【書籍感想】神様からひと言
書籍の感想です。今回は「神様からひと言」です。神様からひと言 長編小説 (光文社文庫) [ 荻原浩 ]お仕事小説、というか、会社小説ですかね。大手の会社を辞めて、食品会社に「広告、宣伝のプロ」という名目で採用された佐倉涼平。転職して4カ月。新製品のネーミング決定に向け、練りに練ったプレゼンとネームの候補たち。しかし、役員は自分の既得権益の確保に躍起だし、涼平の上司は手柄の横取りをしたいのか、突然プレゼン資料をひったくり、まるまる読みだした。怒りで我慢できなくなった涼平は騒ぎを起こし、リストラ養成所と社内であだ名される「お客様相談室」へ異動させられてしまうのでした・・・お客様相談室って大変ですよね。多くの場合、ここに電話してくる時点でお客さんは怒っています。そのお客さんの怒りを解消し、かつ問題も解消しないといけないわけです。それはそれはストレスがたまることでしょう。しかも、なんでも何でも受け入れればよいというわけではありませんお客様は神様です、なんて掛け声は聞こえは良いですが、悪意があるお客さんや、勘違いの場合もあり、それらをより分けながら適切な対応が求められるわけです。苦情を言ってくるお客さんの方が強く、それに対して謝罪をするお客様相談室の人たちは立場が弱くなります。そんなところで1日中文句を言われて続けてしまえば、つらくなって辞めたくなる気持ちも分かろうというものです。そんな涼平、この会社に入る前の4年間同棲していた彼女に逃げられてしまっていました。いつもの喧嘩だと思っていた涼平だが、半年が経ってしまった。仕事も、プライベートもつらい状況の中、涼平は頑張っていくのですが。この大変な部署であるお客様相談室にもう何年もいるベテランの篠崎という男から徐々に謝る極意を学んでいくのです。1、まず謝る。相手は相手に誤ってもらいたくて電話してきている 相手の勘違いであろうと、手順ミスであろうと、まず謝らないと収まらない。2、次に相手の話を聞く。途中で遮っちゃダメ。相手の言いたいことを気持ち良く 全部言い切るまで話してもらう。3、熱くならない。イラついたり、怒ったり、という感情を抱えていると、 謝罪の言葉も相槌も台無しになってしまう。4、相手が話した後はこちらから話す。 まずは電話してもらったことに対する感謝。 指摘に対する感謝。 洞察力を褒めるのも良い。 そして、商品以外に抱えている不満も合わせて聞いてあげる。などなど。悪意のあるクレーマーはまた別の対応が必要なようですが。そんなこんなでようやくお客様相談室にも慣れてきたところで、涼平は新商品の企画に関する相談を受ける。その中で、涼平はお客様相談室だけが問題なのではなく、自分の会社の商品に自信が持てず、改善もしない、しようともしない、だれも責任を取りたがらない人々、さらには自分の懇意の会社のラーメンを商品化しようとする副社長などに嫌気がさし、その中で涼平は本当自分にとって大切なものは何かに気付いていくのでした。なかなか面白かったです。会社小説なのですが、会社の話とプライベートの話が交錯して、その中でもがく涼平を応援したくなります。