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カテゴリ:das Thema
諸般の事情で朝っぱらから近所の図書館へ向うことになった。車で坂を下りると”テニス博物館”の前から地下鉄駅に続く見慣れた通りに、今迄なかった派手な色彩が頭上に並んでいるのに気づく。道路を挟む左右の木立に25m間隔くらいで青、黄、白、青などに染められたバナーがぶら下がっており、London2012の文字がそこにある。
数日前、「今日がもっとも重要な日になる」 とヒステリックに実況していたラジオは、IOCの視察団が北京の次に開催される夏季五輪開催候補地Londonの事前査定に訪れたことをよそ者にはうざったい調子で伝えていた。 単純計算で20%と高い当選確率ではあるが、万一Londonに決まればAllEnglandLawnTennisClubの運営する、所謂Wimbledonテニスコートの敷地が五輪テニス会場に使用されるのは想像に難くない(事実そうするようだ。)なのでIOC視察団と招致に血道をあげる一派の接待担当Gpは恐らくこの通りにもやってきたと思われる。急坂を越えたところにあるvillageという古くからの商店街兼高級住宅地には、視察コースでないのかバナーを見かけなかった。 天候不順がつきものの6月に開催されるテニス選手権では雨で試合延期を繰り返すになることがお約束になっているため、競技者をはじめ長年施設の改造を求める声が高かった。2007年頃を目処についにセンターコートに屋根がつく事になったのもオリンピックを見越した判断だったのかもしれない。 ラジオのインタビューに答えていた人が言うには、2000年のシドニーに落ちた観光収入はウン千万ポンド?らしい。他の候補地との競争を勝ち抜けば、経済効果を利用して、日没帝国の首都で虫の息の野ざらし問題群を解決でき、しかも明日に繋ぐ事ができる。一攫千金のこのチャンスを見逃すわけに行かぬと考えるのは競馬をはじめとするギャンブル好きのお国柄か。 それにしては今まで誘致を見送りつづけていたような気がするのは何故だろう。腰を上げようにも不況のせいで先立つものがなかったのか、今回 他の頼りない候補地を見てこれなら勝てると思ったか、別の思惑があったのか(放言癖のある奇人として知られる現London市長が任期中に大勝負を賭けたくなったとは思えないが。)帝国通になる気は無いので敢えて調べないが、いずれ時間が教えてくれるだろう。 しかしバナーへの投資額なんか軽いもんだとしても、これでこけたらLondonバスの運賃は真っ先に上がるだろう。現金だしねえ。 世界にあまねく知られている事ではあるが、LondonでのBigEvent開催には最低下記の課題がある: 交通) 高齢すぎるのでリタイヤしたいのに、そうはさせてもらえず点滴を打ちまくられている老人インフラ。ふらつく足を両脇から病気持ちの仲間達に支えられている。地下鉄なんかだと、一旦事故が起こったら最後、その路線は一年は寝たきりになる(実際にこういう事がよく起きている。) 招致血道派のサイトをみるとHydePark近辺に計画されている競技地へHeathrowから15minと表示されているのが特に恐ろしい。Terminal 5を造っているとはいえCapaはもう限界だ。しかも空港からの搬送手段はどうするのか。上手く循環したとしても地下鉄やバスがインドの電車状態になっちまうし、さもなくば空港に野営施設が必要になる(=そのためのT5か?) 場所) UK人の選ぶもっとも行きたくない国内観光名所で堂々の1位に選ばれた天下の笑いものミレニアムドーム(=長期展望のないまま勢いだけで建ててしまったらしい。)中身を食べた後、捨てられ白化したようなこの半ウニ建物を含む東のベイエリア再開発による競技場確保を政府は画策しているが、国庫が寂しいのにその財源はどこから作るのか(=イラク撤退+渋滞税区間を拡大?) それにしてもマラソンに限らず排気ガスで一杯の空気を吸うことになる選手の健康状態が心配だ。ハイドパークにトライアスロン会場が割り当てられているようだが、酔狂でswimのパートにThames川を当て込んでいるとするなら、飛び込んだだけでも重金属のoverdoseが懸念される。 宿泊) 悪い冗談がきつすぎて笑えない宿泊費の高さ。ホテル数は少ないし、設備が素晴らしすぎてシャワーを使うのにも一瞬躊躇する。ただ、最近のNewsによると実はUKの古い造りのフラット群には空家がひしめいているそうで、その一部を更地にしてホテルに転用すれば観光客の宿が確保できるだろう(交通面との兼ね合いが困難だが。)その際にホテル料金の供給過剰による連鎖的値下げが見込まれれば素晴らしい事だ。 でもそんなにヤワじゃない人達なので割高なホテルの数が増えるだけに終わるだろう。しかも値下げが土地バブルの崩壊に火をつけ、言い出しっぺは北海に浮かぶかもしれないし。 治安) 例えば、スーツ姿の日本人を対象にした傷害付き追いはぎ事件(=死なない程度に怪我をさせ追跡できないようにするという悪質なもの)のため、London中心部へ勤務する日本人が私服切替えを励行される騒ぎが現在起きている。スタンディング裸締め追いはぎが名物のマドリード並みだ。拳銃保持は禁止されているとはいえ夜間は余り治安が良いとはいえない。 政治絡みでは、1972年Muenchen開催の夏季オリンピック選手村でイスラエル選手団の銃撃殺傷という痛ましい事件が起きた。現在の社会情勢から言ってLondonで何が起きても不思議は無いだろう。あれだけ捜して見つけられなかったWMDをどこかの愚か者が親切に持ち込んで実演してくれるかも知れない。 ただ、テロの観点からは他の4候補地も波乱含みではある。マドリード、モスクワ、NY、パリという顔ぶれは、花の都を除き小心者には長居無用の面々だ(パリに決まったらUSが不参加を表明したりして。) しかし表彰台を目指し集結せざるを得ないアスリート以外の誰がそんな状態のLondonにわざわざ来たがるのだろう。シドニーや北京なら観光気分が楽しめても、世界のOfficeみたいな潤いのない街でオリンポスの神々しさを求めるなんてのはパチンコ屋で座禅を組むようなもんだ。”国際的”な市民(=各種移民や国外からの一時逗留者達)が多いという意味では、観戦する側は近所に来たおらが国の代表目当てで盛り上がるだろうけど。 半ウニドームの好例もあるように、とりあえず花火を上げ、世間を知らない若い娘をイメージで巧みにたぶらかし、子供ができたら後で考えるというUKらしい計画性の無さが全体として表出しないとも限らない。それを判っているのか、現時点の世論調査によれば、開催地がLondonに決まると思うUK人は40%未満だという。みんな自分を知ってるな。この地では異性からのプレゼントに鏡を贈られる人はきっと少ないことだろう。 結果として、この試みの勝者は 血道派および五輪後もLondonとUKに留まり続ける市民達 であり、敗者は ぼったくられる世界の五輪観光客 という構図が浮かんでくる。 いつものパターンかもしれないが、今回の単位はポンドだよ。払う人は覚悟しようね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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