生きること
昨日の夕方に急にお部屋移動して、うちの病棟へ来た患者さんがいる。うちの病棟には病院にたった1部屋のクリーンルーム(名前のまんま、無菌室)があるので、科に関係なく、必要になった人が転入してくる。クリーンルームとは、無菌を維持しておけるよう、いろいろな設備が整っていて、状態が許すようになるまでは患者さんは出ることができない。家族や医療者含め、入る側も自分達の菌を持ち込まないよう、入る前にマスクや手の消毒、専用ガウン、専用キャップ(頭にかぶるもの)をしてから。今回の患者さんは、外科で皮膚科併科の人だった。他院で胆管癌の診断を受けて、化学療法をしたけれど、病気の進行が早くて治療はもう無理となったんだそうだ。だけど、その化学療法の副作用か原因ははっきりしないけど、全身の皮膚の皮がむけたり、ただれたり、水泡ができてしまった。全身なのでかなり痛々しいし、痛いらしい。免疫力アップの加療はしていても、効果が全然上がらないどころか、データはだんだん悪くなってさえいる現状。最近、病棟でのことでかなりブルーで、それをきっかけに退職(今年度末なので来年だけど)の決意が固まったりして、モチベーション最悪だった。だけど、生きているってだけで素晴らしく感謝すべきことなんだよねって感じさせてくれる、いい患者さんだった。どんな処置にも、どんなケアにも、ささいなことにも「ありがとう」「サンキュ~(個人的にはこっちの言い方が可愛くって好き)」を添えてくれ、とても頑張り屋さんの初老の男性。こんな風になれたらいいなぁと学ばせてもらうことの多い患者さんだけれど、もうすぐ癌に身体は負けてしまうんだよね。十分、心は勝ってるなぁ~と久々に思わせてくれる癌の患者さんだった。仕事柄、逃れられない運命だと知っているから、少しでも安らかに彼が旅立てることを祈るのみです…奇跡を望むより、安楽を望んでしまうことが当たり前になってしまう嫌な職業だな。ちなみにクリーンルーム(無菌室)に入る条件は、白血球が1,000以下になったときです。正常だと5,000~10,000くらいなので、1,000以下の状態で風邪でもひいてしまえば致命的なのです。