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2006年05月03日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
第6紀

今まで身辺に持っていたというか、溜めていたものを整理整頓して見ると、最近思い出してどうしているだろうとか、会いたいものだとか、そう思っていた人たちに関する情報が、紙媒体のあれこれの中から、出て来る。これはあたかもぼくが自ら望んでそう選んだように、ぴったりと、切り抜いて変色した新聞記事だとか、その他雑多な紙片の間から出て来るのである。不思議なことだと思う。ぼくの手と指がその断片を堆積の中から、それと知っていて選び出すようだ。その選ばれたものの中には、自分自身で書いた文章もあって、多分16歳か17歳のぼくの文章に次のようなものがあった。こうして引き写してみると、今と何ら考えている事は変わらない。これはどういうことだろうか。そのひとの人生のあり方は、既に10代で定まっているということなのだろうか。それとも、文字を教わって、意識をそう文字であらわし文と成した瞬間に、人生の航路、命脈が決するのだということなのだろうか。そう考えても、おかしくはなく、また実際に実感としても、こう書く事に嘘はないという感じがある。これを、最近頻りに思ういい方で言えば、人生は繰り返すといういい方になるだろう。今読み返すと、これはそのひとの死に関する考察だということ、すなわち今生きていることの意義と意味を文字通りに必死で考えていると読む事ができる。このような文章である。

「或日不意に、過去の時間の一切が無に帰しているのが解った時、人は今自分の内や自分の辺りに在るものに執着せざるを得なくなる。いや、別段執着せずともよい。が、やはり気にせざるを得まい。さうしてすべてが新しい相貌を帯びて蘇る。

誕生の時から其の人独自の時間が始まる訳だ。他人についても同じだろう。他人との間に生活している以上、他人との時間の共有という事も考えられる。しかし、その人自身の時間だけが一切意味を失って消滅したら、他人と共有していたはづの時間は一体どうなるのだろう。今いるはづの自分はどうなるのだろう。過去が意味を失っても、やはり誕生して時間を渡ってきた肉体だけは存在する。いや、そんなつまらぬ事ではない。昔は一笑に付した世界、また其人自身も軽く見ていたものが、空白の時間にすっぽりとおさまるやうになる。夢、活字を通した想像の世界、観念の世界等々が、新しく失われた時の中かから蘇り、跳梁跋扈しはじめる。夢やとりとめのない想念がそれ自身解釈を迫って来る。

昔居た場所を今は離れているとしても、それは蘇る。それは空間をも越えることができる。きっとこの話は誰かの個人的な経験に過ぎぬといはれるかも知れない。しかし、死者が蘇り、私の辺りで動き始めたら話は別だ。私は他人と時間と空間を共有しやうとする。恢復しやうとする。現実と非現実(と一般にいわれている)ム世界の今のー歪みから、その誰かには新しい生活が始まるのである。表向きは、一見何の変哲もない日常生活が営まれているやうには見えることだらう。

しかし、だから、また、失われた時間といふのも、それなりの意味は持っているのだと今でも考えている。」

ぼくは、いや当時のわたくしは、このような世界に第6紀という名前を与え、ノートの題名としている。今のぼくならば、無名に徹することと一言でいうだろうな。Brodsky ならばNew Life の前提だというだろうか。今読み返すと、これは、ぼくのNew Lifeなのだ。これから枝葉が生えて来るInfinitiveの散文だ。詩心があるだろうか。Joseph BrodskyのInfinitiveを、なりゆきに我が身をまかせつつ、解釈し、翻訳することにしよう。翻訳とは、何かぼく自身の人生のessenceであるかと今日も身辺の整理をしていて思ったことだ。捨てなければならず、捨てることはできない。できることは、忘れることだが、それとても深く忘れるのであるから、実は思い出すことをしているのだ。何を。その目的語、objectによって千変万化する品詞、動詞の原形が、infinitiveである。





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最終更新日  2006年05月03日 08時19分05秒


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