はて、どちら?
あっち か こっち継ぎ目のないきれいな2本の線が果てしなくまっすぐ延び、終わりは一向に見えないのにいつも全速力で走らなければならず、すぐ後ろには必ず誰かが追って迫ってくるレール。と、一寸先は闇だが、時に何も考えずに淡々と黙々と歩き、時に足が一歩も前に動かず立ち尽くしいつの間にか3年の月日が流れ、時に自分の手で金槌を持ってトントンと短いレールを継ぎ足し、時にバレリーナのようにくるくると華麗に舞い、時にレールがぐにゃりと曲がりUターンし、時に立っていることもできないほど疲れ果ててそこにしゃがみこんで深く長い眠りに就き、ふと顔を上げると光が差していることに気づき導かれるようにその光を目指し、時に直感が閃き西へ進み、ある日ふと隣を見ると同じ歩幅で歩いている人を発見し、おもむろに後ろを振り向くと、今まで自分が歩いてきたレールが複雑に曲がりくねり継ぎはぎだらけであることに改めて愕然とし、事あるごとに隣で全速力で走っている人を羨望の眼差しで、あるいは憐れみが交じった目でちらりと横見し、時に自分はどこへ向かっているのか不安に陥り、その内にだんだんとレールを継ぎはぎすることが楽しくなっていき、今日はどの方向へレールを延ばそうかとうきうきわくわくするレール。因みに、どちらのレールも決して自分の意志で断ちきることも後ずさることも禁止されていて、前へしか進めないことになっている。はて、どちら?先週の、炎が燃えるような夕日。