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おいろーぱ野郎

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2005.01.07
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カテゴリ:das Thema
 翌日のMtgに備えた解のない宿題のつらさに押し黙り降伏宣言をすると、さすがに同僚3人も異変に気づいた。食事がてら、賑やかな場所まで出ようと提案してくれ、近くのハーバーまでTAXIで出ることになった。夕闇を前に拳銃を携えたホテル入口のアンちゃんに会釈し、自分を含む大男3人と標準サイズ日本人1人の一行は夜の街へと向かう。
「いやー多いんですよ。怪しいShowPubの類が。さっきパンフレット見てて判ったんですけど本当にここイスラエルかって気がしますねー。」 当地2度目の同僚Nもいまだに予期せぬ驚きを生活のdetailの中に見つけているようだ。しかしよくパンフ見てNightlifeの研究してる余裕あるな、こんな所で。

 ホテル周辺の建設資材置場のような粉っぽい空地をヘッドライトで照らし走るTAXIは、ものの数分で無愛想な外壁をした建物のそばに停車した。降りるとハーバーに停泊したヨットの一群が夜の灯に照らされているのが目に入った。その風景を背に、自動小銃のようなものを携えた若い警備員が鉄柵のそばで一人、ハーバーに立ち入る人々の荷物検査をしている。ヤバイ奴がいたら即発砲かい、困った所に来たもんだ。
 この一角はモール兼飲食施設になっている。ハーバーに沿う区画には洒落たBarやOpenCafeやレストランが10件は配置され、賑やかな灯りが夕闇に心地よい。子供連れとお年寄りもいなくはないが、もっと脂の乗った華のある場所に見える。
 チェックを通過してすぐのPub風レストランの一角を占め、皆で飲み物と食事を注文する。「どこに行ってもこうやってセキュリティが入場時の手荷物検査をしているから安全に飲食ができるんだ。」 イスラエルのベテランDが皆を安心させようとしてか説明する。でもそれって普通のヨーロッパの国じゃ異常だよなあ。
 席につくとDireStraitsの曲が流れてきたのが判った。それが発端になったか、食事をしながらDもJeもNも、次々に好きな音楽の話や若い頃のバカ話をテーブルの焚き火にくべていく。Downしている自分が気分転換しやすいように盛り上げてくれているのだろう、みんな良い奴だ。持つべきものはタフな営業マン達だね。
 大体こういう局面では下半身の話をするのが後腐れがなくていい。初めてUSに長期出張したときに、同僚達が余りにもくだらないシモの話を好んでするので、こいつら皆 頭がおかしいのではないかと嘆いていたら、先輩S氏があっさり 「だって一番Neutralな話題だろ。笑い飛ばせるし。」と説明してくれた。それでも納得はいかぬままだったが、羞恥心が加齢と伴に抜け始めたのか、自分もいつしかUS同僚を凌駕するくだらないシモ話の語り部になり果ててしまった。水が低きを目指し流れる事実は、自分はおろか、ニュートンにも止められない。

 その向きの話に油が注がれるもう一つの理由には、この地で目にするユダヤ人女性達の容姿がある。シンドラーのリストだったか、ユダヤ人女性は何故かゲルマンの心を惑わせるというようなナチスの将校のセリフがあった。しかしかつてのゲルマンだけでなく、今まさにラテンもアングロサクソンもモンゴロイドも現在進行形で惑わされまくっている。
 Nはとにかく細い女性が好みなのだが、道行くユダヤ人女性達には長身痩身が多いため、浮き足立っている。Jewishと言ったって実際には、主義信条を同じくするが人種的には幅のある様々な人々からなるわけなのだが。
 レストランを後にし、暖かな夜風に吹かれ そぞろ歩く中東おのぼりさん御一行の首はそれぞれ見目麗しきユダヤの女性達に自動追尾をやめない。皆そろそろ自粛しようぜ、さもなくばMtg前に若いセキュリティに変態罪で撃たれちまうぞ。ユダヤの教義じゃないかもしれないが、この近辺じゃ 想像するのも罪だ とひとはいうじゃないか。
 やがて足を止め、これまた世界のどこにでもあるようなアイリッシュパブで飲みに集中する。OpenAirの止まり木に座り、各自アルコールを注文する段になって、皆の視線はやや太く短かいが金髪色白のバーテン嬢に注がれる。フランス人同僚Jeは、ラテンの血が呼ぶのか「俺が行ってみる。」と誰もけしかけてないのにもう戦闘態勢に入っている。話をしてみると、彼女の父は某スイス拠点銀行のTelAviv支社勤務で、兄が日本の某私大留学中らしい。彼女も日本に行った事があり、この1-2週間後にまた旅行に訪れるそうだ。丁度同時期に日本出張するNが名刺を渡し何か画策している。苦悩する顔を暫くして上げ、短く呟く。「、、、落とせるか、、なあぁぁ、、、。」 
 暫くするとパブの隣で楽器を準備していた若い男達がJazzの生演奏を始めた。皆何気ないカジュアルな格好だ。サックスの細くて小柄な兄ちゃんはドレッドヘアを水で戻したような軽めソバージュ的髪型で、London辺りでは普通に転がっている浅黒い肌の優男っぽい風貌だ。こういうユダヤの民はきっと女も惑わすだろう。

 Peacefulな雰囲気はイスラエルという音が想起させるものからは程遠く、それ故にこの晩餐の光景を前にした旅人の違和感は募るのであるが、少しづつこの地のことを知るにつけ、日々の暮らしの背後に踊る炎の姿を思い知らされる。
 たとえば国民には男性3年、女性2年の兵役が義務付けられており、その期間終了後でも男性は毎年1ヶ月間任務に参加することになっているらしい。空港警備担当などに二十歳前後にみえる若い女性達の姿が目に付くのには、やがて彼女達の多くにやってくるだろう出産育児に備え早目に兵役を終えたいという理由が隠れているようだ。スタイルのよさも兵役で培った日々の訓練と節制に起因しているのかも知れない。
 飛行機の音に気付き雲の無い空を見上げると、月を横目に戦闘機が天空を横切っていく。Dによれば、一機だけなら穏やかだが三機は戦闘目的のスクランブル発進を意味しているそうだ。

 Jazz野郎達は“枯葉”を奏ではじめ、ユダヤの民は酒と料理を前に友や恋人との語らいを楽しむ。それはEuropeのどこででも見られ、手軽に切り取る事ができる、なんでもない画に見えなくない。しかしその画のカンバスには適度な張力をたたえた布ではなく、金属の板が使われている。その重みは御気楽な旅人達の身には判る由もない苦痛と困難を秘め、その前面に描かれた人々に限りある生命と死の意識を陰影として落としている。そんな気がする。

〔 To be continued / Fortsetzung folgt 〕






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Last updated  2005.01.17 07:22:14
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