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いかにも痛そうなこの漢字。
そうである。痛いのだ。おばさんの右手親指の指紋があるほうが痛いのだ。 味噌汁のだしをとるのに、煮干を裂いていた。その煮干の骨の小さな小さな先端がどうも刺さったらしい。 痛い。痛い、というのか、疼く、というのか、事あるごとにチクッと、ズキッとする。 刺さった瞬間はさして苦にしなかったが、だんだんと痛みと共に気にし出す。気になったらどうにも我慢出来ない。そのうち抜けるかなと思っていたが、よく使う指なので余計に深く「埋没」したらしい。日が経つ内に指の皮が覆いかぶさって小さな傷口を修復してしまった。体の新陳代謝がそうさせている。ふむ、まだ若い証拠だ・・・などと関係ないことを結びつけて考えたりする。 見かけはいつもの親指に痛みだけが残る。 困ったな。どうしよう。 おばさんは意を決して・・・というほど大袈裟なもんじゃないけど、救急箱から棘抜きを取り出す。 蘇生された皮を棘抜きでほじくってあたりをつける。・・・たぶん、この辺に「棘」が埋まってるだろう。おばさんの親指の皮は面の皮同様分厚くなっている。痛くもなんともないぞ。剥がす皮の面積を増やして、人差し指でその部位を擦りながら、チクッとする感じを捜す。ヨシヨシこの辺だ。やがて赤い肉が見えてくる。いやピンクかな。・・・うひょひょひょ、まだピンクで若いわねぇ・・・またまたおばさんは関係ないことを勝手に考えている。 「棘」らしいものは見えない。眼鏡を掛けてみる。おばさんは幸いまだ老眼ではない。ド近眼だけど。近眼の眼鏡はこんな時役に立たない。極度に近いものはかえって裸眼の方が見易いのだ。眼鏡をすぐにはずす。どこに「棘」は隠れているのか?触ったり擦ったり棘抜きの角でまたほじくったり、悪戦苦闘である。あぁ、こんなことなら、刺さったらすぐ抜けば良かった・・・。 幼児達がテレビに見飽きて顔を出す。「おかぁしゃ~ん。」長男が心配そうに覗き込む。「何してんの?」「ねぇ、やらせて、やらせて。」長女が腕に絡みつく。幼児達の興味は、母親が「何をしているか」ではなく、我が母が目玉真ん中に寄せちゃってムキになっている様が面白かったのかもしれない。・・・う、う、うるさい。あっち行っとけ。 やがて「棘」は突然、その頭を肉の中から突出させて、おばさんの寄った目玉の視野に入った。透明な煮干の骨の先端。1ミリもないかな・・・。 「棘」といえば、物理的な「棘」もあるけど、言葉の「棘」もある。この世界で「物書き」気取りでHPを開設している以上、言葉に「棘」があってはいけないなぁ・・・といつも考える。文章はその時の自分の情態を露にするものだと思っている。だから余計にそう思う。もちろん実際の対人関係でも言葉の「棘」は十分に注意したい。 心に刺さった「棘」はそう簡単には抜けないんだから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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