。それは私達が目指す“エンパワーメント・モデル(Enpowerment model)”だったのです。またビジネス的な観点からもそれはあるべきものでした。私達のサイトは売れた部屋の代金に応じて一定のマージンをいただく仕組みでしたから、単に安い部屋ばかり売れるのは事業としても好ましくないわけです。お客さんの満足度を上げ、施設さんのサイトの使い勝手を良くし、サイトの運営者も利があるという発想で私達はこれをリリースしました。しかし正直、軌道に乗るまでは口で言うほど簡単ではありませんでした。「なぜ自分達がパンフレットを作らなくてはいけないんだ?」「旅行代理店であるあなたたちの仕事でしょう?」こんな意見を施設さんから頂戴したり、またはやる気があってもページ編集のスキルがなかったり、そもそもマーケティングというものの考え方について一から説明が必要だったり、などなど。施設さんと、そのサポートを行なう楽天トラベルのコンサルタントが、二人三脚で一枚一枚カスタマイズページの数を増やしてきました。ページを充実させた施設さんの売上が伸び、お客様からの評価も上昇した成功事例がぽつぽつ出てきてからは段々とスピードが上がり、カスタマイズページの利用施設が1万軒を突破するのに一年はかからなかったように記憶しています。・・・そんな“カスタマイズページ”の機能を、上の施設さんは「予約サイトの中でなぜ唯一楽天トラベルにだけ部屋出しをしているのか。楽天トラベルだけが自社の特徴や「思い」を乗せられるサイト作りが可能だからです。施設のいいところ、思いをきちんと伝えてくれる予約サイトと判断したためです。」とおっしゃっていただきました。本当にありがたいお言葉です。あのとき、この仕組みをリリースして良かったとあらためて思いました。共に苦労して導入した楽天トラベルのスタッフの皆がそう感じていると思います。佐津温泉 民宿 美味し宿かどや さんのページはこちらから。中村晃一