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カテゴリ:サブカル我流評論
ここまで主人公が卑劣で卑怯で冷酷で邪悪な奴はいない…。
って、いたか。 デスノートの夜神月だった。 耽美なキャラでありながらも、黒くも澱んだ野望を抱いているところが似ている。 ルルーシュと夜神月の二人の共通点は、目的意識が善意であることから出発するのだが、両者共にとあるターニングポイントで歪む。 主人公にすることで、歪んで行く様が判るのだが、意外と気付かない。 北斗の拳のラオウこそ当代切っての悪役だが、歪んでいくこと詰まりターニングポイントが殆んど後付けなため、こちらもその過程が見えて来にくいのだ。 ラオウはエゴイズムこそ天を掴むこと、翻意は強さのみを追い求めること(と一応はしとく)であるが、大義名分は修羅の国まで攻めて乱世を治めることである。 一挙両得の感があるが、ラオウもルルも似たもので、両者の利己主義が国作りという申し訳程度なオマケにしている。 なんでかラオウの話中心になっているが、ラオウにしてみれば北斗神拳伝承者への道が絶たれたから他のもので接ぎ当てをして充足しているように見える。 辻褄を合わせて見れば、最新作の映画準拠として考えるべきである。 実兄カイオウが倒せないから北斗神拳を身に付けてリュウケンの下へ行く。 これがラオウの言い訳なのだが、ジュウケイとしては琉拳(劉家拳)の伝承者を神拳伝承者なき所に送るという掟の為と、来るべき最終戦争後の無秩序世界を統治すべく体一つでも大丈夫なように鍛えさせておくとする理由から来ている。 そもそもラオウとて幼き日はそんな周りの大義など知る由もないのである。 ただ、世代交代もあって、最強の名を恣にした時に隠れていた目的が目覚めて来た訳だ。 自分が世の中を動かせる、という立場になる。 しかしこれもまた、ラオウが泳がされていたのも、南斗六聖(シンやサウザー)やケンやトキ、リュウケンやカイオウがほっといていたからに過ぎない。 ラオウの限界はサウザーを倒せないことにある。 正に卑劣な悪役そのものなのである。力の限界を知らずのうちに気付き始め、誰か代わりの者に嗾けさせて様子を見てから倒すと言う或いは倒させる方法に出る。 これこそが権力者の態度そのものだ。 自分は戦わずして漁夫の利を得る行為に出る。 得てして権力者=悪役という構図が浮かび上がる。 話が戻るが、ルルもまたこの様な悪役にピタリと当て嵌るのである。 勝つため、目的のためならどんな手を使ってでも成し遂げる。 個人、妹ナナリーの為ならば、世界が壊れてもお構いなし。 同志すらも普く大義名分を被せて火の玉にさせることも、これまた却って爽快だと個人的に感じた。 大分外れたが、夜神月の場合もまた、自分の思い通りの世界を作り、仲間だった者を捨て駒にさせてしまう悪逆非道ぶりを発揮する。 婚約者ミサミサはライト=キラにとっちゃ、オマケみたいなもんだったし。 対等じゃなかったもんね。 自分の意向にそぐわなきゃ切り捨てるような奴だし。 自分の父すらをも同情しない徹底した冷徹さもあったわけで、これもまた、ルル=ゼロの直接的な繋がりのある母と妹以外に全く関心がなく、たとえ自分と同じ皇族であろうと殺すという行為にも出る所が同じだ。 権力闘争ってのは、個人間のエゴがそれが果ては大義へと繋がり、無関係な人々を巻き込んで行くものだ。 そういえば、歪んで行く分岐点てのは…確認出来る筈なのだ。 悪役にとっての「敵」即ち現状維持をする勢力が登場することによって初めて現状打破する役が敵となるのだ。 ライトに対してL、ルルに対してのスザク、ラオウにとってのケンシロウ。 しかしラオウの場合は始めから無秩序であって悪とされるのは、その恐怖政治を敷くことである。 出る杭は打たれるとは言うが、現状が腐るとそれを打破すべく立ち上がる。 しかしルルの場合は世界の秩序なんか後付けで、当初から皇帝を打倒することで安心出来る世界を作るというせせこましい目標しかない。 さて、ライトの場合はなんであるか。 これが一番オーソドックスなのだが、善意で始めた行為が結局自己を満たすものでしかなかったということが、後々の展開ではっきりとしてきてしまうのである。 ライトの本質は悪である。 ライトも終盤でニアにライトの本質を見抜かれ、諭されてしまう。 これもまた、スザクが決戦の際にルルに対して正論をぶちかますのと同じである。 そういえば…悪役が主人公てのはこうした最近のものではなく、ちょっと前までの美少女ゲームのジャンルにヒロイン達を追い詰めて苛め抜くのがあった。 いわゆる鬼畜ゲームである。 または美少女アニメとでもしておこう。 これらの主人公は等しく世間から見れば悪そのものなのだ。 それがやはり、流行るのは現状の正義に倦んでいるからだろう。 型通りの正義論ばかりでいまいち伝わりづらい。 犯罪も減らないし。 寧ろ悪の過程を真っ向から描いた方が正義の本質が相対化出来ていいのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.01.17 02:54:32
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