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カテゴリ:連載小説
「それで――。」
「その大好きなお姉さんが、高校を卒業したら 俺と付き合うって話になって、”どんな奴”か 顔を見てやろうって? なのに、姉さんの想いは俺じゃないって聞いて 今度は気持ちをぶちまけたくなったか。」 「・・・すみません。 八つ当たりかな。」 「いいよ。気持ちは分かる。 俺だってついこの間、感情が抑えられなくて、 やっちまった事あるんだから。」 「――後悔してますか?」 「・・後悔はしてないよ。 ただ、迷ってる。」 「僕も・・・ こんな話、先生にしてよかったのか迷ってます。 誰にも言わないで下さい。」 「誰にも言わないよ。」 「・・・姉が家を出なかったら、どうしよう。」 「マジな話、そうなったら、お父さんだけに 本当の思いを話して、お前が家を出ろ。」 功介の顔が、晴れたような表情になる。 たった一つでも逃げ道が出来て、ホッとしたのだろう。 ファミリーレストランを出る。 自転車置き場で、功介が自転車のスタンドを上げながら 僕に聞こえるように、独り言をつぶやく。 「やっぱ・・柏田先輩なのかな。」 「少なくとも、俺と君じゃない。 もう追求は止めろ。 相手が誰だって、気に入らないんだから。」 「――はい。先生、ごちそう様でした。 ありがとうございました。」 そう言うと、心の内を話す前とは別人のような顔で 自転車を走らせて行った。 そうなると、僕も誰かに心を軽くしてもらいたかった。 あの日から《咲花》には行っていない・・・。 喜春さんには会いたい。 でも、渡良瀬を変に刺激するのも嫌だった。 自転車を走らせ、帰宅の途中《雪丸》が目に入る。 初子さんの 『・・・喜春は、正直難しいよ。知れば知るほど。』 を思い出す。 ”ボクちゃん”と呼ぶのが気に入らない。 ”入ろうか・・・。” 実際、酒も飲みたかった。 ただ、僕は1人で居酒屋に入った事がない。 緊張する。 それに、本当に仕事中の初子さんが 僕の話を聞けるのだろうか―――。 ―つづく― お読みいただきありがとうございます。 誰かに気持ちを聞いてもらうと、楽になる事ありますよね。 誰にもいえない悩みならなおさら・・・。 あの『初子さん』に聞いてもらいたいって、 それはいじめられたいってこと? 先生ちょっと・・・”M”? でも美青年っていじめたくなるかも・・・。 もちろん愛情の裏返しです♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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