競売の事故物件
宅建業者が仲介する不動産取引は、事故物件だったり心理的瑕疵がある場合は、重要事項説明書にその旨が記載されます。不動産競売の場合、室内での自殺、他殺、自然死などの事件があったかまでは調査する義務はありません。万が一、落札した物件が事故物件だったら...民事執行法75条1項が類推適用した例があります。(不動産が損傷した場合の売却の不許可の申出等)第75条 最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあつては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあつては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。ただし、不動産の損傷が軽微であるときは、この限りでない。2 前項の規定による売却許可決定の取消しの申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。3 前項に規定する申立てにより売却許可決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。裁判事例競売物件での所有者の夫の自殺札幌地裁決定 平成10年8月27日(判例タイムズ 1009号 272頁)《要旨》 競落許可決定後、競売の対象となった居宅でその所有者の夫が1年前に自殺していたことが判明し、民事執行法75条1項が類推適用され、売却許可決定を取消せるとされた事例(1) 事案の概要 Xは、平成10年6月、競売手続(最低売却価額1,160万円)において、札幌市内の土地建物を1,426万円で買い受ける旨の申し出を行い、裁判所は売却許可決定を行った。 本件物件については、平成9年6月、所有者の夫が本件建物の2階和室において自殺をしていたが、現況調査報告書、評価書等にその記載がなく、Xは、平成10年7月、代金納付前にこの事実を知った。 そこで、Xは、売却許可許可取消しの申し立てをした。(2) 決定の要旨 1.民事執行法75条1項は、「買受けの申出をした後」に不動産が損傷した場合について規定しているが、買受け申出をする前に不動産が損傷した場合でも、最低価額の決定及び物件明細書の記載に考慮されておらず、買受申出人が買受申出前にその事実を知らないときは、買受申出人にとって買受申出後に損傷した場合となんら異なるところはないから、同条が類推適用される。また、物理的損傷以外で不動産の交換価値が著しく損なわれた場合も、同条が類推適用される。 2.本件物件において所有者の夫が自殺したのは、買受申出のわずか1年前の出来事であり、本件物件に居住した場合、自殺のあった物件に居住しているとの話題や指摘が人々によって繰り返され、これが居住者の耳に届く状態や奇異な様子を示されたりする状態が続くであろうことは容易に推測できるところであり、本件物件については、一般人において住み心地のよさを欠くと感じることに合理性があると判断される事情があり、交換価値の減少があるということは否定できない。 3.したがって、Xは、民事執行法188条、75条1項を類推適用して、売却許可決定取消しの申立てをなし得るのであり、本件売却許可決定を取り消す。(3) まとめ 競売物件で自殺が最低価額決定等の手続に反映されていないときは、売却許可決定前であれば、売却不許可の申出により、売却不許可決定がなされる(民事執行法71条5号、福岡地判平成2年10月2日 判例タイムズ737号239頁)。売却許可決定後、代金納付前であれば、本件決定のように75条1項を類推適用することになる。代金納付後については、民事執行法53条にいう「不動産の滅失」に比肩すべき重大な事由があるということはできないとして、売却許可決定取消しの申立てを却下したものがある(東京高判平成8年8月7日金融法務事情1484号78頁)。 (不動産トラブル事例データーベースより)つまり、「天災等により不動産が損傷した」というのを自殺まで拡大解釈した例です。この適用は、代金納付前であることが条件のようですので、遅くとも納付前までには現地での聞き取り調査が必ず必要ですね。←大波?小波? 不動産投資の健美家