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ヴァカンスシーズンだというのに、朝一番でのお乗り込みが功を奏してか、わたしたちのほかは誰もいない静けさの中、ゆっくりと自動車博物館を観覧する。 ここには、1987年以降の車500台余が展示されているという。最初の形態の木炭自動車からイスパノスイザなんて超レアなクラシックカー群、そして何にもまして圧巻なのは、ブガッティのコレクションである。 創設者のシュランプ兄弟は、ブガッティの美しさに魅せられ、ブガッティ創始者のエットーレ・ブガッティに、カスタムメイドの車を注文したり、欧州に点在するブガッティを買い漁る等、その収集に全財産をつぎ込み、たちまち家業の織物業の屋台骨もゆらぎ、労働者への賃金不払いに到った。 怒った労働者がストを計画、工場をシュランプ兄弟から取り上げ、自主管理するという動きの中、経営者側が機先を制して、逆ロックアウトを行った。そのロックアウトを壊して進入した労働者が見たものは、すべての機械が取り払われた空間に、街路をイメージしてガス灯やマネキン人形が置かれた空間に、おびただしい数のブガッティが陳列された空間であったという。 その労働者の驚きそのままの空間に、500台余の車が展示されていた。 普通経営が傾いた企業の整理が行われる際は、こういったものは売り払われ、どんな優れたコレクションであっても散逸の憂き目にあうのが、当然の成り行きだろうが、どういういきさつであるのか、このコレクションは、国立博物館となり、全容がそのまま保存され、現在に到っている。しかも、隣接にこのコレクション専門の修理部門があり、ここに陳列されている車は、動かすことが可能なのだという。 残念なことに、カフェは、サンドウィッチと飲み物しかない簡単なカフェテリア形式で、ミュージアムショップも、仏・英・独・西の各国語のパンフレットが置かれている位の規模でしかなかった。 別の機会にシュトゥットガルトにあるベンツ社の企業立博物館を見学したり、ミュンヘン自然科学博物館を見学したのだが、ヨーロッパにはこのように産業生産物に関するりっぱな博物館がある。それに引き換え、わが国では、博物館といえば歴史的遺物の展覧をする処であるという認識しかない。これらの歴史の浅い工業製品も文化であるという認識がないのである。ものづくりや工業立地をもって国是としているわが国が、情けない話である。美術館の展示にばかり鐘を使わず、こういう博物館の一つでも作ってほしいものである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.04.05 00:49:31
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