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じゅびあの徒然日記

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2011年03月22日
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...久々の更新がこんな話題になるとは思ってもいなかった。

福島県、第一原発から3kmにある精神科単科病院F(病床数350)の病院の避難時の対応、その後計21名の患者さんが亡くなったことが問題あるように報道されていた。
一時は「医師ら(患者を)置き去り」というような報道までなされ、その後福島県が発表を取り消したにもかかわらず、誤報を謝罪するような様子もない。
訂正されたところで、大半の人々の心に残るのは、「患者置き去り」というセンセーショナルな部分だけであり、「間違いだった」という記事に関心を向ける人のほうが多いとは到底思えない。
院長が「結果的に残して避難したのは間違いない」と言った、というような記事もあり、ニュアンスを取り違えて伝わる(推定)ような書き方をされているのは、同じ精神医療に携わるものとして、心が痛む。

精神疾患の患者さんが身体疾患を発症した時、受け入れてくれる病院は本当に少ない。
私の近隣でも精神科常勤のいる総合病院があるが、そこが最初に「満床です」と断れば、もう実質打つ手がないのが実情だ。
たとえ実質的には社会的入院、ほとんど問題となるような精神症状を認めない、「大人しい」患者さん、まして身体症状が重篤で、大声を出すどころか、喋ることもできないような患者さんであっても、「精神」というだけで「対応できません」と断ってくる。
「精神科なら●●病院ですよね」と言われ、そこが満床だったと告げると「●●が取らなかったものをどうしてうちが取らなきゃいけないんですか」という言われ方をしたことまである。

救急車が行ってくれる範囲の総合病院に全て断られ、外来受診を受け付けている一般病院に診療時間帯内に職員同伴でどうにか受診させたら「こんな状態の患者を黙って送ってきた非常識な医者の患者は入院させないし、入院させなかったらどうせもたんだろうから、診ない」と怒鳴られ、受け付けてすら貰えず、そのまま介護タクシーで帰ってきた患者さんもあった(当日はまだ本人が話せる状態だったが...)。

身体疾患で転院中に大腿骨骨頭骨折をした50代の患者さんが、本来手術適応であるにも関わらず「正直、普通の人ならやりますけどね、どうせリハビリにも協力できないでしょ」と手術をしてもらえずそのまま「今後車椅子で生活してください」と返されたこともある。

福島県の対応について詳細は知らないが、一般住民や他の身体疾患に対応する医療機関に比べて、F病院だけに最後の要避難者が残っていたというのは、後回しにされたからでは決してなかったといえるのだろうか。

他の医療機関に患者さんを避難・転院させようとしても、通常でも受け入れ先はなかなか見つからないところ、当時のFの場合、電話すら繋がらない状態であっただろうし、お願い先も大混乱だったであろうし、何処の精神科病院もお上の指導で病床削減傾向にあり、そうそうまとまって患者さんを引き受けてくれるところがあったとは思えない。

また、軽症の患者であっても、各避難所がまとまって精神科入院患者を引き受けてくれるか、というと「ノー」のところがほとんどだろうと推測される。
ある避難所で「明日100名の精神科患者を受け入れる」と聞いたら、「ただでさえ休めないのに、その上精神科患者と同じ屋根の下で過ごせというのか」と反対運動を起こす被災者が多いのではないか。

そんな状況と、迫り来る放射能への恐怖の中で、約3分の2の患者さんの避難に成功したF病院のスタッフはむしろ優秀だと思う。

100名前後の患者さんをたった4名で観ていたのか、他のスタッフはどこへ行った、というような意見も出ているようだが、もともと精神科単科病院というのは、職員数を身体より低く抑えられている。
300名規模の病院であればスタッフは多くて220名...これは、外注の掃除のおばちゃん、給食のおばちゃん、事務員、運転手、パートの看護助手←ゴミ集め、おむつ交換など普通のお手伝いの人であって、医療職ではない...の数字であって、これらが交代で24時間勤務をしているわけだから、平日日勤帯であっても130名くらいだ。
さらに医療職といえるのはその半分程度と見ていい。

F病院のスタッフの中には、夜勤明けで休んでいたが交通が寸断されて出勤できなかった人もいようし、避難指示が出てからでは当時指示の10キロ圏内に入れなかった人もいよう。
まとまって避難しているはずもない、約200名の患者さんに付き添って出た職員もかなりあるはずだ。
病院の前に並べて「解散!」というわけにはいかないのだから。

これが「津波で動ける患者さんの手を引いて高台に避難しました、動けない患者さんは逃がす時間なく流されました」だったら、ここまでセンセーショナルでなかったかもしれない。

情報入手手段も乏しい中、「原発が爆発するかもしれないから、退避するよう」指示されて、保護室で暴れている患者さんを職員が1対1で手錠をつけて避難することもできず、寝たきりで動かせない患者さんを、もう時間的に、物理的に、マンパワー的にどうしようもない状態になったとしたら。
いずれ戻ってくる患者さんたちのことも考えて医療従事者がとにかく一度病院から退避したとしても、責められないように思うが...。

TVドラマの「コード・ブルー」の中では退避命令が出ても、「あともう少し」と処置を続けるフライトドクター研修生たちがいたが、あれはドラマだからできること。
ハイパーレスキューだって、余震が起きればその場を一度離れるし、津波警報が出れば捜索を中断して高台に逃れる。
自分が二次的に被災して要救助者になることは絶対にあってはならないと教育されているはずで、それが美談になるべきではない。

これが目に見えない放射能だから、医療従事者が最後の患者の避難が終了するまでその場に残っていなかった、とされるのはどうか。
F病院だって、地震・火災時のマニュアルはあっても、原発事故のマニュアルまでは作っていなかったと思うし。

また、10キロ圏内に避難指示が出た時、すぐに迎えに来た家族がどれだけいたのか。
うちの病院なんかだと「ここに入院していれば、地震が来ても、食べ物と水があるだろうし、困らないから入院しなさい」と患者さん本人に勧める家族もいて、そんな家族が被災時に迎えに来るとは到底思えないから...。

私自身は、子どもたちに「いざとなったらお母さんは多分、ここに残らなきゃいけないから、あなたたちだけでも我慢して、お父さん(別れた夫)のお母さんのところへ疎開するのよ」と伝えている。
日本で今放射能汚染の起きえない地域、というのはないだろうし(沖縄だって原潜とか来るし...)、即死は困るけど、職場に残って多少なりとも被爆して、寿命が3年とか、5年とか、最悪10年くらい縮まったとしても、私自身は仕方ないと思うから...。
そんな話を姉にしたところ、「あんたは今のところ子どもが二人とも健康だからそう言える」と言われてしまった。
そう、子どもに何らかの障害があって、残して死ねない状況、自分が少しでも長生きして面倒をみなければいけない状況だったら、やっぱりそんなことも言えないんだろうな。





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最終更新日  2011年03月22日 14時35分47秒
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