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カテゴリ:徒然
3年前の映画であるが、ふと思い立って久々に引っ張り出して見たRunaway Jury。いや痺れましたね。「こんなに面白い映画だったか?」と身震いしてしまいましたよ。
タイトルだけ見ると、陪審員に扮したジュリア・ロバーツがウェディングドレス姿でリチャード・ギアから逃げていく映画かいなと勘違いしそうだが、実際にはシリアスな社会派映画。サスペンスと言ってもいいかもしれない。 舞台はニューオーリンズ。逆恨みで夫を射殺された妻と弁護士が、銃メーカーを相手取って民事訴訟を起こす。訴えられた銃メーカー側には最強の「陪審員コンサル会社」がついていて、陪審員の選定から彼らの買収に至るまで周到なビジネスを展開する。 そして両者のせめぎ合いのど真ん中には、この陪審員コンサル会社と並々ならぬ因縁を持つ男女がいる。男は陪審員の一人として、「12人に怒れる男」よろしく徐々に評決のキャスティングボードを握り、女は外からコンサル会社を揺さぶる。最後には銃メーカー敗訴の判決を勝ち取りめでたしめでたしって話だ。 う~ん、2パラであらすじ書くとあんまし面白そうに見えませんね(笑)。ああストーリー紹介って難しい! 資金力や組織力をふんだんに使って陪審員たちに影響力を行使しようとするコンサル会社と、陪審員をそうした魔の手から「逃がそう」とする男の息詰まるせめぎ合いは、まばたきすら許さないほど。主役の男はジョン・キューザックが好演してるが、コンサル会社トップに扮する名優、ジーン・ハックマンの鬼気迫る演技にはやはりかなわないかも。。 女の方は”The Mummy(邦題「ハムナプトラ」)“でコミカルな役を演じたレイチェル・ワイズ。ここではシリアスな役ですが、いや美しいです。銃メーカーを訴える弁護士役はダスティン・ホフマン。重要だがこっちは脇役に近い扱い。ぜいたくな配役です。 私が映画に「映像の美しさ」を求めることはこれまでも書いたが、この映画も合格。出演者の美しさに加え、ニューオーリンズの街並み、路面電車、大道芸人、名物カフェといった背景の美しさも抜群。今はハリケーンカトリーナに破壊され復興途上であることを思うと更に感慨深い。実は私、ハリケーンが来る直前にここを訪れたのですよ。 訴訟社会アメリカの縮図も見える。原告側も被告側も、12人の陪審員の心証を得るためにひたすら演じ、情に訴える。更に銃メーカーは、米憲法修正第2条で認められた「武器を持つ権利(Right to bear arms)」を思いっきり前面に押し出して自らを正当化する。これは実際の銃業界もとっているアプローチだ。 そしてつくづく思う。アメリカの裁判で陪審員は全能なのだなあ、と。結末で彼らが出す評決は「銃メーカー敗訴。未亡人への賠償金額1億1100万ドル」ですよ。約120億円。この額にどれだけリアリティがあるのか分からないが、いかにもありそうな感じ。 そして、それほど莫大な決定力を有する12人の陪審員対策として、本当にこういうコンサル会社が存在するそうだ。そうだろうなあ。。 陪審員となることをJury Dutyというが、これは、利害対立の大部分を訴訟によって解決しなければならない人工多民族国家・アメリカにおいて、国の枠組みを支えるために市民が果たすべき義務である。そうした「民主・法治国家の担い手」であるという強い自覚が、莫大な決定力と表裏一体のものとしてあるのだ。 日本でも裁判員制度の導入に向けて準備が着々と進んでいるが、日本の風土になじむかなあ。。個々の日本人にそうした自覚あるかなあ。。との思いもよぎってしまう、そんな映画なのでした。 ひとつ突っ込み。この映画、日本語版オフィシャルサイトがある。この日記冒頭でリンクした英語版と比べてみて下さいな。 邦題の「ニューオーリンズ・トライアル」はまだ許そう。「The Italian Job=ミニミニ大作戦」よりはかなりマシ。しかしこのロゴは殆どホラー映画では?そしてオリジナルサイトにはないGodfatherばりの挿絵は一体?キャッチコピーも全然違うし。そもそもこの映画のキーワードは「プライド」なのかなあ。。ご覧になった方、ご意見歓迎す。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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