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カテゴリ:ちと硬派
私が以前書いた日記にトラックバックして下さったkiyaさんが、「国際機関邦人職員の採用を増やすために」と題してブログを書かれている。私のいる機関に限らず、世界中の国際機関において日本人職員の採用増は重要な課題である。自国の職員が増えればその機関における自国のプレゼンスが高まり、ひいては以前の日記に書いた「外交力」が高まる、という認識はどの国でも共有されている。
ブログ内でkiyaさんはいみじくも「邦人職員の採用・昇進を支援」と書かれている。そう、邦人職員を通じたプレゼンス向上のためには、「採用」のみならず「昇進」も重要なイシューなのだ。私はこの点の取り組み方には、以下の3つのフェーズがあると思っている。 1.非常勤・短期雇用主体であっても、まずはとにかく「その機関で働く日本人」を増やす。 2.正規職員を増やす。 3.その機関の管理職、幹部、あわよくばヘッドとなるような日本人を輩出する。 1は、2や3に比べて相対的に門戸が広い。日本人の非常勤職員を雇用させるために政府として財政面で支援する、といったaffirmative action的な方策が採られることもあるし、採用する側としても、博士号持ってないと絶対だめ、とまで厳しいことは言わない。他方で当然のことながら、組織内で得られる責任・影響力は限られたものになる。 3はその対極で、緒方貞子・前国連難民高等弁務官のような方を多く輩出しましょうという取り組み。これは本人の卓抜した能力もさることながら、時として国を挙げてのサポートも必要となる極めて政治的なもの。 その中間に位置する2は、自分の持つ専門性を武器に、各国の人とのグローバルな競争を勝ち抜いて就職、更に昇進していくもの。常道であると同時に王道だ。私はこれを増やす取り組みが一番難しいのではないかと思っている。裾野は確実に広がっているものの、この分野の人材蓄積が日本はまだ欧米に追いついていないと思うからだ。 私の言う「この分野」とは、開発と安全保障である。いずれも日本では一昔前までは「一部の当事者が一生懸命頑張る」分野であって、一般の人が広く大学とかで学ぶようになったのはつい最近のことと言ってよい。これは別に「国際開発学科」とか「安全保障学科」で学ぶというだけの意味ではない。マクロ経済学でも国際関係論でも土木工学でも農業化学でも保健衛生学でも何でもいいのだが、開発や安全保障をも関心分野に含めたマインドで学ぶという姿勢は稀だったのではないかという意味である。 その点、日々の生活の中に開発援助や安全保障という概念が子供の時から(というか親や祖父母の代から)当然のように入りこんでいる国の人たちは、政治機関や開発金融機関で働くのに大きなアドバンテージを持っていると思う。 ただ、この両分野とも、今では日本でも広く浸透し大きく意識されるようになった。バブル崩壊後の90年代を「失われた10年」と呼ぶことがあるが、この両分野について言えば決してそうではなく、むしろ「発展の10年」だ。国際感覚や語学力を持つ人も着実に増えてる。徐々に厚みを増す人材層からのチャレンジに期待であります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年02月09日 08時01分42秒
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