自然が創り出したハーブの魅力と自然治癒力

カンガルーケア

■保育器の子とふれあい

　神奈川県大和市の中島和子さん（３７）は昨年１０月、聖マリアンナ医大病院（川崎市）で、予定日より２か月以上早く長男凛太朗（りんたろう）君を出産した。早産で体重は７９６グラムしかなく、ＮＩＣＵ（新生児集中治療室）の保育器に入れられた。わが子を見守るだけで「何もしてあげられない」と落ち込む中島さんに、スタッフは、赤ちゃんを抱っこする「カンガルーケア」を勧めた。（中島久美子）

　カンガルーケアは、母親がソファなどに座り、乳房の間に、おむつだけを着けた赤ちゃんを入れ、包むように抱っこすることをいう。母子が直接肌で触れあう。その姿がカンガルーの子育てに似ていることから、名付けられた。

　１９７９年、南米コロンビアの小児科医が、極低出生体重児（出生体重・１５００グラム未満）に始めた。

　こうした赤ちゃんは、体温や呼吸、心臓の機能を安定させるため、保育器に入れられるが、発展途上国では機材が不足し、同じ保育器に２、３人の赤ちゃんが入る場合があった。感染症の危険が高まる上、退院後も、長期間離れていたわが子に愛情を持てず、育児放棄する問題も起きた。

　そこで、赤ちゃんを保育器から出し、カンガルーケアを実施したところ、感染症が抑えられ、育児放棄も減った。

■抱っこで心拍安定

　この報告を受け、欧米の医療機関も導入を始めた。保育器の中で様々な機械に囲まれた赤ちゃんのストレス解消や、母子の絆（きずな）を深めるのに役立つのではないか、との期待からだ。

　その後、母子への様々な効果がわかってきた。

　まず、母親の体温が赤ちゃんに伝わり、体温が維持される。抱っこの角度（約６０度）が肺、心臓への血流を良くし、心拍の安定にもつながる。

　成長が未熟な赤ちゃんは、睡眠中に手足をばたつかせたりする浅い眠りが多い。カンガルーケアを行うと、リラックスして深い睡眠に入る。

■母の自信回復

　回を重ねると、母親の乳房がはり、赤ちゃんが乳首を吸うことも増え、母乳保育に良いこともわかった。

　母親への心理的な効果も大きい。「小さく産んでしまい、子供に申し訳ない」「保育器の子供に何もしてやれない」との自責の念や無力感が和らぎ、自信回復につながる。

　冒頭の中島さんは、肌が触れあった瞬間、凛太朗君の心臓の鼓動が伝わり、「この子も頑張って生きている」と命の重みを感じたという。病院に毎日通い、最初は１５分程度だった抱っこの時間が次第に長くなり、授乳もできるようになった。

　凛太朗君は今年２月に退院した。中島さんは「母子の絆が深まった」と振り返る。

　国内では１９９６年、聖マリアンナ医大横浜市西部病院（横浜市）で、同大小児科教授の堀内勁（たけし）さんらが導入した。現在、多くのＮＩＣＵで実践されているが、１回のケアの時間や、実施の基準（子供の体重、呼吸状態など）は施設によって異なる。同大では、赤ちゃんに心拍や血中酸素濃度の検知器をつけ、状態を監視しながら、保育器の横のソファで行う。

　カンガルーケアは、保育器に入った子供に限らず、誕生直後の赤ちゃん一般にも行われるようになってきた。早期の母子接触が母乳分泌の促進などにつながる、との考えからだ。父子の触れあいのため、父親が行う場合もある。

　堀内さんは「カンガルーケアの原点にある母子の結びつきの良さが理解され、広がっている」と話している。

（2007年7月13日 読売新聞）

おまけ＜今日7月18日は何の日？＞
1244年のこの日には、永平寺が建立されました。1955年には、アメリカ合衆国ロサンゼルスにディズニーランドがオープンしました。

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