「万物すべてその在るべき場所に在る」
「万物すべてその在るべき場所に在る」「希望をすてるなんて、馬鹿な話だ、そうかれは考える。それどころか、罪というものだ」「最後のまっ暗な時間は、人間の心のなかに、何ごとが起っているか、誰も知ることはできん」「ふつうの人間だったら、毎日、英気を養うなにかをして、意識的と無意識的の活動のあいだに釣合が維持されている。情緒は絶えず分散させられて、鬱積することがない。しかし、自分の時間のすべてを、強烈な精神的集中に費やし、いっさいの情緒を厳格に抑制している異常な人間となると、潜在意識の解放は、えてして凶暴な形をとってあらわれがちだ。長期間にわたる抑制と、長いあいだ、継続的に精神を使役し、そのあいだ、なんらの休養もとらず、捌け口もないと、その結果は、しばしば言語に絶する恐怖的行為の形をとった爆発が起る。どんなに知能がすぐれたものでも人間はすべて、こうした結果をのがれることはできない」「万物すべてその在るべき場所に在る」「あらかじめ心のなかでさらっておいたことは、実際その場になってみると、たいていは予想どおりに行かんものだ。言うべきセリフを考えぬいて、むこうの答えまで想像しておいたとしてもだね、まあ十中ハ、九は裏切られる。ことに相手の返答はまことに予想しにくいものです」「慈善というものは、たしかにひとのためになる。と同時に、ひとにいろんな気まずい思いをさせる。人間の心というのは複雑なものでね。ひとに親切にしてやれば、親切にしたほうの人間は結構いい気持ちでいる。しかし親切にされたほうの人間は、はたして相手にいい感情を抱くだろうか。感謝すべきことはもちろんだが、はたして実際に感謝するだろうか」「ほんとに必要だったものは、ごく自然な、悪意のない放任ということだったんだな」「病気のために肉体の活動を停止して以来、ますます精神活動に慰めを見出すようになった。なぜいつまでも過去をひきずっていなければならないのか」「過去を考えてどうなる」