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おいろーぱ野郎

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2004.11.10
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カテゴリ:das Thema
砂塵に霞んだような大気の向こうにのぞき始めた褐色の大地。乾いた丘陵を行く車、工事現場のような構造物、ビル群。着陸する間際に肉眼で初めて目にしたイスラエルはスペインの地中海沿岸や、その所有する島々の都市部を連想させた。

TelAviv空港に到着した飛行機を降り、空港内バスに乗り込んだ途端、女性スタッフから降りる様指示される。到着の目的や打ち合わせ先の概要を矢継ぎ早に質問され、パスポート提示を要求される。スタンプで汚れたページからよく識別したものだが、過去のモロッコ入国の目的を述べよという。回答している途中で言葉を遮り、もう結構、と告げると次の生贄に向けて歩き出すサングラスの彼女。身勝手なひとだ。君のニキビに免じてその若さを許してあげよう。

一見してよそ者と判る我々アジア人はナンセンスな質問の嵐に遭遇する、と事前に教育されていたので大して驚かなかったが、無事ホテルに着くまでは不安が残る。入国審査を過ぎ、カルーセルでトランクを待っていると、次々と係官から質問攻めに遭うとも聞いていたが、幸い何もなかった。しかし暖かい。10℃程度のUKに比べれば間違いなく南国だ。トレーナーを脱ぎ、手配してもらったTAXIに乗り込むと、頭髪の寂しい丸っこく日焼けした初老のおっちゃんの運転で宿泊地Herzillyaまでの道行がはじまった。

「あんたどっから来たんだい。」に始まり「UKではどう言われているか知らないが、ここはParadiseだ。」と左右のジャブを放つサングラスのおっちゃん。空港を出入りするTAXI同乗の旅客を監視しているのであろう警備員詰所、その隣を顔パスで通過し、シフトギア脇の収納Boxからチョコボールの入った袋を差し出す。アーモンドの香りを車内に漂わせ、二言三言話していくうちに、おっちゃんは27年間ドイツ南西部に居たことが判り、世間話は英語からドイツ語に切り替わる。
「俺は悲しい、こんな所でTAXIの運転手やってるんだぜ。外国人は皆恐がって観光旅行になんか来やしない。お客なんて僅かなもんだ。悲しいねえ。」
おっちゃんはお気に召さない車やトラックにクラクションを鳴らし先を急ぐ。高速道路から見えるOfficeビル群は特に西欧の街のそれと変わりない。勿論ヘブライ文字はこの地特産のフレーバーではあるが。
午後の日差しを受ける車内で、ラジオからノリのいいPopsが流れると、それに合わせswingするおっちゃん。先にHotelに到着している日本人同僚Nからの携帯への着信を察すると何も言わずVolumeを落としてくれる。電話終わったからまたラジオ聞こうよ というと、「もうLadyMarmeladeは終わったよ」と肩を落としていた。

Hotel近くの住宅街はこれまたスペインなどでよく見かけそうなものだった。茶褐色の壁につたうツル草に咲く花々の目を刺すような紅さ。埃っぽい空地。まごうかたなき欧州の南国情緒の街をTAXIは走る。10数階建てのHotelはその地中海の砂浜沿いに堂々と佇んでいた。ビーチのそこここに踊るウインドサーフィンの帆。これじゃ観光旅行だ。それとも知らぬ間に爆弾が破裂しもうこの世ではないのだろうか。たとえこれがまだこの世でも、今晩寝ている間にホテルごと地中海の藻屑となってしまうかもしれない。爆弾ならあの世とこの世を隔てる時間なんて瞬きのようなものに過ぎないだろう。

ホテル入口で警備員が所持品を検査する。ロビーに着くや否や、N、UK人同僚D、フランス人同僚Jeが待っていた。
イスラエルのベテラン、余裕のDの第一声は「シャローム。」
気乗りしてない自分を知り、「第一印象はどうだい。」とニヤニヤと問うJe。
悔しいので「あんたら、自分達が本当にまだ生きていると思っているのか。」と尋ねる。

CheckIn後、解の無い宿題を一人悶々と部屋で済ませ、夜のロビーで落しどころを協議する。Cafeに併設されたロビーのレストランではアジア人の容貌の板さんが寿司を握っているようだ。おつまみに握りを一人前注文し、宿題の解答に参加するN。
Jeが握りの木枠に潜んでいた、日本でよく見る“虫“を発見し、俺はこれをフランスに連れて帰らないぞとウェイトレスにやさしく抗議している。

そう、何か変だ。やはりここはもうこの世ではないのか。なんてこった。おい、じらさないでどこからがあの世だったか教えてくれよ。

〔 To be continued / Fortsetzung folgt 〕






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Last updated  2005.01.17 06:31:36
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