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カテゴリ:プシコ(精神疾患)な毎日
「寒くなったねえ。風邪なんかひいてない?」
この時期の診察は、いつもそれで始まる。 若干のバリエーションを加え、天気の悪い日なら 「冷たい雨で、かなわんねえ」 などが入る。 基本的に夏は 「夏だし、暑いし、しょんないわ」 冬は 「冬だし、寒いし、しょんない」 春と秋は 「季節の変わり目だから、調子も狂うよねえ」 要するにいつもしょんないのだが。 まるっきり中身のない会話をしているようで、実はこの時、患者さんの反応の仕方や反応のスピードが、普段と違わないか、観察しているのである。 こういう時候の挨拶に、すっと乗ってこられるか、反応が鈍いか、共感できるか、さらに広げた回答が返るか、否定的な返答が返るか、それとも全然無関心で自分の話したいことを喋り出すか。 普段、すっと「ねえ、ほんとに寒くなって」と返事をしていた患者さんが「...」と暫く無言なようなら、明らかに調子が悪くなっているのであり、場合によっては入院まで考慮する。 寒いとか暑いとか、同じ地域に住んでいればほぼ最大公約数的に同じ感覚を持てることに対して、たとえ暑さや寒さが平気だったとしても、適当に合わせて返答ができるのであれば、その患者さんはそれほど調子が悪くないと見てよい。 そういった意味で、私は診察中に冗談もよく言う。 場合によってはちょっとブラックなものまで入る。 ブラックなものはもちろんある程度付き合いが長くて信頼関係のできている患者さんに限るが。 この間も高齢者施設で女性に付きまとわれて困る、入院したいと言う男性患者さんに 「好みのタイプじゃないんだあ。好みなら、付き合えばいいだけだけどねえ」 と言ったら、 「先生、私らの歳で何言うんですか」 と怒るもんだから、 「イマドキ歳なんて関係ないさー、でも好みじゃないならバシッと断っちゃえ!それにしてもモテるんだねえ...よく見たらMさん、いい男だもんねえ。若い頃はもっとモテモテだったんじゃない?」 て言うと、患者さんは笑って 「そうですかあ?」←若干マト外れ と帰って行った。 たいていの診察はこんなノリなので、先生の診察は面白くて楽しい、と言ってくれる患者さんが多い。 患者さんたちによれば、私の診察は一般的な精神科医の診察に比べて、かなり「明るい」らしい。 だが、この他愛のない冗談に「馬鹿にしてるのか」と本気で怒りだす患者さんもいて、それはそれで、病状のひとつの判断材料にしている。 冗談を、冗談として受け取れない場合、病状は結構深刻と考えていいのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年11月27日 21時22分17秒
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