【書籍感想】クローバー・レイン
書籍の感想です。今回は「クローバー・レイン」です。クローバー・レイン (ポプラ文庫 日本文学 245) [ 大崎 梢 ]出版業界のお仕事小説です。大手出版社に勤める彰彦は落ち目の作家の原稿を目にして、衝撃を受けます。これは素晴らしい、と感動した彰彦は書籍化に向けて動き出します。しかし、そこには大きな壁があるのでした。毎月数多くの書籍が発売される昨今の状況では、出版社は確実に売れるものを書籍化したいと思うのは当然のことです。話題があるから売れる、売れれば話題になる、という好循環がある一方で話題がなければ、平積みもされない、平積みされなければ手にすら取られず返品、忘れ去られる、という悪循環も待っているわけです。なので、まずは話題性から入るのはある意味正しいわけで、売れっ子作家の書く本は当然話題性ありですし、新人賞などを取った新人などは新鮮味もあるし、話題性もあるわけで、出版社が取り上げるわけです。そういうわけで、彰彦が目を付けた家永という作家は以前話題になり、盛り上がったもののその後鳴かず飛ばずで燻ぶっている作家です。話題性もないし、新鮮味もない。そんな作家に大手出版社が冒険をする必要はない。彰彦は思いっきり突っぱねられてしまいます。今まで運良く(?)売れっ子作家を多く受け持ってきた彰彦は自分が良いと思った原稿はみんなも評価してくれ、書籍化できると思っていました。しかし、それは「売れっ子作家の原稿だから」というフィルターがかかった評価だったのです。初めてといっても良い反応に、彰彦は初めて手練手管を尽くす意味と必要性を理解し、編集長の静止も聞かずに突き進むのです。彰彦自身の過去、作家の家永さんの過去、家永さんの娘さんの過去、様々なエピソードを通じて、少しずつ進んでいき、ついに書籍化OKという話になります。しかし、書籍化できればOKというわけではありません。単行本の売れ行きが悪ければ重版もされないし、文庫化もままなりません。彰彦としては非常に感動したこの本を多くの方に読んで欲しい、と思っているわけで、重版され、文庫化のめどがたつくらいでなければ安心できないのです。一度は仲違いした営業のエースと言われる男と腹を割って話して和解。果たして本は売れるのでしょうか・・・営業部会でOKもらうための努力や、現行の中で使わている詩を作者に掲載許可をもらおうと奮闘したりと、努力あり、苦労あり、と非常に楽しく読むことができました。