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書籍編集者esのつれづれ書評+α

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July 10, 2006
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カテゴリ:編集者生活
今や出版業界では『実売の売上をデータでチェックする』というのは常識になってきています。
自社の本に限らず、他社の本まで見れるシステムがある。
たとえば、全国展開する某大手書店のデータでは、Aという本が、その書店グループ全体にどれくらい配本されて、さらに各店に何冊ずついって、毎日どの店で何冊売れた、ということまで分かっちゃうんですね。
あと客層や返品も分かるようになっています。
当然出版社の人間は、このデータを見ていろいろなことを判断します。
ある著者の企画を考えているなら、近著のリアルな売上をチェックしたり、出版が決まっていたら、刷り部数を決める参考にしたり……。

最近、感じるのは、著者の方との感覚というか認識のズレ。
特に昔から業界にいらっしゃる先生との、かな。

たとえば、ひと昔前にヒットを出した先生なんかの場合でいうと、仮にここ2~3年の売上がどうも振るわないとします。
でも、その本を出した出版社が、これまでの実績から初版の部数をたくさん刷っていたとします。
それで、他社の人間がそのデータを見てみたら、その内情は大惨敗で、さらにすんごい返品をくらってることが数字でリアルに見えてしまう。
となると「この売上から考えると、たくさんは刷れない。初版部数を減らそう」、もしくは「出版をやめよう」という結論になっちゃうわけですよ。
初版を少なくしても、売れたときに刷ればいい、と。

でも、著者の先生側に実際の売れ部数が正確に伝わっていることは少ないと思います。
仮に3万部刷って重版がかからなかったとしても、その中身が分からないわけです。
2万5000部売れたのか、たったの8000部しか売れていないのかは、ほとんどの著者の先生は知らないはず。
で、たぶん調子のいい編集者なんかが、「売れてる?」とか著者に聞かれたときに、「いま増刷がかかるか、かからないか、その瀬戸際ですね~」とか言っちゃったりしたら、著者としては「そうか」と思っちゃいますよね。(その場合、もちろん増刷はかからないんだけど)
実際は全然売れてなかったとしても、やっぱり言いづらいです。
それは優しさだったり、単にマイナスなことを相手に突きつけて傷つけるのが申し訳なかったりですが。
どんな先生にもはっきりと実売を教えてあげてる編集者っているんだろうか?

昔、ある著者の方からこう言われたことがあります。
「●●社で、気弱なことばっかり言って全然刷ろうとしないから、□□社に持っていったら、いますごくうまくいってるでしょ。だから●●社はダメなんだよ」
たしかに□□社では、かなりの部数を刷ったらしい。
店頭でものすごい平積みされてるし。
あんまり目立たないけど、うまくいってるのか、と思って、データを試しに見てみたら、これがもう大変なことになっているわけです。
そう、刷り部数に対して、全然売れてない。
すでにガンガン返品されている。
こりゃあ、□□社もつらかろう・・・といった事態なわけです。
そして、●●社は見事に危機回避できた、といった結果。
□□社は、その先生への恩は売れたけど、本は売れないということになっていて、それってどうなんだろうか?と思います。
余裕のある出版社なら、ビックネームの先生に恩を売って、売れないときも刷ってあげて、また光が当たった時に自社から出してもらうとかできるでしょうが、そうでない大多数の出版社にとってみれば、そんな著者サービスばっかりやってられないですよね・・・。

その著者の先生にとってみれば、たとえ重版がかからなくても「□□社で●万部刷って、そこそこうまくいった!」という感覚だけが残るので、これからも新刊の初刷り部数に条件をつけてくる・・・みたいになったりするんですよね、これがまた。
そういうことが重なると、だんだん出版社も離れていってしまう・・という状況も生まれている気も。
結局、印税というものは、刷り部数に対して支払うというのが、日本の出版業界では多数を占めてますし、売れなかったときのリスクは出版社が負っているわけですから。

これって売れない著者の先生が悪いという問題でもなくて、一冊あたりの売れ部数が下がって、出版点数だけが伸びつづける今の現状事態がおかしいんですよね。

著者の先生もつらいことも多いでしょうが、営業から具体的な数字をつきつけられているのに、著者からは最低限の部数を刷ってもらえないと出版しない、とか言われたりして、板ばさみになっている編集者もつらかったりします。
著者の先生とは人間同士の付き合いがありますし、そこにデータや数字だけを持ち込んでビジネスライクにはなかなかできないというか…。





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Last updated  July 10, 2006 01:57:19 PM
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