『マリー・アントワネット』
何を今更・・・・と、思ったけど、やっぱり観てしまった。ソフィア・コッポラの描く「マリー・アントワネット」。ソフィア自身が「教科書に出てくるマリー・アントワネットを撮る意味はない」と語っている通り、映画は、政治ナシ、血なまぐささナシで一人の女性と宮廷生活を、ポップな音楽に乗せて足早に描いている。日本人にとっては「ベルサイユのばら」のお陰(!)で、フランス革命の頃のフランスには馴染みが深い。マリー・アントワネットが、無邪気でおしゃまな少女だったこと、その浪費ぶり、フェルゼン、ポリニャック夫人の人物像等々については、日本人のほとんどが確固なイメージを持っていることだろう。が!!マリー・アントワネット役のキルスティン・ダンストは、この映画に出演が決まる前は、マリー・アントワネットのことを知らなかった(!)らしい。(これが、アメリカ人の歴史意識なのか??)でも、ソフィア・コッポラが描きたかったのは、特殊な人生を歩んだ女性の中にもある普遍的な部分だから、それでよかった・・いや、その方がよかったのかもしれない。観ている方が、マリーの感覚や心のひだを、オーバーラップさせて感じ取れる程に現代的で「当時の現代っ子」マリーであればいい。そう納得させられるに十分な配役だった。ソフィア・コッポラは、セピア色ではなくマカロン色のベルサイユを完成させた。音楽のセンスがいい! スージー&ザ・バンシーズ, バウ・ワウ・ワウ, ザ・ストロークス, レディオ・デプト等々・・・。私がこの映画で期待していたもののひとつは・・・お菓子!マリーアントワネットがフランスに持ち込んだと言われるオーストリアのお菓子「クグロフ」は出てこなかったが、ケーキ! ケーキ!! ケーキ!!! 、シャンパン! シャンパン!! シャンパン!!! の嵐には目を奪われた。どのシーンにも必ずといっていいほど素晴らしいお菓子が登場する。パリの老舗、ラデュレが担当したという。ベルサイユのデコレーションにも埋もれないゴージャスでいて愛らしいお菓子達には、思わず顔がほころぶ。(ちなみに「パンがないのならお菓子を食べればいいじゃないの」という有名な言葉は、マリー・アントワネットではなくルイ15世の娘(ルイ16世の叔母)であるヴィクトワール内親王がかつての飢饉のときに言った言葉だそうだが。)フレンチの食事マナーも、マリー・アントワネットが辟易させられた細やかな慣習と規律も、ルイ14世によって確立されたものらしいから、食事のシーンにも興味津々。そして、マリー・アントワネットが、ベルサイユに押し寄せた民衆にバルコニーからしたお辞儀。優雅で気品あふれていたというお辞儀ーーーー。映画は、マリー・アントワネットとルイ16世がベルサイユを離れるところで終わる。バステューユもギロチンも描かない。フランス革命の話ではないから。