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ニッポンとアメリカの「隙間」で、もがく。

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2012.05.03
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驚くことに、ルナが裁判所をテーマとした小学生対象のポスターコンテストに入選した。

「驚くことに」と書いたのは、たとえ親の贔屓目を抜きにするどころか倍にして足したとしても、入選するような代物とは思えなかったからである(笑)。まあ、あえて言えば、構図的にはユニークだったからなのかもしれない。他の生徒の作品は裁判所の全体図を描いているものが多かったが、ルナのは、画用紙のおよそ4分の3を占めるスペースに、でかでかと
「Justice (and) Law」
と書いてあり、その下に、この前、学校にお話をしに来てくれたという地区裁判所の裁判長が「あなたは無罪です」と笑顔で言っている、というものである。まあ、この大胆な構図は大胆なルナの性格がそのまま反映されたみたいなもので、そこが審査員に訴えるものがあったのだろうか?普段は褒めるアメリカ人の典型みたいな夫も、なぜこの絵が入選したのかと問うと、「うーん」と返事に詰まっていたので、やっぱり良く分からないんだろう。

でも、まあ良い。

その表彰式が行われると言うので、家族全員で出席することにした。

場所は2駅先にある地元の裁判所。建物はオンボロで、こう、どの国の役所にも共通の「どんより感」が漂う。しかも、この道ひとすじ勤続ン十年みたいなオバちゃん事務官がビシリとその場を仕切っているのもこれまたお役所なり。

通されたのは、実際に裁判が行われる法廷である。まるで映画やドラマのセットみたい、と私は一人興奮する。いやあ、映画やドラマはこの本物を元にセットを作っているのよね、と当たり前のことを今さらながら思う。天井はステンドグラスの吹き抜けになっていて、これはなかなか素敵。本棚の中には、手にしたらハラリと崩れ落ちてしまいそうに古くて分厚い本がずらりと並んでいる。

そのうち、裁判長が入場し、全員起立!の号令がかかる。続いて「忠誠の誓い」を全員が述べることになった。アメリカ合衆国旗の前で右手を胸に当て、誓いを述べる、あれである。全員が誓いを唱える中、私は部外者なので、再び、きゃーかっこいー映画みたーい、と心の中で叫び、これじゃ単なるミーハー。

式次第に従い、裁判長とその隣に座っている下院議員のスピーチが始まる。いつも思うのだけど、こういう時の、こういうアメリカの人達のスピーチって本当に上手い。その理由を考えてみたのだが、きっと、小難しいことは言わず、聞き手と同じ目線に立って話をするからだと思う。日本でも、たとえば、話が上手な校長先生っているけど、それはきっと、子供たちと同じ目線で、子供たちも分かるような話を子供たちに分かるような話し方で話すからだと思うのだが、それと同じだ。

この前ルナの学校にお話しに来たという裁判長のスピーチは、子供たちの悪い行ないと言うのは何かと注目されがちだけれど、こうして、良い行ないに対しても注目すべきだ、みたいなことだった。整った白髪の下院議員は、地元出身とのことで、しかも、我が家の近くに実家があったらしい。この辺では良く見かける、トリプルデッカーと呼ばれる3階建ての縦に細長いアパートに、これまたこの辺では良く見かける、一番下に自分の家族、その上におばさん家族、またその上も親戚家族が住む、といった環境で育ったのだとか。おばあちゃんはイタリアからの移民で英語はまともに話せなかったけれど、教育は大事だといつも話していたそうで、一族の中で大学に進学したのも自分が初めてだったとのこと。子供の教育のためにアメリカに移住し、自分はいわゆる3K労働で身を粉にして働き、子供はその親の期待を一心に受けて育つ。。。といった筋書きは、現代のアメリカでも健在だ。この下院議員だって、そういう意味では生きた歴史の証人みたいなもので、そういう人が目の前にいる子供たちに向かって、「いいかい、君たちは世の中を変えることができるんだ」なんて言うと、やっぱり説得力があるわけだ。

この表彰式には裁判所の関係者や議員などが出席すると書いてあったので、やはりそれなりの格好をして行った方がいいのか迷ったのだが、少なくともルナぐらいはきちんとした格好をさせようと、数ヶ月前に義母の誕生日パーティーのために私の母が作ってくれた黒地に白い水玉のワンピースを着せた。案の定、夫は何も考えていなかったようで、「制服のままでいいんじゃないの」なんて言ってたが、真に受けずにホントに良かったぜ。

いや、普通の服を着ている子供も、もちろんいた。中高生の中にはスーツ姿でバッチリ決めている子もいたが、よっぽど公式の行事でない限り、服装がバラつくのがアメリカの面白いところ。例えば、この地区はヒスパニック系移民が多いのだが、彼らは、晴れの日の服装となると、社交ダンスラテン部門という感じの、明るい色の、ちょっとピラピラ系の服を着たりする。で、また、これが褐色の肌とメリハリのあるボディーに映えてすごく似合うんだな。ルナと同じ小学校から表彰された女の子も、色は黒だったけれど、やっぱりヒラヒラ系のレースっぽい服を着ていて、頭には大きな黒い造花のついたカチューシャをつけて、それはそれは可愛らしかった。

表彰では、ひとりひとり順番に名前を呼ばれ、前に進み、表彰状を渡され、写真を撮られ、また席に戻って来る。名前を呼ぶのはほぼ同じ人だったが、表彰状を渡す人は、それぞれ違って、裁判所関係者だったり、警察官だったり、地元の名士だったり。プレゼンターがいるなんて、何だか簡易版アカデミー賞授賞式みたいだ。

ルナの学校からは3名が入賞したので、夜遅くにも関わらず、校長先生と渉外部門担当の先生もわざわざ参加してくださった。ありがたいことだ。

表彰はポスターだけでなく、中高生対象としてはスピーチや模擬裁判などの部門もあり、スピーチに関しては受賞者2名がそれぞれスピーチを披露してくれた。見知らぬ人ばかり大勢の前でスピーチをしたにも関わらず、堂々としていて立派だった。

先ほどの下院議員の後に続くような家族構成の参加者が目立った。この地域では大多数を占めるヒスパニック系だけでなく、イスラム教の女性がかぶるスカーフを巻いた女性もいたし、スピーチを終えたアフリカ系アメリカ人と思われる高校生が席に戻る姿を目で追っていたら、隣にいたのはどうも白人の養母らしかった(学校の先生だったのかも知れないが)。

見た目はいろいろだけれど、子供の晴れ姿を笑顔でカメラに納めたりする様子はどの親も一緒で、そして、表彰する側も、誰一人、分け隔てなく、その努力を讃える。都会とは言え、ここはボストンの中でも存在感の薄い、小さな町である。そんな町でさえ、これが当たり前だということ自体、実は当たり前ではないんじゃないだろか。

式の後は、下の部屋に移動して、簡単な会食タイム。トマトソースとチーズ以外何の具も入っていない、冷え冷えに冷え切ったピザに飲み物だけという、これもいかにもアメリカ。ここで、式が終わる時間を見計らって配達された熱々のピザを。。。なんて期待してはいけない(笑)

アレックスは一日幼稚園で遊んで疲れ切った後のお出かけで、でろんでろんになっていたが、何とか最後までもってくれた。

写真撮影も含めて2時間ほどかかった式で家族全員疲れたが、ルナの個性あふれる?ポスターのおかげで、またアメリカの片鱗を垣間見るような経験をさせてもらった。ルナも、アレックスも、これからどのようにこのアメリカ社会に組み込まれて行くのか、興味は尽きない。





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最終更新日  2012.05.03 12:07:58
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