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2021年12月18日
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Houston Intercontinenal in December 1978
Photo by George Hamlin
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 >前回
 
 
 四日後片山は、パリと合衆国テキサス州ヒューストンを直行便で結ぶトランス・アトランチック航空のジャンボ機で、ヒューストン空港に着いた。
 乗客のほとんどは、月ロケットで有名なNASA(ナサ)の有人宇宙センターを見物するのが目的のようであった。ヒューストンの別名はアストロ・シティまたはスペース・シティと呼ばれる。
 ルシアン・ベルグマンが絶命する直前に残した言葉から、ヨーロッパからニューヨークのケネディ国際空港に向うのはリスクが大きすぎる、と片山は判断したのだ。ケネディ国際空港では、赤い軍団の刺客が大量に、手ぐすねひいて片山を待ち構えているにちがいない。
 ところが、ヨーロッパから合衆国のほかの国際空港に向うためには、ほとんどの場合、ニューヨークかシカゴかオヘヤ国際空港を経由せねばならない。
 旅客機に乗りこむ時にはハイジャック防止のためのX線検査があるから、銃器を身につけることが出来ない片山が、ケネディ空港の乗り継ぎ待ちのトランジット・ルームで赤い軍団の刺客の掃射を浴びたら、勝ち目はほとんど無い。
 それかと言って、ニューヨーク経由を避けてシカゴに降りたとしても、シカゴがあるイリノイズ州はこのところ銃刀法がひどく厳しくなって、銃器の州外持出しと他州からの銃器の持込みを原則として禁止している。
 それに、ニューヨークの国際空港でも、片山の顔写真のプリントを手にした赤い軍団の刺客が大勢で待ち構えていることは、当然ながら予想できた。
 片山が変装していても、大勢の眼力にかかったら見破られる怖(おそ)れが大きい。
 パリからヒューストンへの直行便は、週に二便しかないが、ニューヨークから遠く離れたテキサスに飛ぶとは、赤い軍団の予想外のことであろう。
 それにテキサスは、銃器でもって築いてきた州だから、銃の所持は、断じて犯してはならぬ住民の権利だという伝統を守っている。
 ヒューストン行きの便を待っている三日間に、片山は野牛組に残金を払い、ダヴィド・ハイラルの私邸を襲い、地中海銀行とハイラル貿易の両方の役員を兼ねている連中の私邸も襲った。
 しかし、ハイラルの私邸に残っているのは、ハイラルやハイラルの家族の行方も知らず、ましてや赤い軍団のことなど本当に知らぬらしい留守番の使用人だけであった。
 地中海銀行とハイラル銀行の両方の役員を兼ねている連中は逃亡したあとであった。
 片山はまた、パリの日本大使館を通じて、片山を傭(やと)っている政府機関と連絡をとった。アフリカのガメリアからパリに移っていた秘密駐在員の月形と会って長時間を共に過ごした・・・・・・。
 ヒューストンの国際空港に降りた片山は、口髭(くちひげ)を剃(そ)り落し、陽に褪(あ)せたブロンドの長髪のカツラをつけ、目の色がブルーに見えるコンタクト・レンズをつけていた。
 晩秋というよりももう冬だが太陽の光は強烈だ。しかし乾燥(かんそう)しきっているから、日陰(ひかげ)では肌寒(はださむ)い。
 使ったあとは焼却することを条件に月形から渡されたフランス大使館の一等書官という身分の偽造公用旅券とA一(ワン)の外交ヴィザを示して税関もフリー・パスした片山は、大きなスーツ・ケース二個を提げて空港内のエイヴィスのレンタ・カー会社のカウンターに行った。
 いま現在の片山の顔写真を貼り、髪の色や目の色も今の片山に合わせた、フロリダ州マイアミ在住のスチーヴ・デンヴァー名義の偽造運転免許証を示し、ダットサン二八〇Zを借りた。Zカーは、日本ではフェアレディの名で呼ばれている。
 日本の狭い道路では結構大柄に見えるZカーも、道が広い上にフル・サイズのアメ車が多い西部では、ひどく小柄で敏捷(びんしょう)そうに見える。ちょうど日本で、かつてのホンダS八〇〇を見る感じだ。

 
 

Datsun 280Z 1979



  
 

 
 
 

 
 
 
 
HONDA S800



 
 
 

 
 
 


 



 トランク・ルームに二つのスーツ・ケースを入れ、助手席にショールダー・バッグを置いた片山は、四十キロほど離れたヒューストンの市内に向う。道の左右のところどころに、さまざまな種類のサボテンが林立している。
 アメリカは全国で最高速度が五十五マイル  約九十キロ  に押さえられているから、制限速度内で使うぶんには二八〇Zは小気味がいい性能を示す。
 モーテルというよりホテルに近いヘリテージ・インにチェック・インした片山は、スーツ・ケースを一つとショールダー・バッグを自分の部屋に運んだ。
 コンタクト・レンズを外し、頭にバス・キャップをかぶってシャワーを浴びると、再びコンタクト・レンズをつけ、リーのジーンズ・パンツをはいた。
 ペンドルトンのウェスターン・シャツをつけ、スーツ・ケースから出したホルスター・入りのG・Iコルトと予備弾倉入れ、それにガーバー・フォールディング・スポーツマンを入れたスキャバードを腰のベルトにつけた。
 丈が長いリーのオーヴァーオール・ストーム・ジャケットをつけた片山は、モーテル内のコーヒー・ショップに向かう途中、売店で四インチ・ブリムのウェスターン・ストロー・ハットを買ってかぶる。ストロー・ハットといっても、ウェスターンのものは材質が丈夫な上に特殊加工しているから、日本の麦ワラ帽のようにペナペナとしてない。
 
 
 

Lee Storm Rider Denim Jacket 1970's
 

 
 
 

 
 
 
 
 
 
Western Straw Cowboy Hat
 

 
 
 



 

 軽食堂であるコーヒー・ショップの男の客は、彫刻入りの腰のホルスターに差した拳銃の、金銀の彫刻入りの銃把(じゅうは)を誇らしげに見せびらかしたカウボーイ姿の者が多かった。土地柄、彼等の拳銃はみんなリヴォルヴァーで、シングル・アクションが大半だ。
 西部のウェイトレスは、ピチピチした娘が多い。まず大きなガラスのジャグから浅炒(あさい)りのアメリカン・コーヒーを注いでニッコリ笑う。
 片山はチキン・スープと肝臓(リヴァー)ステーキと甘酢っぱいキャベツ・サラダのコールスロー、それに、果物はキャンタロン(メロン)を頼んだ。
 大きなリヴァー・ステーキには、フレンチ・ポテトとラッキョウ(スモール・オニオン)の酢漬(すづ)けがついていた。コーヒー・カップが空になりそうになると、ウェイトレスがすぐに注ぎ足す。
 客も店の者も、西部訛(なま)りで話す片山に、殺意や敵意を見せる者はいなかった。このモーテルでは片山は久しぶりにぐっすり眠れそうだ。
 カボチャのような色をしたキャンタローン・メロンを平らげた片山は、充分なチップを置き、レジに金を払いながら、市内の主なスポーツ用品店や軍隊の放出品(ミリタリー・サープラス)を売っている店を尋ねる。
 レジではタバコも売っているから、ウィンストンを二た箱と、スコールの噛みタバコの小罐を五つ買う。フランスの噛(か)みタバコは胸糞が悪い臭(にお)いがして片山には合わない。
 ウェスターン・ストロー・ハットを目深にかぶった片山はダットサン二八〇を運転して、買物に出た。
 まず、靴屋(くつや)で、エイクメ・ホウキイの荒い仕事や山登りにも耐えられるというウェスターン・ブーツを買った。それを履(は)く。脱いだドレス・シューズは紙袋に入れて抱えた。
 
 
 



 


 靴屋の主人は、市の中心地から三十マイルほど離れた小さな町フォート・モンティで、今夕方から夜の九時頃までロディオが開かれるから、それを見物するように、と片山に勧めた。
 片山はアーミー・アンド・ネイヴィ・サープラス・ショップに寄って数点の買い物をしたが、そのなかにはサファリランドのM三防弾チョッキが三枚あった。
 次いで片山は、レジンド・スポーティング・グッズという巨大な銃砲店に入る。
 まず買ったのは、レミントンM七〇〇BDLの口径八ミリ・レミントン・マグナムのボルト・アクション・ライフルとウィヴァーV七(セブン)のライフル・スコープとマウント、八ミリ・レミントン・マグナムの二百二十グレイン・ポインテッド・ソフト・ポイント・コアーロクト弾頭付き実包千発だ。百八十五グレイン弾頭の実包も百発買う。
 
 


 
 
 






 そのライフル用の革製スキャバード、ライフル・スコープ装着用のロック・タイトや銃身と銃身のベッティングのチューン・アップ用のマイクロ・ベッド接着剤やヤスリ、万力なども買う。
 刃渡り五インチのガーバー・マークI(ワン)のブーツ・ナイフも二本買う。米国ではブーツや上着の袖(スリーヴ)の内側に刺殺用のナイフを隠し持つことが大流行していて、凶悪犯を相手にする第一線の刑事はみんな銃器のほかにブーツ・ナイフやスリーヴ・ナイフ、それに柄をベルトのバックルに見せかけたバックル・ナイフを携帯していると言ってもオーヴァーではない。




 

 短剣の形をしたマークI(ワン)のグリーンの革製スキャバードには、ベルトにもブーツに装着出来るように、金属製のバネ・クリップ板がついている。ナイフがスキャバードから脱け落ちないようにしてある留め革のスナップ・ボタンは親指一つで素早く外せる。
 左右の足のブーツの内側にガーバーのブーツ・ナイフをスキャバードごと差しこみ、ブーツにクリップで留めた片山は、店内をぶらぶらと歩き、クロスボウのコーナーで足をとめた。
 クロスボウは日本ではボウ・ガンと呼ばれている弓鉄砲だ。弩(いしゆみ)とか十字弓とも言う。銃床と引金がついていて、金属製の弓に張られた弦(ストリング)を引っぱって逆鉤(リヴァーサル・フック)に引っかけておき、照準を定めたあと引金を絞ると、弦は鉤から外れ、レールにはまっていた矢を飛ばすようになっている。普通の弓よりかなり強力だ。
 そのクロスボウのコーナーに、英国製のコマンドウ・セルフ・ロッキング・クロスボウのニュー・タイプが、スコープ付きで四百四十四ドル九十九セントで売られていた。
 
 
 

Barnett Commando Crossbow


 

 
 







 コマンドウ・クロスボウの特長は、スケルトン型の銃床尾を折ると、連動するテコの力で、ただの人力ではとても重くて引っぱることが出来ないほどの弦を軽く引くことが出来ることだ。
 普通、人力だけで引くには張力八十ポンドぐらいがいいところで、金属製の弓の抵抗に逆らって百ポンドの弦を引くとなると辛い。
 だから、それ以上の張力を要するものとなると、クランクを使い、ギアで減速しながら弦を捲きあげる必要があった。
 それだと、携帯用のクロスボウでも張力五百ポンド・クラスも可能だが、機構が複雑な上にクロスボウの重量が大きくなり、弦の捲き上げ時間がかかる。
 それがニュー・コマンドウ・クロスボウだと、テコの応用だから、最高張力二百五十ポンドの弦を一挙に引くことが出来る。そのコマンドウの輸入会社ホライゾンは、傭兵募集機関アルファ・グループの一つだ。
 片山はクロスボウのほか、アルミ・シャフトの矢を五十本、四枚刃の矢尻三百個、予備の弦や携帯用革ケースや矢筒などを買った。標的と矢止めになる古い電話帳を十冊ほどタダでもらった。
 軍用銃の払い下げコーナーでM十六自動ライフルの銃身(バレル)一本を七十ドルで買う。五百本ぐらいのうちから一番精度がよさそうなやつを択(えら)んだのだ。銃身の値段には、銃身と受筒(レシーヴァー)を外したり結合させる時に使うレンチ・キットのものも含まれていた。
 M十六用の実包も五千発買う。まとめて五千発買ったところで、驚いたり不審気な顔をするテキサス人はいない。
 モーテルに戻り、レミントンM七〇〇BDLのライフルをアキュライズ(チューン・アップ)する作業にかかる。
 八ミリ・レミントン・マグナムの実包は、アフリカ猟のスタンダード口径である三七五ホーランド・アンド・ホーランド・マグナム薬莢(やっきょう)の首を八ミリ  千分のインチで言うと約三二三五径  にネック・ダウンし、肩の角度を鋭くし、二百二十グレイン弾頭の場合にはデュポンI・M・R四八三一マグナム火薬を約七十五グレイン押しこんであるから、反動は小さいとは言えない。
 だから片山は、銃身全体をフリー・フローティングさせずに、銃身の前半部だけをフリー・フローティングさせ、後半分をマイクロ・ベッドを介して銃床の溝(みぞ)に密着させるようにした。
 
 

Youtube -
Remington Model 700: full disassembly & assembly
by Si vis pacem , para bellum.
https://www.youtube.com/watch?v=lA4EjAciTAs
 

 
 
 
 
Glass Bedding a Barreled Action by The Real Gunsmith
https://www.youtube.com/watch?v=tAcYkBfL2WE
 

 
 
 
 
Gunsmithing - How to Glass Bed a Rifle Stock Presented
by Larry Potterfield of MidwayUSA
https://www.youtube.com/watch?v=oOo-_Ss7aIs
 

 
 
 
 
Glass Bedding the Savage M-11 into the Bell & Carlson stock.
by cavedweller1959
https://www.youtube.com/watch?v=I9q_522StCI
 


 
 
 
 
 引金の逆鉤(シアー)をオイル・ストーンでラッピングし、引金の切れ味が自分の好みにぴったりくるように、引金機構の調節ネジを回した。ロック・タイトで調節ネジを固定する。
 ライフル・スコープのマウントやリングも一度外し、また組立てながら、ネジをロック・タイトで固定する。
 銃床のベッディングに使ったマイクロ・ベッドの二液混合接着剤が乾いて硬化するまで時間がかかるので、モーテルを出た片山は、ダットサン二八〇Zに乗り、ルート四五のフリー・ウェイをフォート・モンティに向った。
 道の左右に広がる草がまばらな牧場に、放牧されているヘレフォードやアンギス種の牛に混って、草原のスピード・ランナーのプロングホーン・アンテロープの群れが石鉢(いしばち)から水を呑(の)んでいるのが、遠くに白っぽく見える。枯れたデザートグラスが丸まって飛び、路肩には轢(ひ)き殺されたコヨーテやヤマアラシ(ポーキー)の死体が転がっている。
 
 
 

Youtube -
Pronghorn -- Berrendo o Antilope Americano (Antilocapra americana)
by manolodorecho
https://www.youtube.com/watch?v=8t3QXPLKwm0 
 

 
 
 
 
Why Do Tumbleweeds Tumble? by Deep Look
https://www.youtube.com/watch?v=dATZsuPdOnM
 


 
 

 自殺(スーサイド)サーキットと呼ばれるロディオは、町中心部の大広場で行われることになっていたから、フリーウェイを降りて町に入ると、ノロノロ運転をしいられた。馬を積んだ派手な色のトレーラーがいたるところに駐(と)まっている。
 メイン・ストリートに羽根飾りをつけたインディアンたちやスパンコールを光らせたロディオ・ガールズ、それに昔の騎兵隊員に扮した連中のパレードがやってきたので、交通渋滞に拍車がかけられた。
 片山は裏通りに車を捨てて会場に歩く。切符とビック・マック・ハンバーガーとコークを買って、仮説スタンドのベンチに腰を落ちつける。もう満席近かった。
 ロディオは、“アンソシエーテッド・サドル” と呼ばれる、ホーンが無いか、あっても小さな鞍(くら)をつけた暴れ馬に乗るサドル・ブロンコ・ライディングからか始まった。
 サドル・ホーンが特殊なのは、普通のホーンだと、跳ねあげられてホーンの上に落ちた時、尻の穴に食いこんだりすると悶絶(もんぜつ)するからだ。
 
 
 

Youtube -
How to Bronc Ride - Reed Neely by George Veater
https://www.youtube.com/watch?v=GC4PrN2eNFQ
 


 


 片手で握った手綱のロープだけで暴れ馬をあやつろうとするライダーで十秒以上馬上にとどまることが出来た者は少なかった。脚や手を折ったり内臓打撲で気絶する者が続出する。
 鞍無しの暴れ馬の胸革の把手に片手でつかまって、振り落とされないようにと、ライダーが馬上で八秒間以上頑張(がんば)ろうとするベアーバック・ブロンコ・ライディングも、使用する馬が小さくて敏捷なので大変だ。
 このレースでも怪我人が続出するが、ロディオの出場者だし、賞金稼(かせ)ぎのプロだから同情しなくてもいい。以上二つのレースは、ライダーだけを採点するのでなく、馬も採点される。暴れない馬は失格だ。
 暴れ牛を相手にする道化師の曲芸や、体にぴったりのジャンプ・スーツをつけた美女のトリック・ライディングをはさんで、走る馬の上から雄牛に跳び移り、頭をねじってひっくり返すまでの五、六秒の時間を競うスティア・レスリング・・・・・・これも走る馬の上から逃げる仔牛に投げ繩を掛け、馬から跳び降りざま仔牛を縛りあげるカーフ・ローピング  十秒ぐらいのあいだにやってのける  など、次々に試合が行われる。
 夜になり、人工照明が入っている。
 片山は久しぶりに戦士の休息ともいうべき時間をエンジョイした。トイレも要所要所に配置されている。
 競技の最後は、若い娘たちが、スタート・ラインから見て、それぞれ三十メーターほどの間隔を置いて三角形に配置されたドラム罐(かん)のマーク点を結ぶコースを、愛馬にまたがって、いかに早く旋回するかのタイムを争うバレル・レーシングであった。
 車ならジムカーナ、スキーならスラロームのようなレースであった。直線では愛馬に振るっていた鞭(むち)を口にくわえ、馬ともども斜めに傾きながら頭を真っすぐに起し、土煙をあげてビールやタバコの広告入りのドラム罐のまわりを旋回する娘たちの表情と躍動する肉体には鮮烈な色気がある。片山はハワイで知りあったバレル・レーシングのローカル・チャンピオンのベッキーを想いだした。
 ロディオが終ると、片山はモーテルに戻る途中、ヒューストンでレストランに寄り、噛みしめると肉汁が口のなかではじけ飛ぶステーキと、ベーコン・クリスプ  カリカリに焼いて脂(あぶら)を抜いたベーコンの粉  とサワー・クリームを掛けたベークド・ポテトで夜食をとった。
 モーテルに戻り、カツラとコンタクト・レンズを外してベッドに転がりこむと、五秒もたたぬうちに眠りこむ。
 
 
 翌朝、熟睡から覚めた片山は、レミントンM七〇〇ライフルを組立て、M十六自動ライフルの焼き鈍(なま)された銃身を昨日買った銃身と交換した。
 モーテルのコーヒー・ショップで朝食をとったあと、ジャンボ・サンドウィッチを包んでもらい、自動販売機で清涼飲料水の罐を数本買った。
 部屋に運んであった荷物を全部車に積んでレミントン・ライフルと銃身を換えたM十六の試射に出発する。防弾チョッキのテストと、コマンドウ・クロスボウの試射も行う予定だ。
 射撃場や遠く離れた原野まで行かなくても、牛馬が巣穴に脚を突っこんで骨を折ってしまうためにペスト並みに扱われている、地リスの親玉のようなプレイリー・ドッグを退治してやりに来たと言えば、牧場主は喜んでゲートを開いてくれる筈だ。持主の許可さえあれば、牧場で発砲することは何ら違法ではない。ここは狭い日本と違い、牧場のスケールもケタ外れだから、片山が牧舎から遠く離れたところで何をしようと、牧場側に気付かれることはない筈だ。
 
 (つづく)





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Last updated  2021年12月19日 10時02分49秒
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