テーマ:日帰り温泉あれこれ(1032)
カテゴリ:日帰り温泉日記(下越編)
高濃度の硫黄泉に入りたく月岡に行ってきました。
月岡温泉は全国屈指の硫黄泉でその濃度は万座温泉に次ぐ全国2番目と言われています。 硫黄泉というと白く白濁した湯を想像する方もおりますが、月岡の湯はアルカリ性泉で白くは濁りません、 緑色に濁りエメラルドグリーンの湯とも言われていますね。 度々このブログでも取り上げたこの硫黄泉の違い、 これがなぜ起きるのかを今回は化学的に取り上げてみたいと思います。 硫黄泉を作るのは火山性のガスや生物のたんぱく質分解から生成される硫化水素です、この硫化水素が硫黄泉を白く濁らせ、卵の腐ったような臭いを発生させます。 しかし硫化水素は温泉の中で解離し変化していきます、 硫化水素(H2S)は温泉の中で水素イオン(H)と硫化水素イオン(HS)に分かれ、さらに硫化水素イオン(HS)は水素イオン(H)と硫黄イオン(S)へと変化していきます。 この反応は可逆反応といって温泉の中では硫化水素が硫黄イオンにに変化する正反応と硫黄イオンが硫化水素に変化する逆反応が同時に進行し、 結果として変化がないような状態が続いていきます、この時に発せられるのがあの卵の腐ったような臭い・・・ 可逆反応というのは後戻りもできる反応のことで、例えば熱湯と氷水を混ぜたら液体は混ざり合ってぬるま湯になりますね、 けれど混ざり合ったぬるま湯が再び熱湯と氷水に分かれることはありませんね、こういう反応を不可逆反応と言います。 逆に硫化水素の解離は水素イオンが少なければ硫化水素から硫黄イオンに変化していき、多ければ硫黄イオンから硫化水素に変化していきます。 この反応は硫化水素が硫黄イオンに変化する正反応と硫黄イオンが硫化水素に変化する逆反応が同時に進行し、 反応の量が正反応の方が多ければ見た目には正反応だけが、逆反応の方が多ければ見た目には逆反応だけが進行しているように見えます、これが可逆反応です。 さて硫黄イオンが硫化水素に変化するためには水素イオン(H)が必要となります。 では水素イオンの濃度はどこに記載されているのでしょう? 水素イオンの濃度はph、液性として記載されます、水素イオンの量が多い液体は酸性、少ない液体はアルカリ性と分類されるわけです。 このph値でどのくらい水素イオンの濃度が違うかと言いますと、phが1下がると水素イオンの濃度は10倍にphが1上がると水素イオンの濃度は1/10になります。 これはもう違うとかいうレベルではなくphの値が1上がる1下がるというのはもう桁自体が違うということになります。 カンのいい人はもう気付いたかな? 液性が高くなると水素イオンの濃度が不足し解離した硫黄イオンは硫化水素に戻ることができなくなっていきます。、 このためphが8.5を越えるようなアルカリ性泉では硫化水素を含まない硫黄泉が生成されていきます。 本来はこのような硫黄イオンと硫化水素イオンを主成分とした温泉を硫黄泉と言い、 白濁した硫化水素を主成分とした温泉は硫化水素泉と言います。 さて今回の月岡温泉の温泉成分分析表をチェックしてみましょう、 月岡温泉の硫黄濃度は硫化水素イオン73.5、チオ硫酸イオン41.4、遊離硫化水素8.1、硫黄分総計123.0(チオ硫酸は硫黄化合物の一種で硫黄オキソ酸です) この硫黄濃度は全国屈指、国内でも1、2を争う硫黄濃度の高さであるといっても過言ではないでしょう(実際には硫黄濃度が圧倒的に高い奥万座温泉があるので2位争いということになりますが・・・) phは8.1のアルカリ性泉です。 ここで注目するのが遊離硫化水素の濃度、成分分析表の遊離硫化水素の値を見ると8.1・・・ phが8.5を越えていないので硫化水素を形成していますがアルカリ性の月岡温泉では、硫黄分はほぼ温泉の湯の中に溶けた状態で安定してしまっていますので硫化水素をほとんど形成していないのですね。 これが月岡温泉が白く濁らない理由になります。 さて実際の湯は・・・ この日は実に混んでいたため湯の鮮度が落ち浴感は今一つというところでしょうか、 月岡の美人の泉は実に月岡らしい湯で。湯はバスクリンでも入れたかのように緑色に濁っています。 硫黄の反応は可逆反応と記載しましたが、これだけ多くの硫黄分を含んでいますのでアルカリ性泉と言ってもかなり臭うのですが・・・ これは湯の鮮度が高ければの話で、特に遊離成分である硫化水素は時間がたてば当然に失われる、混んで湯がかき回されれば当然その反応は早く失われる、 これが温泉は鮮度が大切な理由ですね、空いていれば格安で月岡の湯を楽しめる美人の泉なのですが・・・ 月岡温泉はちょうど100周年となりましてね、その影響もあって実に混んでいる・・・ 駐車場にも入れないありさまで・・・、ここ共同浴場ですよ・・・ 残念・・・ さてここの湯は「月岡らしく緑に濁って」と書きましたが・・・ これまた勘違いしてはいけないのが硫黄泉の色、 緑や白が濃いのが良い硫黄泉だと思っていませんか?。 残念外れです・・・ 色が濃いのはそれだけ多くの硫黄分を含んでいる証拠でもありますが、 硫黄泉というのは酸性でもアルカリ性でも湧き出す源泉は無色透明の場合がほとんどです、 これが時間がたつことによって成分が結晶化され白や緑に濁っていくわけです。 つまり抜群に鮮度の高い源泉の場合、白や緑には濁らないということです。 万座温泉はその硫黄濃度の高さから硫化水素の濃度を下げる必要があり、湯は一度湯畑に溜められます、 いわばわざと鮮度を落として配湯していますので、どこの温泉でも真っ白に濁っています、 このような特別な事情があって特別な処置をしていない通常の硫黄泉では鮮度が高ければ高いほど濁らないということになります、 かつて高濃度の硫黄泉として知られる福島県の高湯温泉で源泉から一番近く直に温泉を引き入れているという施設を利用したことがあります。 高湯温泉も硫黄分の総計が100を越える温泉でここまでの濃度の硫黄泉は全国でも数えるほどしかありません。 湯は極薄く白濁しその代りに大量の白い湯花が漂っています。 鮮度の高い硫黄泉とはこうなるのが普通なのですね、白く濁るのは鮮度が悪い証拠でもあります。 ちなみにその施設は硫化水素対策のため露天風呂しかありません、内風呂では硫化水素中毒の危険があるのですね。 風通しがよくないとね・・・ 湯の鮮度は温泉に大きな影響を与え時にはまったく別の温泉かと思うほどの違いが出ることもあります、特に遊離成分が売りものの温泉ではその違いは明白です。 掛け流しだからと安心していてはいけません、注がれる源泉の量で鮮度は大きく変わります。 逆に循環でもよい湯に入る方法もあります、それはね・・・ オープン直後を狙う、温泉旅館の場合は湯の入れ替え直後を狙う、 まあなかなか難しいところではありますが、「あれ?この温泉ってこんなに良い泉質だったっけ」と吃驚させられることもままありますよ。 温泉は奥が深いもので、泉質は気候、気温、鮮度さまざまな要素に左右されます、 良い湯と思っていた温泉がたまたま良くないこともあれば、いまいちと思っていた温泉が次回行ったら驚く程よい泉質だったり、 気に入った湯は繰り返し入ることが大切ですね、逆にいまいちと思っていた温泉もあきらめずに2度3度行ったら・・・ 吃驚するほど良い温泉だったということもありえるわけです。 いや~、温泉って本当にいいものですね~~ って半分は寝たな・・・ 成分の説明は半分は理科の授業だから。。。 ではまた・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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