信長の前衛性と凡人
今年の大河ドラマ「どうする家康」に岡田准一扮する織田信長が出ている。また木村拓哉が主演の織田信長の映画も封切になった。今「織田信長」はブームになっていると言ってもいいと思う。 お父さんも織田信長は大好きな戦国武将の一人である。彼がやったことは、間違いなく当時の日本だけでなく、現代日本にさえ影響を及ぼしている。 織田信長という人は、鉄砲の有効性をいち早く見出して使用したり、戦争特化の軍人を作り出したり、貨幣経済を導入しようとしたりと400年後の我々から見れば、時代を先取りしたすごい人だと感じる。 だから現代で人気が出るのも想像に難くない。しかしながら、信長に破れていった「時代遅れ」「凡人」と思われる武将も、決してダメな人ではなかったと思う。今の価値観から見ればそうなってしまうだけであり、当時としては信長の方がでたらめであっただろう。唯一信長が当時でも認められる理由としては、「結果を出した」ということだと思う。 鉄砲を用いて戦争に勝ち、京都に上って天下を取った。貨幣経済を導入して領内の経済を豊かにした。口だけではなく、行動を起こし、古い価値観では達成できなかった素晴らしい結果を出したのだから、認めないわけにはいかない。 ただ当時の信長がやったことは、その時代の普遍的価値観を根底から覆すことが多々あり、もしおとうさんが同じ時代をその時代の価値観で生きていたら、おそらく凡人の一人として信長の考えや行動は理解できなかったと思う。 たとえが強引かもしれないが、信長がやったことを今の時代にあてはめるなら、今の時代に奴隷制を導入するとか、物々交換による経済を推奨するぐらいのことになるのではないかと思う。現代人でこれを政府が発表したら、だれもが「あいつは頭がおかしい」と言い出すだろう。 奴隷制には安価なコストで強制的に必要な仕事をさせることができるというメリットがある。基本的人権を擁護する現代の先進国の思想では絶対悪であるが、奴隷でない人たちにとっては十分にメリットがあるシステムだ。 貨幣経済から物々交換に戻してしまえば、地産地消などと叫ばなくても、農作物はほとんどが生産地で消費されるだろうし、都会に人口が集中することも緩和されるだろう。借金に苦しむ人もいなくなるかもしれない。 当時の信長がやったことは、それぐらいインパクトがあることだと思う。楽市楽座なども今ではある程度当たり前の事になっているが、ビザなし、期間の制限もなしにして、外国人を日本に呼び込むとするぐらいの衝撃だったと思う。 労働者不足の日本で、もしこの制度を本当に実行したら、多くの外国人が日本にやってくるだろう。もちろんその結果日本の文化はかなり変化するだろうし、治安も悪くなる。それでも不足している労働力は確保できる。低賃金の仕事にも従事してくれる外国人がたくさん現れるだろう。 信長の先見性や、行動力を称賛して真似したいと願う人は多いし、お父さんもその一人ではあるが、冷静に考えると凡人であり、現在の価値観にどっぷりつかっているお父さんには到底まねできるものではないと感じてしまう。