ベトナムの週末
ベトナムでの長期出張では、週末の過ごし方が問題になる。お父さんがベトナムに長期で出張し始めたのは30代中盤からだ。そのころの駐在者は若い人が多かった。20代後半から40代前半までだったので、元気もよかった。 また当時は常時8人ぐらいは駐在者がいたので、週末は誰かしらと一緒に遊んでいたので、やることがないということはあまりなかった。 会社のある田舎町で過ごすときは、土曜日の夜はだいたい麻雀をやっていた。途中で一時中断してマッサージに行き、戻ってきてまた麻雀をした。日曜日の朝にゆっくり寝るためもあり、1時過ぎまで麻雀をしていた。 日曜日は買い物に行ったり、ローカル食をいろいろと食べたりしてそれなりに楽しめていた。今よりも断然不衛生で、誰かしらがおなかを壊していたが、若かったのであまり気にしていなかった。 週末ハノイまで遊びに行ったときには、日本食→カラオケが定番だった。たまったストレスを一気に発散させるため、日本食レストランでとにかく食べまくった。一人3000円も出せば、おなか一杯飲み食いができた。 その後は2~3時間のカラオケタイムである。そこでも大はしゃぎして、歌いまくっていた。本当に若かったと思う。 日曜日は昼ご飯を日本食レストランでたっぷり食べ、ボーリングをしたり、ビリヤードをしたりとみんなで楽しんだ。 日本人駐在者の人数が少し減り始めると、今度はゴルフが日曜日の主流になった。1ラウンド5000円ぐらいでゴルフができたので、それほどお金がかかるイメージは無かった。まあ当時のベトナム人従業員の月給と同じ額なので、ベトナムでは高級な遊びであったが。 時が流れて駐在者も減り、今では常駐4名になってしまっている。平均年齢もだいぶ上昇してしまった。初期のベトナム工場は初心者の集まりだったので、基本を教えることが前提で若い日本人指導者が駐在していたのだが、今は勤続20年の従業員がいる工場になってしまった。 そのせいで、日本の工場の若者ではベトナム人のベテランを指導するどころか指導される状態になっている。よってかなりのベテラン日本人しかベトナム工場で指導ができない。当然年齢は高くなる。 そんなわけで、20年前の様に若さにかまけて週末を過ごすこともできなくなっている。お父さんも50歳を越えてしまった。初めてベトナムに来た頃は、40代の同僚が年寄りに見えていたというのに、今ではその年齢をはるかに超えてしまっている。 40歳後半から50歳の駐在員は、寝るのが早い。夜11時にはすべての部屋の電気が消えている。週末も以前の日曜休みのみから隔週土日休みとベトナム工場も休みが増えた。そのせいもあってか、週末ハノイに出かけてものんびり過ごす人が多い。お父さんもいつの間にかそうなってしまった。 ハノイで日本食を食べるのは昔と同じであるが、何でも頼んでガンガン食べるというよりは、厳選して少量を食べるスタイルに変わっている。そもそも20代や30代の頃の様に量を食べることができなくなっている人ばかりだ。 食事後も、カラオケに全員集まって騒ぐのではなく、個々人で別れて自分の好きなスナックなどでゆっくり飲んでいることがほとんどになってしまった。お父さんはお酒が飲めないので、スナックやバーでウーロン茶やコーラを飲んでも楽しくない。今は早めにホテルに戻って、ホテルの大浴場でゆっくり時間を使い、ホテルの部屋で本を読んでいる。 その分朝は早くから起きて朝食を6時から6時半の間に取ると、ゴルフの練習などに行って日曜日の午前中を過ごすようになっている。めんどうくさい日は、ごろごろとホテルの部屋で過ごして、少しの買い物と散歩をして、12時にまた同僚と合流して昼食、昼食の後はすぐに会社に戻るという週末を送っている。 お父さんにとっては、ベトナムの週末はほとんど日本食を食べにハノイに行くだけののんびりしたものになってしまった。帰国が近づくと、お土産などの買い物のために活動するのだが、それまでは本当にのんびり過ごしている。若い時の活力が失われているような気もするが、一緒に行動する若者がいないので、どうすることもできない。 もう少し有意義な週末の使い方を再検討する必要を最近は感じている。勉強するか、新たな趣味を始めるか悩むところである。自宅に電話しても日本にいる家族は部活や習い事、塾などで忙しいので、あまり相手をしてもらえない。 子供が成長した単身赴任者が、寂しそうに過ごしているのを見てきたが、今ではお父さんがそういう立場になってしまった。