芝生で愉快に青い空
このところの朝7時半頃の気温は10℃強なのでセーターに上着が必要。あと数ヶ月でこの時間は闇のように暗くなるだろう。緯度が高いのはこういうときに悲しい。冬が近づくにつれ極端に物悲しくなる日照時間の事情はドイツでもほぼ同じだが、気候事情は若干異なる。ある日のこと。南ドイツのさっぱりした夏がやや気力を失い、街路樹の色合いに変化が出始めるころ、元同僚のドイツ人Stが寂しそうにつぶやいた。”冬が来た。。。”おい、秋を跳ばすなよ というと真顔で ”この国に秋は無い”とつぶやく。後になって実感したが、ドイツでは秋らしい秋を感じないくらい駆け足で冬が来る。一年は夏と冬の2シーズンからなる と人々は肌で理解しているようだ。海に囲まれ湿潤マイルドなUKと違い、完全な内陸 且つ 標高の高い南ドイツでは特に荘厳な冬がやってくる。人々は Oktoberfestが終わるとすぐに雪が降る と世代を超えて語り継ぐ。そういえばもう9月のそんな季節だ。この孤島にいるとどうも故郷の文化に疎くなる。。。。どのドイツ旅行ガイド本にも必ず載っているであろう世界的に有名なビールの祭りOktoberfest。地元民にはWiesn(=芝生)として知られている。土地っ子の多くは男女ともバイエルンの民族衣装を誇らしげに着て芝生へと繰り出す。中央駅から地下鉄で数駅西に向かった場所にある大きな広場。芝生の上にバイエルン州の大手ビール醸造会社が各々巨大テントを設置し、その周囲を遊園地のアトラクションが囲む。テント一つで数百人以上は収容できるそれは醸造会社毎に固有の外観を持つ。LoewenBrau,Hacker-Pschorr, Paulaner, Augustiner, など最低4つは出るはずだ。世界のビール好き達はテント内に陣取り、Massと呼ばれるジョッキになみなみと注がれた新鮮な地ビールを楽しむ。今年は何Mass飲んだ と後日友人同士で話を弾ませるのに重要な単位でもある。テントには特設ブラスバンド音楽隊が鎮座しバイエルンのアルペン音楽やらなにやら軽快なメロディーを奏でる。興が載ると流行曲も演奏する。お金を払えば飛び入りに壇上で楽隊を一曲タクトで指揮できるのが楽しい。ビールでいい気持ちになった酔客は楽隊の音楽にあわせ共に揺れ踊り、歌い、全国の酒好きよ団結せよさながらの連帯感に酔う。民族衣装のKellnerin(ウエイトレス)が両手にMassを10杯近く抱え酒飲みの波を縫って歩く。朝から人で溢れるテントは時が経つにつれ酔っ払いの大海原へと変貌する。泳ぐ姿は実に楽しそうだ。仮設トイレも潤沢に設置され、需給のバランスを保っている。飲んで出して、かなりグロッキーな顔をした酔っ払い達はテントの外で休憩する。乾燥した南ドイツの涼しい秋風はさぞ心地良いだろう。テントの外。土産物屋、ソーセージや鳥の丸焼きなどさまざまな軽食スタンド、そして日本でいう縁日の出店のようなものは勿論、昭和の地方遊園地のようなアトラクションがそこらじゅうにばら撒かれている。中型ジェットコースター、ぐるぐる回る巨大機械、観覧車、モンスター屋敷、270度くらい漕げる巨大ブランコ、蟻のサーカス、オートバイが回る檻、ハンマー叩き、毛布で滑る段付き巨大滑り台などなどなど オールドで怪しい味をふりまくそれらに大陸の秘部を見たかの如き恥ずかしいような嬉しい感覚が湧き上がる。ただ、バイエルン人達の多くが毎年これに参加する訳ではない。いやー騒々しくて落ち着かないから十数年行ってないんだよ という人はざらである。Ritualな性格のお祭りではないのだ。数週間開催されるがOktoberと謳うわりに例年9月中に終了するのが少し不思議だ(今年は例外で10月初めまでやってると聞く。)ところで:突然起きたある問題のため、月曜から火曜までMuenchenに行くことになってしまった。しかし時期が時期だけに航空券が高い。しかも休暇だし。。。里帰りという意味では満足なのだが。元同僚Bに連絡を取り、月曜に約1年振りの再会を果たす予定。また立派になっている様子。さすが自称ローマ人の末裔。どこで食事しようか。積もる話があるのでとりあえずWiesnはやめとこう、ということで合意。青く白いバイエルンの空よ、雪は暫く待ってくれ。*** Oktoberfest/Wiesn ***明るく楽しい Wiesnの雰囲気をお楽しみください。