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テーマ:この恋におちて・・・(330)
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午後11時を過ぎてからP、奴、そしてパトロン女が揃って我が家へやってきた。ワンカロの農業市でのライブからみんな帰ってきたのだろう。
翌朝リマに帰るPのお別れ会をしようということになり、奴が前に買ってあったラム酒とコカコーラを出してきた。 4人でラム酒とコカコーラを混ぜて飲む。 飲めないという私に、強引にラム酒を入れる奴。 奴が、日本人はRとLとRRの発音の使い分けが出来ないと言い出して、私をいじくる。 彼のグループのメンバーの料理の話から、味の素を使うと料理がいかにうまくなるか?という話までどんどんはずんでいく。 私は話をする奴の顔をそっと見つめるばかり。 奴の怪談話が始まる。 チンチャのお爺さんの家で見た修道士の幽霊の話。 パトロン女Eは幽霊は見たことがないが、クスコの大聖堂には強い力を感じ、一人では入れないという・・。 Pは買ってきたヒップホップの海賊版のCDをかける。 奴が踊りだす。 サルサを踊っているのを見てもうまく思わなかったけど、結構うまいぞ・・。 デジカメで奴の踊る姿を撮った。 Pが叫ぶ。 「ピエドラ(Piedra=石)に行きたい!!!」 ピエドラ~? クスコの街で有名な12角の石のこと。 夜中の2時に何を言い出すのだ・・。 みんなでタクシーをつかまえてライトアップされている12角の石へ・・。 そこで、女共3人の写真を奴がとる。 アルマス広場、大聖堂前でも女3人の集合写真・・。 そして、サンフランシスコ広場へ・・。 奴とPはリマの近所の教区で一緒だったとかで、二人で掛け合いで歌を歌い始める。息がピッタリ。 私はおろか、パトロン女にも割り込めない世界だ。 サンフランシスコ教会をバックに奴がPの写真を思う存分とる。 奴がいかにPを大切にしているかが伝わってきた。 そしてタクシーで再び我が家へ・ また酒を開けて飲み始める。 私はもうフラフラだ。 朝7時15分の便に乗る予定のPはシャワーを浴びにあがり、荷造りを始める。 奴は2階と1階を行ったり来たりする。 気づけばウトウトし始める私。 ふっと目を開けると、パトロン女と奴がキスをする寸前だった。 すぐそばにいる私が目を覚ましたのに気づき、顔を背ける二人。 なんでぇ~?!と思いながらもまた私は寝てしまう・・。 「retama、retama・・・」 どこかで声が聞こえる・・。 「明日仕事なんでしょ。早く自分の部屋に入って寝なさい・・」 う、うるさいなあ~。ほっといてよ。 「おい、部屋に帰れよ」 といいながら、私の肩を揺らしているのを感じる。 「retama、いい加減にしろよ!」 鼻の穴のあたりに奴の指が入る。 何やってくれてるの~。 私をなんだと思っているの~! 二人とも私を心配してくれてるの?それとも私がうっとうしいの? 思いながらも体が動かない。 二人が二階に上がった。 私もついていかなければ・・。置いていかないで!! 階段の途中でへたりこんでしまう。 「お願いだから、早く寝てくれよ」 なんとか、起き上がり、Pの部屋に近づく、 まともに奴の顔を見られない。 でも、最後にPには挨拶をしたかった。 本当は彼女とはいろいろ話をしたかったけど、彼女はずっと部屋にこもっていたし、生活パターの違いからいつもすれ違いばかりで、ぜんぜん話をすることができなかった。 「Buen Viaje!!(ブエン・ビアヘ=よい旅を!)」 私は奴の顔をまともに見ることも出来ず、部屋に入った。そのままベッドに入る 頭まで毛布をかぶると涙が出てきた。嗚咽の音が部屋の外にもれないかどうか心配しているうちに寝入ってしまったようで、気づけば朝になっていた。 朝の第一便が飛び立つ音が聞こえる。Pがもうクスコを後にしたのだ・・。 起き上がって久しぶりにPがいた部屋に入る。 元どおりにきれいになった部屋を見て、ふっとさびしさがこみ上げてきた。 一人だけ置いてけぼりにされたような気になったが、そんな気持ちに浸っているわけにはいかない。 私は寝不足の体を引っ張って仕事に出なければならなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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