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2023年01月19日
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カテゴリ:陽明学
 
 一一二の奥に入る 旧友問う。予〔わ〕が母方に微小の親類多く侍〔はべ〕り。
うとうとしければ恨み、ねんごろにすることは、余多〔あまた〕の者なれば成りがたく侍り。
予が宗領(長男)によめをむかえれば、親類すくなき者をえらぶべしと思い侍り。

 云う。是〔こ〕れ心を立つるの過ち也。
むつかしきと思い、いとう(厭う)心を以てむかうる故に、苦労なり。
むかし、大舜の君、鶏〔にわとり〕鳴きておきてつとめて善をなし給いしは、何ぞや。
人倫の交わりに道ある也。
貴老、微小の親類多きは、善をする事の多き也。
悦ぶべく共〔とも〕うれう(憂う)べからず。
若〔も〕し貴老微小にて親類富貴ならば、貴老のおとづれをいとわん事、
貴老の、微小のゆかりをいとえるごとくなるべし。
しからば、遠慮してひかえんより外〔ほか〕の事あらじ。
何を以てか善をなし給うこと広からん。
幸いに親類微小にて貴老のおとづれを喜ぶ者なれば、
貴老是れをしたしみて善をする事楽しみ給え。
貴老、富貴の人にあらずといえ共〔ども〕、又貧賤ならず。
志〔こころざし〕次第にて、ゆかりの人々の貴老の志を悦ぶ程の事はなるべき事也。
衣類・米麦・菓子・肴〔さかな/コウ〕等、もしくは金銀も、
少しづつおりにふれ有るにまかせてかわるがわるあたえ(与え)、
物なき時は見廻使〔みまづかい〕、言伝〔ことづて〕の音信〔いんしん〕も可〔か〕也。
己〔おのれ〕を尽くして後あきたらずしてうらむる者あらば、彼が非〔ひ〕也。
とがむべからず。
人〔ひと〕皆〔みな〕悪名〔あくみょう〕をにくみて
令名〔れいめい〕(※名声・令聞)を好めり。
小善をつみて(積みて)つもらざれば令名あらわれず。
小人〔しょうじん〕は、人の目に立つべき大善ならばせんと思いて、小善をば目にもかけず。
君子は、日々になすべき小善を一つもすてず、大善も応ずればこれを行〔おこな〕う。
求めてなすにあらず。
夫〔そ〕れ大善はまれにして小善は日々に多し。
大善は名に近く小善は徳に近し。
大善は人あらそいて(争いて)なさんとす、名を好むが故〔ゆえ〕也。
真〔まこと〕の大善は徳より大なるはなし。徳は善の淵源〔えんげん〕也。
徳ある時は無心にして善かぎりなし。
貴老、小親類の多きによりて懇情〔こんじょう〕の善を行い、
徳をつみ給わんは、幸いに非〔あら〕ずや。
求めずして令名きこゆべし、善をするの媒〔なかだち〕と思い給わばいとう心生ずべからず。
かえりて其のつとめ、心の楽しみとなるべし。
其の上、人の悦ぶ心をあつめれば和気家にみつ(満つ/充つ)べし。
日々に無声〔ぶせい〕の楽〔ガク〕をきくならん。
人心服従する時は、号令行われ礼儀立つもの也。
和して且〔か〕つ礼あらば、子孫必ず多福を受くべし。
易〔エキ〕に云う、積善の家には必ず余慶〔よけい〕有り(易云、積善之家必有余慶)。





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Last updated  2023年01月20日 22時00分13秒



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