2006年9月に
惑星の定義というエントリで冥王星が惑星ではなくなった経緯をまとめた。
その後、いくつか動きがあったので、その後の情報をまとめておく。
1.dwarf planetの日本語訳
当時のエントリでは、dwarf planetを矮惑星と表記したが、2007年6月21日に発表された日本学術会議の提言によると「準惑星」と表記することを推奨している。
対外報告 新しい太陽系像について
2.プルートイド(Plutoid)の新設
太陽系の天体の分類にPlutoid(日本語訳、冥王星型天体)というカテゴリが追加された。
ただ、このカテゴリがけっこうややこしい。
(1)天体の分類の難しさ
まず、この背景にあるのは、従来太陽系と認識していた範囲が大きく広がったことにある。太陽系の範囲については後述するが、冥王星が太陽系の果て、と思っていたら、そのはるか先まで太陽系だった、ということがわかったのである。
海王星の外側にある軌道上(エッジワース・カイパーベルトという)に多数の天体がみつかり、小惑星だけでなく冥王星並みの大きさも発見されてきたことで、冥王星が惑星でいいのかという問題に火がついた。
IAUによる太陽系天体の3つのカテゴリは以下となる。
- 惑星(Planet)
- 準惑星(dwarf planet)
- 小惑星(small solar system bodies)
そして、上記の日本学術会議が報告している、中学教科書等に乗る太陽系天体のカテゴリわけは、以下の5つになる。
日本の分類の中に、準惑星(dwarf planet)が入っていないことがポイントである。
日本学術会議は、準惑星の定義に曖昧さが残る、また準惑星の判定基準が高校までの教育レベルを超えていると判断し、この概念の積極的な使用は推奨しないとした。
では、IAUの3つのカテゴリと、日本の教育におけるカテゴリは、どう関係づくのかというと、wikipediaにある太陽系の天体の分類がわかりやすい。
IAUが主に天体の規模を尺度とした分類をしているのに対し、日本学出会議は、天体の軌道(位置)を主たる尺度としている違いであることがわかる。「水金地火木土天海冥」の語呂合わせが根強く残っているためか・・・。
さらに、この表をみると、「小惑星」の扱いが微妙であることがわかる。英語名がminor planetも小惑星、asteroidも小惑星である。
(2)冥王星型天体とは
規模的な尺度と位置的な尺度を合わせれば、冥王星型天体とは何かはわかりやすい。
まず、規模的には、冥王星型天体(plutoid)は準惑星(dwarf planet)の一部である。
そして、位置的には海王星軌道の外側に位置する天体であり、太陽系外縁天体(trans-Neptunian objects(TNO))と呼ばれる仲間の一部である。
つまり、海王星の外側にいて、準惑星になれる規模がある天体を冥王星型天体と呼ぶ。
冥王星は惑星ではなくなり準惑星のただの1つになってしまったが、冥王星型天体という分類を作ることで、そのカテゴリにおける代表天体であるという座を獲得できたのである。
冥王星の衛星として認識されていたカロンは、冥王星型天体なのだろうか。
残念ながら衛星となっているうちは、小惑星(small solar system bodies)のひとつなので、冥王星型天体には含まれない。このあたりは、また今後検討がされていくのでしょう。
ところで。
こうした分類が必要なら、火星と木星軌道上の間にあるアステロイドベルト内の準惑星ケレスが属するべき分類も作るべきではないかと思うのは、素人の浅はかさでしょうか。
太陽系の広さについては、また後日。