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久しぶりに見る顔。いとおしい顔。
どうしても抜けきれない地方訛りで話し掛けて来る。耳慣れた声。あの声が耳元で囁く時、体中の骨が溶けて無くなる様などうしようもないだらしなさを自分に感じる。 今日のご機嫌はどうだろう。何を話しているの?仕事の話?一生懸命話しているんだけれど、よくわからない。聞こえない。…そう、いつもの事。もうわかっている。 「同じ職場で、こんな仲がばれたら、居辛ろうなるやろ、ほてくさ黙っとるけん、約束やで。」 ネンネの私はその言葉を頑なに守り、秘守し続けた。 それがある時、 「田舎の飲み屋の亭主で一生終わるつもりで今日まで修行してきたんとちゃうからな。」その一言で全てが終わったと気づいた時、彼との未来への映像は壊れ果て、秘めやかに燃え続けた恋心は、黒い堅い岩となって暗い谷底に落ちて行った。 「…悪いけど。」彼が唯一付け加えたお侘びの言葉が刺さったまんまで記憶の扉を封印している。 それが訳もなく、きっかけもなく、突如解き放たれ夢に現れる夜がある。 夢の中の彼はいつも笑っており、その哀しい結末を知っているのは私だけだ。そう、だから、私はその夢を見る度にわかっている。 あぁ、これは夢なのだ、だから彼はこんなに優しく微笑み、屈託なく話しかけるのだ、と。 それでも私は嬉しくて、はにかみながら微笑んで、頷いたり、イヤイヤしたりする。「かわいぃな、オマエ…。」彼が目を細めて無言で微笑み、ふと、よそ見をする。何を見つけたのかと心配になり私もそちらを向いた時、目が覚める。静かに、穏やかに、目が覚める。同時に私の心の奥から滲み出るように、失くしてしまった愛おしさが溢れて溢れて哀しさに変わる。部屋の暗さ、布団の感触、空気の冷たさ…、これが現実だと実感した時、そこでまた繰り返し思うのだった。…あぁ、やっぱり夢だった…。 「夢」と言うのは不思議なもので、実際遭遇もしなかった場面が現実の出来事と混沌したままの形で現れる。だからこんな字が存在するのかな…「儚い」…人の夢は「はかない」のだ。 なんとなく、今日はこんな事を考える。 「アタシは、もし、彼と一緒に暮らしていたらどんな人生になっていたんだろう。」 そして、また考える。 「彼は、今頃、思い通りに出世して、人生過ごしてんだろうか。」と。 答えも出ない、夢への問い掛け。 彼は今度、いつ夢に登場してくれるのだろうか。もう見たくない夢ではないが、また会いたいな…と思える彼でもない。 初夢は?とよく話題になるが、おばさんの今年最後の夢は、こんな切ない夢でした…。 迎える新年も皆様にとりまして、良き一年でありますように心からお祈り致します。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 31, 2003 04:13:47 PM
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