【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

おばさんが作った死語ブログ。人生いろいろに語ります。

おばさんが作った死語ブログ。人生いろいろに語ります。

Freepage List

October 5, 2002
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
 子供、特に幼児に限ってはその笑顔はいいものである。少年犯罪、あるいは性犯罪の低年齢化のイメージも加わって、おばさんは、「かわいい」と言えるのは、思えるのは、せいぜい小学校低学年までかな、と思っている。元々子供は苦手なおばさんだが、「かわいい」と素直に思えるのは、自分も子を持つ親になった事が原因だろう。
 子供の笑顔も殊更ながら、笑い声もこれまたいい。心底、ゲラゲラ笑っている。屈託が無い、とはこういう事の様な気がする。

 さて、おばさんは専業主婦の特権よろしく、平日昼間の買い物に出かける。もちろん、長男と一緒。最近は彼も歩くのが早くなり、追いついていくのが大変である。足は短くても立派に速く歩く事は出来る。おばさんは、彼の進行方向に、あるいはその足元に、障害物はないか、右や左に車が来る事はないか、はたまた彼自身が蛇行して転びはしないかと、心配しながら後ろになり、前になりして、結局おばさん自身がつまずいたりする。昼間っから恥ずかしい。

 そうこうしながら買い物を始める。

 ふと見ると前方に「あの紳士」がご夫人と一緒に買い物を楽しんでいる。彼は年齢不詳の外見で敢えて見積もるなら五十代だろうか。平日昼間なのにいつも出会う。そしてその着ている服・・・・いつも上下揃いのスーツ。そして真っ白なシャツにネクタイ。そして帽子をかぶっている。帽子は、解り易く言うと、「寅さん」の帽子と同じである。色は白の時もあれば、グレーだったり、黒だったりする。スーツも冬ならウール素材の厚みのある生地、夏なら涼しげな生地に今時あまり見ない半袖の背広である。歩き方もそれに似合い、というのかどうなのか、ビジネスマンの歩き方ではなく、背広スーツモデルの歩き方。片手を気障に曲げ、少し小首を傾げながら歩く。そういえば、吉本興行の「ごめんくさい」とか「・・・・じゃあ~りませんか」のしゃべりのベテランがいるじゃあ~りませんか。あの人みたいな歩き方である。
 つまり、平日昼間の食品売り場には目立ちすぎるのである。同伴の女性はごく普通の格好の主婦である。たぶん、夫人であろうが、もしかしたら、彼女の年恰好と彼を比較すると、姉と弟かもしれない。
 他の多くの主婦はどう思っているのか?果たしてその様子は窺い知れないが、おそらく「あ、またあの人来てる。」と思っている事だろう。
 その二人は会話するでなく、いつものように買い物をし、レジを通り、なんということもなく、帰っていく。
 多くの付き添いの夫と同じように、金魚の糞のように後ろを歩いたり、自分の興味のある食品をじっと眺めたりしている。

 おばさんは「その紳士」とレジで一緒になった。ご夫人が会計をしている。その間、「その紳士」は通路でどこを見るでなく、なんとなくご婦人を待っている。
 おばさんは自分の品物がレジを通るので、そのレジスターに注意が移る。当然だが、レジの打ち間違いはよくあるので、現地現物で指摘したほうがいい。おばさんの長男を乗せた店内カートを外側に出し、レジの入力内容を目で追う。今日はちょっと買い過ぎたかな?そんな事を考えながら、財布からお金を出し、支払う。おつりを貰うそれまでの間、長男のカートの事は一瞬忘れる。

 突然、長男が「うきゃきゃきゃきゃ・・・ふふふ・・・きゃきゃきゃ・・」馬鹿笑いしている。どんなに混雑していても、我が子の声は聞き分けられる。その声に驚き、長男を見てみると、やっぱり大笑いしている。何笑ってんだぁ?
 長男の視線の先には「あの紳士」が立っている。顔を歪めたり、ベロ出してみたりして、笑わせているのだ。気障な体勢は変えないが、面白い顔を見せてやっている。
 「うぎゃぎゃぎゃ・・・・はははは・・へへへ・・・」長男はカートの上でのけぞりながら笑っている。
 おばさんは対応に困り、といって一瞬でも相手をしてくれたのだから、白い目で見る理由もないので、ニッコリしながら長男のカートを袋詰め台に移動させる。彼はおばさんの微笑から視線を避け、おばさんにも長男にも視線を戻すことなく、背を向けてご婦人のいるほうへゆっくりと歩いて行った。

 幼児を笑わせるには、それなりの努力というか、コツがあり、簡単ではない。「いないいないばぁ」すりゃどこの子でも笑う、と思っていたら大間違いである。一緒に暮らす親だって、我が子を笑わせるまでには時間と労力が必要である。
 子供にだって「笑う」までのステップと、ましてや初対面の人間に対して「声をあげて笑う」までにはよほどその大人が善人でないと、幼児にも身に付いた防衛本能が働くのだ。
 それらをあの一瞬にクリアして、馬鹿笑いまでさせた「あの紳士」はやっぱ、善人なんだろう。
 
 ご婦人と一緒に並んで帰る「その紳士」の後姿を見送る。今度いつ出会えるかな?
 ふと長男を見ると、「あの紳士」の遠ざかる後姿を淋しそうに見つめている。きっと、おばさんと同じく「今度いつ会えるかな?」とでも考えているんだろうか?
 
 おばさんは幼児を笑わせる技を持っている人に悪人はいないと信じているのだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  October 5, 2002 02:59:36 PM
コメント(1) | コメントを書く


PR

Profile

153

153

Comments

コメントに書き込みはありません。

© Rakuten Group, Inc.