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カテゴリ:das Thema
社内のTeamメンバでParisに集合した際、UKからの到着組は皆 それぞれParis Office組の車に分乗し、陽の完全に落ちた北部の街から西部にあるというRestaurantに向かった。
通りは夕方のラッシュを既に通り越している。小さな渋滞は所々にまだあるが車は流れる。乗り込んだJeの車にそれまで後ろから続いてきたPの車が、なぜか突然左折し、進入禁止表示がはっきり掲げられた上り坂に突入するのが見えた。 人の世では何にせよルールというものが存在するが、その効力のありなしは決めた国の人々に委ねられている。 「という事はあれが近道?」 「いや。皆、今回初めて行く場所だ。」 Jeは 彼のdefault表情である微笑に一つの水紋すら立てず答える。 夜の街を縫うJeの車は、目的地近くの狭苦しい路地で律速され、暫くすると 車で混み合う裏通りに車長x0.9分の縦列駐車スペースを見つけた。バンパ同士の力比べの挙句 その隙間はきっちり車長x1.0まで延長された。 どこで聞いたか忘れたが、ラテンの国には「サイドブレーキを引く奴は馬鹿だ」という言い伝えがあるらしい。駐車してる間にランボルギーニがFiatのサイズになったら変形分の責任はブレーキ引いた奴が持つんだよ、という趣旨のこの言い伝えは、少なくともドイツでは聞かない Je組の皆で巷で人気と言うタイ料理屋に入ると、店内には草木は勿論 石を伝う滝のような仕掛が施され、極楽浄土Paris倦怠版の雰囲気が伝わる。殆どのメンバが席につきMenu片手にリラックスした頃、Pとその不運な同乗者達が最後に登場した。 ふた月程経ち、似たようなメンバでUK Office近くのインド料理Dinner。 かなり満腹になったあと、Pの話が始まった。休暇の際、Pを含む旅客はあるアクシデントによりNiceからMonacoに移動される事となった。土地柄そういうものだとは言い難いが、その移動手段はヘリコプターで、先に機内に乗り込んだPの目に白いベンツのリムジンが停まり、ドアが開く様子が映った。 話し続ける小型雪だるま体型の P。彼の表情は、自然の要求を我慢しているかのように切羽詰っている。 「出てきたのは3kmの足だったんだ。3kmの足なんだよ、わかる? ドアからスゥーーッと出てきたその長ぁーくて細ぉーい足に付いていたのは、なんと、Elle Macphersonだったんだよ。Elleが自分の居るヘリに乗り込み、俺は自分の目が信じられなくて、、、あのElleが前の方に座っているんだ、、、。」 PとJeの説明では、このElle嬢は所謂スーパーモデルで、 愛称を>The Body<というそうだ。 (真偽は定かでないが)Mモンローから、私たちがもし結婚したなら素晴らしい子供たちができるわ と問われアインシュタインが返したとされるJokeが頭に浮かぶため、こんな愛称を頂くなんてちょっと気の毒な気がする。 完全にオーバーヒートしたPにJeがニヤニヤと給水する。 「そうだよなぁ。3kmの毛むくじゃらの足だよなあ。うわー、ふさふさ。」 やがて隣席のA嬢から映画の話が出て座が盛り上がった時、Jeが嬉しそうに言った。 「若き日の自分にとってカトリーヌ・ドヌーブは、美 そのものだったんだ。」 Jeの笑顔にやや狂気の色合いが射す。 「本当だよ。本当。当時TVに彼女が映った時、俺は、もうこうだったよ、こう。」 と言い、小屋から首輪につながれた犬が、精一杯の脱出を試み 塀に両の前足を掛けて尻尾を激しく振るような仕草をする。Jeは両目を丸く開き、嬉しそうに はふはふはふ、ウォウォウォーン と小声で鳴き真似までしている。おい、わかったからその姿で俺の方を向くな。 >昼顔<の原題 Belle de Jour を知らなかったのでJeに説明できなかったのだが、どうも未見らしい。もし観てたら、犬では収まらず狼男だったろう。 自分の偏見では、基本的欲望に対し一直線 と言う言葉がラテンの男たちを括るのに相応しい。勿論 カバーできる枠に個人差を加味する必要があるにせよ、それは世の人々の総合的偏見を横軸にまとめた標準分布から大きく逸れていない筈だ。Pをかばうわけではないが、生き物である以上そういう趣味に国境はない。例えばイタリアの茶菓子にはLady's Fingerって名前のものがある。 そして、ラテンからフレンチを強引に抽出する手段として、子供の純な無邪気さがふるいの一つに使えるだろう。 それは大人の色恋を巡る不条理ネタで溢れる映画がフランス国内で支持され続けている事とも絡んでいるように思える。大統領を筆頭に、個人の重要事項には愛人および本妻との生活の両立がキッチリ組み込まれていたりする。しかし、それでいて社会は陰鬱ではなく、人々は生命に危害の及ぶ範囲でない限り、ありのままの欲求を表出し、あるいは受け止めている。その理由は 人々が子供のように、動物としての自然な姿に忠実であろうとしているからだ、と解釈するのはかなり月並みではあるが 大外れではないだろう。 隣席のドイツ人同僚Cと暫く世間話をした後でJe達の話の輪に戻ると、どこかへの旅行話をしている。今度はJeの微笑む目がNatasha BedingfieldのSpain版といった面立ちのA嬢を正面からじっとり見据えている。 「そうだな、あそこは確かにいい場所だった。Pが言うようにElleとそこに行けるなら素晴らしいだろう。でも、Elleよりも誰よりも、今度そこに行けるんだったら、俺は君と一緒がいい。本当だよ、君と行きたいんだ。」 バケツとスコップを持ったチビちゃんがお砂場へ突進するとき、周りに誰が居るかなど考える理由はない。それに、顔色を窺う幼児なんて、見守る大人の方が不安になっちまう。 後日、ある研修のためUKに集まったメンバにフランス人同僚Paの姿があった。若くはないがラテン系GPライダーのようにシャープな笑顔の彼は、一応GeneralManagerと言う役職にある。 輪になった椅子のどこかに着席するよう講師が出席者達に促す。講師の近くには、長めの黒いブーツ姿の若いアシスタント嬢が既に腰を降ろしていた。その瞬間、部屋に響く明るい声のPaが踊るように身を翻した。 「じゃーあ俺はCatharineの隣に座っちゃおうーっと。いいのいいの、俺はフレンチなんだから。今日、フレンチは俺一人だもんねー。」 Paは椅子に腰掛けた状態で、木馬に揺れるかのように50cm程離れたCatharine目指し絨毯の上をにじり寄る。無表情のCatharineは、じわじわと接近する木馬と逆方向に、彼女の大柄な体が乗る椅子をじわじわと遠ざけようとしている。 多国家多民族の欧州を長距離列車とするなら、海千山千の欧州人で押し合うその車両の中に、フレンチ男達の指定席は、周囲の諦めを伴う暗黙の了解とともに存在している。立派というより、他にない。 *** 補足1 *** BLUE ELEPHANT International plc Parisの夜に宴は始まり、数段の大皿で構成される鳥かご式鉄製什器にタイ料理は盛られやってきた。まるでアフタヌーンティーのようだ。しかし、店の広告資料には王室の名が登場するのに、料理自身はauthenticでもフレンチ風でもない気がするのは何故だろう。アジア人スタッフは店に多数いるが、インド人っぽい給仕さんはやや場違いな気がする。 店を出るときにもらった名刺大のパンフを眺めるとDubaiやKuwait,Beirut,Bahrainなどの中東圏から、(Bangkokは勿論として)東はNewDelhiにまで支店がある。LondonしかもFulhamにもある。本店の名称にplcが付いてるってことは、、、UKが本拠かい。おいおい、折角大陸まで逃げてきたっていうのに 胃袋にだまし討ちをかけるなよ。 しかしこのフランチャイズ展開に絡むアラブの影は料理以上に興味深い。Parisではアラブの大金持ちが集うレストランは珍しくないようだが。 *** 補足2 *** Elle Macpherson 人体標本としては美しいかもしれないけど。。。 *** 補足3 *** Natasha Bedingfield からみつくような歌声もイケるし、こうでなくちゃね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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