カテゴリ:戯言
「今日はどうしたの? 大事な話がある、だなんて」 「うん。とても大事な話があるんだよ」 「どんな話?」 「結婚しよう」 「……は?」 「結婚しよう」 「そりゃまた、えらくストレートなプロポーズね」 「うーん。気のきいた言葉が思いつかなかったんだよね。ほら、僕って理系だし」 「いや、それにしても、もうちょっとヒネった方が良かったんじゃないの?」 「たとえば、どんな?」 「ええと、俺の為に毎朝味噌汁を作ってくれー、とか」 「でも、僕は、味噌汁は好きじゃないから」 「いや、好きとか嫌いとか、そういう話じゃなくてさあ。てか、アンタって何が好きなの? 何を食べても美味いとしか言わないけど」 「カップラーメンは大好きだよ」 「ジャンクフードじゃん」 「いやいや、君はなんて事を言うんだい。カップラーメンを馬鹿にしてはいけないよ。お湯を注いで三分待つだけで美味しいラーメンが食べられるんだ。実に素晴らしい。科学の勝利だ。カップラーメンがどれだけ多くの一人暮らしの若者を支えていると思っているんだい? カップラーメンがなくなったら日本は滅びるよ。長期保存ができて安くて手軽で味も良い。僕はカップラーメンを愛していると言っても過言ではない。朝、昼、晩と三食カップラーメンでも飽きない。カップラーメンさえあれば他に何もいらない」 「でも、毎日カップラーメンばかり食べていたら、栄養が偏るじゃない!」 「栄養のバランスなんてのは、サプリメントで補えばいいんだよ。今は健康ブームのせいなのか、必要なものから不要なものまで、栄養補助食品が山ほどあるからね。それに、こう言ってはなんだけど、君は栄養士としての資格や知識があるわけでもないのに、栄養のバランスがとれた食事を三食作る事ができるのかい? 僕の記憶が確かなら、君の料理のレパートリーは味噌汁とカレーとシチューくらいだったと思うんだけど、それではとても――」 「もうお前なんか知らん! カップラーメンと結婚すればいい!」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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