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カテゴリ:カラダの病気
9時に姉と病棟へ行くと、主治医を引き受けた先生が、勤務日ではないにもかかわらず駆け付けてくれた。
車椅子の母(スタスタどころか全く歩けなかった)は、主治医の先生相手にも「私の意思というものはこの病院では全く関係ないんですね。」「とにかく退院させてください。」「このまま動けなくなろうと、誰にも関係ありません。」「動けなくなる前に死にます。動けるうちでないと死ぬこともできないから。」「人権擁護はどうなっているのか、警察に訴えてやります。」「頭がおかしいのは私でなくてじゅびあの方です。」とまくしたてた。 私は「ああ、普段患者さんの言うことと同じだな」と思いながら、聞いていた。 そして、患者さんの家族っていうのは、こういうことを言われて、とても傷つくのだな、ということを初めて知った。 いつも、患者さんがこういうことを言うのは、病気だから仕方のないことで、家族はいちいち傷つく必要なんてない、ってどこかで思っていたんだな。 主治医の先生が耳元でぽそっと「お姉さん保護者で、医保(医療保護入院)にしますよ、いいですね」と囁いた。 家族を医療保護入院にするっていうことも、凄い罪悪感がある。とても傷つくもんだな...。 主治医の先生が後から笑って言った。 「医療保護入院にすると、3000円余計にかかるし、入院診療計画書も1500円かかるから、作らないでやろうと思ったんだけどね。かえってガチッとやったほうがお母さん、落ち着くかもしれないね。お金がかかるけど、ごめんね。僕は何言われてもいつものことだし、平気だけどさ。」 姉によれば、入院診療計画書を持ってきた男性看護師にも、「これに判を押させれば、あんたたちの思う壺なんでしょ。」「かかりつけでも検査は最低限にしてあげる、と言われているのに、どうしてこんなところで採血をしなければならないのか。主治医の説明を受けるまでは絶対しない。」などと言い張り、主治医の先生が直接採血に行ってくれたところ「これを採ったら退院できるのなら」と応じたそうである。 嫌味を言われた男性看護師だが、私に「ここは某総合病院と違って、絶対21時~6時までは電話させませんから、先生その間は安心して休んでください」と言ってくれた。 母は、絶対某総合病院で出された薬しかのまないので、主治医の先生と相談して、夕食にセレネース液を1mg混ぜて服用させることにした。 とにかく休んでもらわなければならないし、少し落ち着いてもらいたい。 実はここのところ、うちでも0.4mgくらいお茶に混ぜていたのだ。 翌日行くと、セレネースの効果なのか、母は別人のように落ち着いていた。 「退院したい一心であんたにひどいことを言ってしまった。主治医の先生にも本当にとんでもないことを言ってしまった。くれぐれも謝っておいてほしい」と言う。 母に改めて、入院中に介護保険をつけたいし、また歩けるようになれば家に手すりをつける工事をするとか、そうでなければ介護のベッドを買うとか、車椅子を買うとか考えるので、回復の状態を見たい、でも家にいたまま布団から這って生活していたのでは、どんどん痛みもひどくなって悪くなる一方なのだから、とにかく負荷を減らしてよくしようよ、と伝えた。 母は、尿漏れのために使っている使用済み生理用ナプキンを悪いから、と言ってゴミに出さず、すべて私と姉に持って帰らせるのだった。 本人も恥ずかしいのだろう、と私も黙って持って帰っていたが、他の用事でゴミ袋(一応、中は見えないし、1個ずつ封はしてある)を持ったまま詰所に寄ると、いきなり師長に袋を取り上げられた。 「じゅびあ先生!先生がこんなもの持って帰って家で処分なさってるんですか!うちにはちゃんと捨てるところがあります!全部置いてってください!助手さんも困ってます!」 師長は「これは汚れもの」「これは普通ゴミ」「これは間違って入ってる洗濯物」とほいほい分別して、ほとんど空になった袋を私に手渡した。 母の所に戻り「師長さんにも助手さんにも怒られて全部ゴミ取り上げられちゃったから、明日からちゃんと出してね...。」と苦笑いして伝えた。 私が「ゴミを出して」とただ伝えたら、母は持ち帰るのを嫌がっているようにしか思わないよね。 なんか、スタッフの愛をじわーっと感じてしまった。 ありがたかった。 他の患者さんが突然ふらふらと個室に侵入し、母がいちいち相手をしてしまうので、週明けにはサムターンで中から施錠できるように、工事を事務と交渉します、とも師長が言ってくれている。 お言葉に甘えて入院させてもらったけれど、母にとってこれ以上の療養環境はないだろう。 多分、他のどんな高額な施設に入っても、評判のいい総合病院に入っても、こんな配慮はしてもらえない。 マニュアル通りの対応でお愛想だけ、じゃなくて、心底母がどうすれば気持ちよく過ごせるか、スタッフの方からいろいろ考えて、提案してくれる。 私の勤務先だから、なのであるが。 少しずつ、母にもそのことは伝わっているようで、日に日に表情は柔らかくなってきたように思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年12月15日 00時35分24秒
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