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じゅびあの徒然日記

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2007年04月25日
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カテゴリ:いじめ
朝出勤して、病院の鍵を受け取りに事務へ行き、医局へ行こうと歩いていると後ろから事務長が追いかけてきた。
前事務長の定年退職に合わせ、院長が某銀行から(おそらく)高給で引き抜いて連れてきた男だが、まだ入職して数ヶ月。
「じゅびあ先生、ご説明したいことがあるのですがお時間をいただけますか」
立ち話出来るような話ではないらしい。
これは絶対、ヤバイ話だ。
「今日の午前中お時間はありますか」
一瞬、いいと返事しそうになったが、あえて午後に送った。
本当は午後、予約診察と家族面談が入っていて、時間的に苦しかったが、ちょっと考えがあったのだ。

医局に上がると、作成しなければならない書類山積みだったが、仕事どころではない。
あらゆる場合を想定しなくてはならない。
頭をフル回転させて考えた。
何を言ってくるつもりだ。
相手は事務長、院長ではないから、直接診療に口は出せない。
午前中時間がないと言った手前、そのへんで出くわすわけにも行かない。
病棟の看護師休憩室にかくまってもらう。
昼休みに食堂へ行くと、またそこで出くわしてしまうので、わざと昼食を早めにとり、昼休みになると同時に病院を飛び出した。
何をしに...ってICレコーダーを買いに電器店へ。
1対1だと、後で私が主張しても、そんなことは言っていないとか、言われかねない。

正直予約診察どころではないが、何とか普通にこなす。
ICレコーダーの録音ボタンを押して、事務長を診察室へ呼び出した。

話の内容は...思ってもみないことだった。
入職時から保証されていた、私の給与条件を変えると言うのだ。
医師の俸給は、大学からの俸給表に基づいた年俸制。
年俸が何で決まるか、というと基本的に卒後年次だ。
私の場合、様々な家庭の事情(結婚、出産、育児、離婚)でパート勤務をしていた期間が何年か、ある。
入職するとき、ボスに確認した。
「私は非常勤勤務の期間がありますが、その年数もフルカウントでよろしいんですか?」
その時の回答を私ははっきりと覚えている。
「医者は、大学院生だったり、留学期間があったり、非常勤をいくつもやって繋いでいたり、臨床を離れていたり、人それぞれでややこしい。何はどうカウントする、と言い出すとキリがないから卒後年次でしか計れない。だからそれでいいんじゃないか。」
うちの雇用契約は、いつも口約束。
後から他の医師や看護師たちにも確認したが、全員書類を交わしていないそうだ。
その条件で、何年も、やってきた。
それを突然、非常勤期間を1/2でカウントしなおす、と言うのだ。
産休育休に当たる期間をどう計算するという話もない。
非常勤と言っても、ここのボスに乞われ、県境を越えて2ヶ所勤務をしていた期間(合わせれば十分常勤日数を満たす)も×年あるのだ。
その理由は何だと事務長に尋ねられ、私はぶち切れた。
「そんなことはプライベートであり、あなたにお話する義務はない」
...この期間、私は前の家を明け渡すわけにいかず、子どもと居座っていた。
弁護士を挟んで、家の持ち分の対価と慰謝料で元夫と闘っていたのだ(「離婚」参照)。
大体ボスがよくご存知のことだ。

「私が二つ返事で、分かりましたと言うと思っていませんよね。」
「それが時代の流れと言うものです。非常勤期間を満額で計算するほうが、おかしい。」
彼は私の履歴書を叩きながら言った。何年も前に書いたものの、コピーだ。
「医師の中では該当するのは先生だけなんです。とにかくご納得いただきたい」
「納得するわけないでしょう。それは納得させると言うことでなく、命令しているということです。あなたがたは入職時にさせて頂いた約束を次々に違えている。もちろん、あなたはご存知ないことだが、本当に助けて欲しいと乞われてここへ来て、私がこの病院の体質を変えたところ、随分あるんです。当直だってずっと無理してやってきた。一度も穴を空けてないんですよ。」
「いや、それは申し訳ないと思うが、時代の流れですから。病院の事情も変わりました。」

一番変わったのは、事務長が変わった、ということだ。
アンタが医者を駐車場から追い出し、日直料を値下げし、さらに私の基本給まで引き下げるか。
基礎医学の院生だった医者もいるが、私だけということは、それは臨床でなくてもフルカウントなんだな。

「私の給与を下げるというんですね。つまり病院の私に対する誠意、私への評価は、そういうものだと。」
「いや、先生にも事情があるでしょうから、その年数に当たる分、年次昇給の幅を1/3ほどにさせていただきたい。お話がつくまで、先生の4月以降の給与については3月と同じで据え置きとさせていただき、納得いただいた時点で、計算してその分をスライドして上乗せさせていただきます。」
「つまり、兵糧攻めですか。」
「いや、そうとって頂いては...とにかくご納得いただく形で。」
「私は納得などしませんよ。」
経営状況が苦しいからというのなら具体的に提示すべきだ。
それと、自分がとっている高額な給与、役員報酬もね。

心ここにあらずで家族面談を済ませ、医局に戻ると他の医師たちが心配して待っていた。
早速ICレコーダーを再生して聞かせる。
みんな、絶句。そして、動揺。
「ありえない。」「まさか先生、のんでないでしょう。」「医療職は銀行勤務とは違うのだぞ!」「こんなことは、絶対にのんではいけない。」「こんな条件だったら、ここへ来る女医さんはいなくなりますよ。」「時代の流れと言うのなら、むしろ女性医師が復職しやすい環境に、というのが筋だ。」「僕は、もう後輩にこの病院は紹介しない。看護師の知人にも紹介しませんね。」「つまり同じことを看護職にもやるつもりだ。先生がのんだら、看護師全員のまされる。看護師なんて、パート勤務だったり、ブランクがある人が多い。だから、じゅびあ先生は絶対、みんなのためにのんではいけないんです。」「やる気なくなっちゃうよなー。」「あまりのことに書類を探していたのに分からなくなっちゃったよ。」「先生、のんでいないよね。これはもはや先生個人の問題ではないよ。これから先、赴任する医師も含めて、全ての医者の問題だ。」「つまりこの病院は約束したことを状況が変わったからと自己都合でみな一方的に変える。信用できないところだ。」「先生、話を潰せば後からでも全額取り返せるんだよね。派遣大学医局全ての問題だ。僕らも大学に掛け合う。だから分かりましたなんて絶対言ってはいけないよ。」

しばらく私、兵糧攻めみたい。
私も医者が少ない時、どうにか助けてくれとボスに頭を下げられて入職して医者が増えればこの始末。
あんたも明日はわが身だよ、事務長。

病棟では、ボスの担当する若い女性患者さんが、落ち着かず、何を言っているか分からないけれど誰彼構わず早口の大声で話しかけていた。
私にも「じゅびあ先生、あのねぇ、○★×△...!」
外来の時にも女医さんと話したい、とよく私の枠に来ていた。
落ち着かない時の指示を1日何回使っていいか、どれくらい時間を空けていいか、看護師が必死で電話確認している。
そんな指示、何回使っても、大瓶1本のませても、彼女はよくならないだろう。
ベースとなる定期処方を工夫しなければ、このままレベルが下がっていくだけだ。
現に1年前より、明らかに悪化している。
だが、私にはどうしてあげることもできない。
「彼女はワガママで自分の要求を次々にしてくる患者さんとは違うよ。精神運動興奮だもの。ジリジリして、何か言わずにいられなくて、助けて欲しくて、本当に辛いんだろうね。」
そんな患者さんを見ていると、情けなくて、何も出来ない自分も歯がゆくて、涙が出てきた。





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最終更新日  2007年04月25日 20時50分52秒
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