ザク考察2回目「ザクが残したもの」
ザクはどのような功績を挙げ、後世に何を残したのかを考えてみる。ザクが従来の兵器と一線を画している機能といえば、やはり「手」であるが、ザクが最も戦果を挙げたのは、開戦当初の「一週間戦争」と、「ルウム戦役」である。「一週間戦争」ではまず、宣戦布告後に行われたサイド1,2,4への奇襲に出撃。核ミサイルによる無差別攻撃を敢行し、驚異的な攻撃力を見せている。また、「ブリティッシュ作戦」では、サイド2の8バンチ・コロニー、アイランドフィッシュに、ザクの工作部隊が進入。「手」を使用して核パルスエンジンを装着し、同コロニーを南米の連邦軍本部ジャブロー基地目掛けて落下させることに成功した。コロニーは結果的に大気圏突入の衝撃で軌道を逸れ、ジャブローには落下しなかったが、一連の作戦が人間さながらの作業性を持つMSの存在なしに成功しなかったであろうことは明らかである。「手」に持つ武装を切り替えるだけで、ザクは様々な作戦に対応することが出来たのである。ここまで汎用性の高い兵器は他に類を見ない。しかも、「手」に持てるのは武器だけではない。状況に応じて、「土木作業部隊」になったり、「工作部隊」にまでなりえたのである。さらにサイド5宙域で戦われた「ルウム戦役」において、ザクは圧倒的な対艦攻撃力をも実証して見せた。レーダーの効かないミノフスキー粒子散布下では、小型で機動性の高いザクを艦砲で追うことは事実上不可能で、連邦軍艦隊は文字通り成す術なく大敗。実に出撃戦力の8割を失うことになったのだ。一説にはこの時、推力を強化したS型のザクが通常の3倍の速度で連邦軍艦隊を翻弄、たった1機で5隻もの艦艇を撃沈したと言われているほどである。今日ではS型ザクの推力が通常型の1.3倍ほどだったことが確認されており、この逸話もザクの性能が産んだ一種の戦場伝説であるとする説が支配的であるにせよ、その有効性に疑問の余地はない。いずれにせよ、こうした戦績が大艦巨砲主義を無用にしてしまったのは間違いないだろう。いくら火力が大きくても、命中しなければ無意味であり、事実連邦軍も、一年戦争後半には独自にMSを量産、艦艇にも応急的にではあるが、MS搭載能力を付加し、反抗作戦に臨んでいる。戦争はザクの登場によって、MS対MSの戦いで決せられる時代を迎えたのである。これがザクがもたらしたものである。しかし、仮想敵を艦艇としていたザクの兵器としては役割は逆に言えばここで終わってしまったといってもあながち言いすぎではなかろう。連邦のMSに抗するのは荷が重かったのである。つまり、ザクによって、時代は進み、進んだ時代はザクを時代遅れにしたのである。皮肉な話である。