思えば遠くへ来た私

2週に一度の土曜日の朝は

友人の家に行ってしまう旦那だが

今朝その友人から用事が出来たと電話があり

急にヒマになってしまった旦那、

公園に行こうと思っていた私と子供達を捕まえて

結局いつもの旧市街のカフェまで散歩。

それはそれで楽しかったんだけど。

その帰りに大通りを歩いている時に

ある建物の前庭に紅葉の木が植えてあるのを見つけ

「これ、仏語でなんて言うの？」

と訊くと

「erable japonais だ」

と教えてくれた。

“日本の”と言う形容詞が付いているくらいだから

これってやっぱり日本的な物なのかしら？

キレイだなあと見とれていると

「欲しいならバルコニーに植える事だって出来るぞ」

なんて言う。

でも実は私はあまり日本的な物には惹かれない。

昔から、どこか西洋かぶれしてた所があったからか

自分の家にアジア的な物を置きたいとは

露ほども思わないのだ。

旦那にも

「私がわざわざフランスに来てるのは

　ヨーロッパ的な物が好きだからなんだから

　別にバルコニーにこの植物を置きたいなんて思わないよ」

と言うと

「ふ～ん、ヨーロッパ的な物ねえ」

と考え込んだ旦那、

その後こう言って退けた。

「じゃあ、毎日美しいヨーロッパ的な物が近くにあって

　さぞ満足してることだろうなあ」

・・・・・・えっと

これってどう言う意味でしょうか？

そう思って奴の顔を見ると

私に向かってウインクして来る。

・・・・・・アホか！！

どうやら奴が言いたい「bel objet europeen」

すなわち「美しいヨーロッパ的な物」とは

ズバリ奴自身の事らしい。

自信過剰なのは知ってたけど

どうにも度を超してる気がして

思わず日本語で「アホか！！」

と道ばたで大声で叫んでしまった私でした。

さて、

家に帰って来ると

朝回しておいた洗濯機が止まっていて

どうやら洗濯が完了した模様。

なのですぐに昨日干したままにしておいた洗濯物を取り入れ

旦那に干すように言った。

だって、今日の洗濯物は全て旦那の物だから。

たまにこのように仕事で着る服を大量に洗濯するので

勿論その中には私や子供達の物は入れたりしない。

旦那の仕事着の汚れったら半端じゃないし。

で、

早速自分で洗濯物を干しにバルコニーに出る旦那。

フランス人だからか

自分の事は自分でやると言う事が身に付いているので

こういう所は本当に楽。

洗濯物も干し終えて

お昼ご飯に旦那が作ってくれたサンドイッチを食べていると

北の方から真っ黒な雨雲が到着したようで

あれよあれよと言う間に外が薄暗くなってきた。

旦那に「雨が降りそうだよ」

と一応言ってみたけど

「そうだな」

のひと言で腰を上げようとしない。

・・・洗濯もの、濡れちゃうなあ。

もう慣れっこになってるので

別に私も洗濯物を室内に干そうとも思わなかった。

いや、正確に言うと

旦那の洗濯物を、だけど。

これがもし私や子供達の物だったら

まだ雨に濡れてない段階だから

きっと自分で物干しごと室内に入れただろうけど

今日の洗濯物は旦那の物、しかも仕事着。

旦那じゃないけど

今日雨に濡れてびしょびしょになっても

3日くらいあれば乾くしさ

と思った訳だ。

案のじょう降り出した雨を窓越しに眺めながら

「結構降ってるなあ」

と涼しい顔の旦那。

さっき干した洗濯物の事は

これぽっちも心配じゃないらしい。

私はまだここまでではないけど

それでも随分気楽に物毎を考えられるようになった。

濡れた物はいつかは乾く。

雨がふり続かない限りは。

幸いニースは雨が降る事の方がまれ。

一応4月と10・11月は雨の季節だけど

今は3月だしね。

ああ、

こんな風に言い分けっぽく書いてる私って

もしかしたら相当

うちの旦那的考え方に染まって来てるのかもな。

・・・せめてあのアホさ加減にだけは染まりたくないわ。





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