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おばさんが作った死語ブログ。人生いろいろに語ります。

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October 21, 2002
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 天気の良い、とある休日。幼児たちを大きな公園で遊ばせて、弁当を食べ、家路に着く。なんら変わらない、いつもの休日、昼下がり。
 長女はアンパンマンのカセットを聞きながら、お菓子を食べている。長男はすれ違う、車を見つめ、「あ、バシュ~(バス)。オッチ~(大きい)」と母親に訴えている。おなかも膨れている頃だから、直に眠くなるだろう。

 三叉路の交差点、信号待ち。いつも使う帰り道は左へ折れる。しかし今日は違っていた。前に生コン車が2台連なっている。それが鬱陶しかったのか、配偶者は無言のうちに車を左の車線へ移動させる。右に折れるウィンカーを出す。
 ・・・・珍しい方向から帰るんだなぁ、今日に限って。・・・
 左に折れても、帰れないことは無い。少し遠回りにはなるが。
 ・・・・まぁ、いいか、急ぐ帰り道でもない・・・
 信号は青になり、家族を乗せた車は加速する。
 川沿いの道。くねくねと曲がる。途中工事をしていて、停車させられる。
 ・・・・そろそろ曲がる道があるはずだけど・・・・
 この川を渡らなければ、家には帰れない。どこかで橋を渡ればいいのだ。
 配偶者はおばさんの思っていた橋を渡らず、なおも前進する。
 ・・・・あそこの橋渡れば近いのに。なんで渡らないんだろう。ほんとに道、知ってんのか?
 おばさんは不安になる。
 どんどん前進していく車。配偶者は無言である。別の機嫌が悪いわけでもない。全く遠回りな道を選んでいる。
 おばさんはなんだか嫌な予感にとらわれる。元々走りにくい道は嫌いである。慣れない道、くねくねと曲がり前方が見えにくい道、道中で所々工事をしている道、その工事業者の交通整理人が誠に解りづらい合図をする工事の道など、わがまま千万な話であるが、とにかくいつもの道をいつもの様に行けば良い、変わった道は行きたくない。と、思っている。
 意味のない不安に駆られ、おばさんは後部座席から、進行方向をしっかり見つめる。

 また工事で停車、かな?そう視覚から判断された直後、2台前のワンボックスの車がふわりと右へハンドルを切る。
 おばさんは「あー」と大声を上げる。
 「ガシャン」妙に軽い音と共にフロントガラスがバケツの水をかけたみたいに綺麗に光りながら、飛び散り、対向車線を走っていた車の右頭部に食い込む。
 配偶者はブレーキを強く踏み込んだらしく、長女の持っていた菓子袋が長女の足元に転がった。
 けたたましく鳴り響くクラクション。それは故意に鳴らされているのではなくて、恐らくぶつかっていったワンボックス車のものだろう。元々前部のない車だから、その部位も壊れたんだろう。
 数秒の出来事。動いたのは飛び散ったガラス片だけで、その場面そのものはしばらく、ほんとにほんの数秒だろうが、止まってしまった。
 「お菓子が、お菓子が、こぼれちゃった。」
 「ねぇ、おとぉさん、取って。お菓子、こぼれちゃった。」
 その言葉が、止まっていた事故現場の場面に不釣合いで腹が立ってくる。
 「黙ってなさい。」語気を荒げて言う母親に、事の次第がわからない長女は、とりあえず黙る。そのやりとりに異常を感じた長男は不安げな視線を向けながら、じっと押し黙る。
 さっきまで胸に抱えていた「不安」が今度は意味のない苛立ちに変わる。
 
 ぶつけられた車は白いBMW。
 おそらく工事停車に気付かなかったワンボックス車が、停車していた前の車を避けようと右へハンドルを切ったため、対向車線にはみ出し、対向車線を走っていた白いBMWにぶつかったのだろう。
 工事現場付近での走行なのでBMWもそれほど加速していなかったようだが、ワンボックス車はなにげなく右へ曲がるかのようなスピードだったので、わざわざBMWにぶつかって行ったように見えた。

 配偶者は向きを変えてがらんとすいた対向車線を走り出し、今来た道を引き返す。何も知らない、事故現場へ向う車とすれ違う。
 配偶者がポツンと言う。「あのぶつけられた車、過失割合あります、なんて言われても納得できないよねぇ。」
 おばさんの訳のない苛立ちは、なんだか口の奥から吐き気になって出てきそうである。
 「次の信号でこの川渡って、すぐ右の小道を行けば、家に帰る道に出るから。その道通って。狭いから気をつけてね。」可愛げなく事務的に指示する。

 怪我人の救出?事故の通報?事故現場の立会い?
 おばさんは家に着いてから、人間としてやらねばならない事柄を思い出す。それでも、苛立ちや腹立たしさは消えない。

 他人の不幸、それでおしまい?おばさんはほんの数秒の差、ほんの一台か二台の車の差で人が不幸になってしまうこの偶然が憎くて仕方がない。自分でなくて良かった?あんな風にならないように自分は気を付けよう?一体何なんだ。おばさんは変な自己葛藤を繰り返す。
 それでも、きょとんとして「あの白い車、どうなっちゃったの?」と聞いてくる長女を無言でキュッと抱き締めるのだった。
 





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Last updated  October 21, 2002 03:24:17 PM
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