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カテゴリ:エッセイ
お父さんは考え方が基本的にエンジニアである。数学・物理・化学の様に理論があり、理論に沿ってものごとを解決していくのが仕事のスタイルである。職人的な勘やコツというモノも、言語化や理論化ができないだけで基本的に自然科学の法則に則っていると考えている。 そのため品質トラブルなどがあったり、新しい技術が必要な新製品などの打ち合わせでは、仮定であっても原因を設定し、それに対する対策を理論的に考えていく。お父さんの会社は製造業なので、理屈や理論をとても大事にしている。
一方で、人間関係などでは理屈より現実を見据えて対応するようにしていく。製造において物理的条件の変更はある程度できるが、人間関係は理屈や理想通りには決して動かないと考えているからだ。これはお父さんの経験から来ている考えなので、研修などで「このように相手に接すれば、相手はこのように変わります」みたいな話をされても、鵜呑みにするような気持にはなれない。
ところが、世の中には研修で言われたり、本に書いてあったことを「真実・真理」として鵜呑みにして行動する人がいる。全員が宗教的な洗脳下にいて、取るべき思考や行動が規定されている状態なら可能かもしれないが、現実の世の中で言葉や態度だけで万人を同様にコントロールすることはできない。 ましてや人の気持ちを理解して、それを変えるなどということは神様でなくては出来ないことだろう。お父さんにとっては当たり前の事なのだが、お父さんの周囲には「せっかく言葉をかけてやったのに喜ばない人がいる」とか「元気づけてやったのにいつまでもうじうじ悩んでいる」と憤慨している人を普通に見る。
あまり身近でなかったり、権力を持っている人でなければ疎遠にしていればあまり被害はないのだが、直属の上司や会社のトップだったりすると、否応なく影響を受けてしまうことになる。 現在お父さん会社の社長が、このセミナー病にはまっている。朝礼などで人心掌握術を説いたりする。それ以外にも突然の組織変更などを工場長などと一切打ち合わせをしないで決めて、いきなり全社員に発表してしまったりする。
何度かお父さんもやんわりと苦言を呈しているのだが、「あなたのやっていることは間違いです」とか「社員からおかしい人と言われています」とは言えない。言ったところで「お前は否定的な意見しか言えない」と怒られるだけだ。そのため最近は誰も何も言わなくなったので、一人で暴走している状態になっている。 人心掌握や社内改革のために受けているセミナーの効果が、社長と社員の関係悪化や社内を混乱に陥れることになっている。本末転倒なのだが、社長というのは社内の意見や考えよりも、社外の権威を信じる人が多いようだ。
理屈や理想通りに人間関係が構築できるのなら、世の中に人の争いも起きないし、離婚する夫婦もいないだろう。人間の心や行動は、理論的でも合理的でもない。だから難しいし、人によっては心が壊れるほどの事態になる。 すでに社長の理想論で心を壊しかけている人がいるのでお父さんにとっては笑い事ですまない状態になっている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.09.26 00:10:11
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