(Vn: K.N.記)
林先生の練習では、1楽章から順に、要所要所で止めながら進め、盛りだくさんのアドバイスをいただきました。
例えば…
1楽章
- 冒頭は、メロディーの最初の2小節はモチーフとなっているため、弓を返さずに記譜どおり弾いた方がいいとのこと。そのため、それができるテンポ設定にし、また、弓先で抜けないように薬指・小指も使って弓に圧力かけるよう言われました。一方、裏の8分音符の伴奏は存在感を出し(移弦した方が響が豊かになってよい)、それに続くシンコペーションはメロディーに合わせるのではなく、自分たちで音楽をリードするつもりで、とのことでした。また、第2チェロは記譜どおりのアーティキュレーションで、自然に弾けばいいとのことでした。
- 自分達でテンポを緩めるようにしていたところを何箇所か修正されました。例えば、練習番号1番はtranquillo(平静に)ですが、ビオラのシンコペーションで前に進む種火は残っているので、テンポを落とさないほうがいいとのことでした。また、繰り返しの前でゆっくりしてしまうと、せっかくのヘミオラの形がわからなくなり、効果がなくなってしまうとのことでした。
- 練習番号5番のあと、ffで、チェロが8分音符のスタッカート、ビオラが16分音符、そしてバイオリンが3連音符で刻む、とても盛り上がる部分は、飛ばし弓でやってましたが、弓を置いて弾いた方がいいとのことでした。2楽章の練習番号2番も同様の指摘を受けました。
- 終盤の練習番号12番は、冒頭のテーマが静かに回想的に出てくるのですが、“日が沈む直前の夕日のように、真っ赤に燃えて明るいんだけどまぶしくはない”という感じで、密度濃く弾いた方がいいとのアドバイスでした。
2楽章
- 冒頭の第1ビオラと第1バイオリンのメロディーは、小節毎に頭をつけるのではなく、2小節ひとかたまりにした方がいいとのことで、その視点からボーイングを修正されました。裏の4分音符は、同じ音の場合は2拍目はあまりあたまを出さず、音が動くときに表に出すように、とのことでした。
- 練習番号1番から、第1チェロから始まる16分音符のメロディーの上に、いろいろな楽器が8分音符の和音を重ねていきます。3重和音を弾くときは、上の2音だけが残ると別な和音に聴こえてしまうので、ここの8分音符は長いので、ゆっくりめに、駒の弧の形に沿って弓を動かすよう、アドバイスされました。ちょっとその場で練習しただけでも、和音の鳴り方が、するどさがとれ、重厚になりました。
- 練習番号3番は、チェロが32分音符の音階のメロディーを弾き、そこに他の4本が松葉の動きを重ねますが、この松葉の動きはチェロの動きに添えるのではなく、チェロとは別に弾くので構わないそうです。
- 練習番号4番は、それまでの嵐がやみ、急に視界が開けたような雰囲気で。でも、力の入った感じではなく、明るい音色で歌う、とのことでした。
- 練習番号5番は、第1ビオラがpでSoloを弾きます。Soloのビオラは開放弦はちょっと触れるぐらいでしっかりは弾かず、また、バイオリンの高音の対旋律はどこか遠くで鳴っているような感じで、とのことで、そうすると、とても回想的な雰囲気が出ていい感じでした。この雰囲気は、前々回の練習で、第1チェロが力説した“おじいちゃんが遠い昔を懐古するように”のイメージどおりで、彼はとても嬉しかったのでしょう、二カッと満面の笑みを浮かべていました。
- 最後は、ずっと短調できていたところが、終りの6小節目から長調に変わりますが、その転調の和音を意識するようにとのことでした。
ここまでで、2時間半ぐらい経過しており、残りの40分ほどで、3・4楽章をみいただきました。
3楽章
- 冒頭の4分音符は短くとのことでした。なるほど、喝舌よく聴こえます。
- TRIO は Animato なのですが、そのアウフタクトをどう扱うかは悩めるところです。譜面どおり捉えると、アウフタクトは前のテンポのままで、TRIOに入ってからテンポを変えることになるのですが、色々なCDを聴く限り、アウフタクトを含め1小節前からTRIOのテンポにしている演奏ばかりです。先生は、今なら前者の譜面どおりの解釈で弾くかもしれないけど、若いころは後者で演奏した気がする、とおっしゃってました。ここをどうするかは、この場では保留になりました。
- TRIOの2括弧の後の8分音符が連続する部分は、4個ずつの音階になっているので、それを感じて弾くといいとのことでした。
4楽章
- 冒頭のメロディーは1楽章の冒頭の変形でもあるので、やはり最初の2小節つなげて、とのことでした。これは裏の8分の伴奏形も同じで、最初の2小節を意識すると、その後も8分の伴奏が聴こえやすくなるそうです。
- 33小節目から、第2ビオラと第2チェロが2小節単位の動きをします。2小節目に向かう感じが必要で、“じゃん・けん・ぽーん”のイメージで、とのことでした。とてもわかりやすいイメージでした。
- 各所のメロディーは、記譜のとおりの素直なアーティキュレーションで弾くのがよいとのことでした。
また、全体を通して、
- 今回使っているインターナショナル版のパート譜では、フィンガリングや弓順を細かく指示されいますが、基本的にはスコアに従った方がいいだろう、
- 内声を弾くときは、音がうもれやすいので、なるべく下のポジションを使うように、
とのことでした。
これですべてではなく、本当にいろいろアドバイスいただきました。
全体を通じて、メロディーの弾き方、内声の旋律の位置づけ・弾き方を、わかりやすい具体的なイメージとともに教えていただき、どんな風に曲を感じ、もっていったらいいか、大枠のイメージがつかめたように思います。
しかし、終り際に軽~く一言、「もっと余裕を持って弾けるようにしといてね。」と言われてしまいました・・・。頑張らないといけないですね。
なお、先生のご紹介で、4月にチェロの西山先生に見ていただけることになりました。アルページュでチェロの先生にみていただくのは初めてのことで、とても楽しみです。きっと私立チェロ学園の学生たちも大喜びしているに違いありません。