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おばさんが作った死語ブログ。人生いろいろに語ります。

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October 24, 2002
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 焦っている。
 マズッタ、と思っている。
 ハンドル握る手も力が入る。愛車も心なしかスピード上げてかっとんでいる。
 
 そうである。
 おしっこがしたいのだ。
 助手席の長男は呑気にペコちゃんのペロペロキャンディーをなめている。
 そうなのだ。
 おしっこしたいのは、このおばさんなのである。

 自宅から45分かけて通う手話サークルの日。帰りがけには必ずトイレを済ませてから帰路に付く筈だったのだが、サークル終了後、サークル仲間と少し話し込んで、時間を費やし、そのまま話しながら車まで来てしまった。また後戻りするのもカッコが悪いので車に乗り込んでしまった。
 長男は心得たもので、車を発進させようとした途端、「か~しゃん(おかあさん)、ちっこ(おしっこ)」と急を告げたので、駐車場の影で済ませたものの、大人の、しかも女性ともなれば、そんじょそこらでお尻を出すわけにも行かない。

 う~、困った。おしっこが・・・・したい。

 なるべくおしっこの事を考えないように、とにかくアクセルを踏み続ける。
 が、そんな時に限って、信号も赤で、信号待ちの時間がやたらとなが~く感じる。
 太ももに自然と力が入る。視線は進行方向を向いているが、向いているだけで、注意力はほぼ下半身へ集中している。

 どうしよう。このまま・・・・出ちゃったら・・・・。

 幸い、長男はまだ状況判断、良し悪しが飲み込めない歳なので、例え母親が・・・お漏らし・・・しちゃっても、キョトン、として見ているくらいだろう。でもなぁ、この車におしっこ臭さが残ったら困るしなぁ、ましてやシートがおしっこで塗れちゃったら汚ねぇよなぁ・・・・そんな事をモジモジしながら運転しながら真面目に考えている。

 あ~、どうしよう。マジ、出ちゃうよ~。

 トイレ借りるんだったら、どこかな。この辺だと、パチンコ屋はないし、あ、コンビニがもうじきある!よっしゃ、そこに飛び込もう。
 
 車はますます加速するが、前方の信号は赤である。

 だんだん目に映る景色が白黒になってくる。信号の赤だけが視野に入っている。早く青になれ、早く、早く・・・。

 坂を上がりきってコンビニが目に入った時、おばさんは絶句した。コンビニは反対車線側。中央分離帯があるので、右折して入るのは不可能である。

 クッソ~。(・・・この場合、クソでなく「おしっこ~」と言っても過言ではない。)
 反対車線から入れないコンビニなんてすぐつぶれるぞ、さっさとつぶれちまえ!・・・おばさんは心の中で捨て台詞を残し、さらにアクセルを踏み、コンビニの前を通り過ぎる。

 え~っと、次は、次は、何か建物あったかな・・・。と考えながら、ダッシュボードに置かれたハンドタオルをじっと見つめる。あの大きさなら、全部吸いきれるかしら・・・真面目に考える。とにかく真剣である。そのタオルをあてて、尿を吸い取ろうと真剣に考えているのだ。お尻にあてても、ズボンに染み渡るから、効果がない。ナプキンみたいに局部に直接当てればいいぞ。笑い事じゃない。真面目に、真剣におばさんは考えたのである。すばやくタオルを取り、ズボンのファスナーを開け、パンティの中に押し込もうとするが、うまく入らない。まるめて押し込むだけでは入るわけもない。何せ運転中である。こんな状態で事故を起こした日にゃ死んだ方がましだ。片手ではうまくいかないが、きちんと長方形に畳み直す。こんな事をしているのだから、まだ余裕があるだろう、と思われるかもしれないが、こんな尋常でない行為をしていること自体が、既に、余裕も理性ももちろん恥じらいも無くしている証拠だ。
 とにかく、おしっこがしたい。
 車が蛇行しているのは良くわかっている。しかし、幸運にも、後続車は居ない。対向車も居ない。ましてや、パトカーもいない。おばさんの愛車は長男を乗せて、まるで酔払い運転のように、道路の真ん中を走っていた。
 ハンドタオルを装着した途端、おばさんは尿意が止まった事に気付く。うむ、タオルで押さえているので、返って良かったかもしれない。おばさんはそれをいい事に膨れ上がった下半身のまま、運転する。ズボンのファスナーは開けっ放し、目は血走り、車は猛スピード。これは既に狂気である。
 
 すると、前方にガソリンスタンドが見えてきた。
 やった~。トイレ借りよう!

 途端に困った事が生じているのに気付く。そうである。
 膨れ上がった下半身を元に戻さなくてはいけない。スピードダウンしてタオルを引っこ抜く。が、抜けない。太ももの力を抜けば、タオルは抜けるかもしれないが、我慢していたおしっこが出てきちゃう。でも、スタンドに入るまでに、普通の下半身に戻さなきゃ。あぁ、早く、早く。長男が、白々と母親の行為を見つめている。力任せにタオルを抜いたら、弾みでブレーキを強く踏み込み、急ブレーキがかかる。長男の体が危うく浮くところだった。ごめんね、おかぁちゃんが悪いんだよ。 
 タオルを投げ捨て、ファスナーを閉める。ついでに顔の表情も整える。
 やけにゆっくり入って来た車を不思議そうに見つめながら、スタンドマンが誘導してくれる。おばさんは、口元を閉め、ごくごく普通の顔の・・・はずである。
 「いらっしゃいませ」スタンドマンが満面の笑顔でお出迎えである。
 「トイレ貸して」いきなり口から出そうになるが、「レギュラー満タンね、・・・あ、トイレ貸してもらっていい?」などとカッコつけている。
 置いてきぼりにされ、長男は不服そうであるが、構っちゃいられない。そこで待っとけ。

 こうしておばさんのおしっこは、通常の倍以上の量で養老の滝か華厳の滝かと思わせるような水量、水圧で無事に流れるべきところに流されて行った。
 トイレから出て思った事。「あの量じゃぁ、ハンドタオルじゃ無理だったよ、あ~良かった、良かった。」
 何が良かったのかは解らないが、一件落着である。
 
 おばさんは置き去りの長男に普段以上の笑みを浮かべ、車に乗り込んだのである。

 
 





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Last updated  October 24, 2002 03:44:58 PM
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