【書籍感想】三河雑兵心得8 小牧長久手仁義
書籍の感想です。今回は「三河雑兵心得8 小牧長久手仁義」です。三河雑兵心得(8) 小牧長久手仁義 (双葉文庫) [ 井原忠政 ]小牧長久手の戦いです。要は秀吉との戦いですね。茂兵衛は昔は難しいことは考えずにいられましたが、妻を持ち、子を持ち、鉄砲大将になったこともあり、やや歯切れが悪い印象。目の前な事象に対する最善だけを考えられなくなっています。それがおとなになるという事なんでしょうか。それは自分だけでなく、小牧長久手の戦い後に昇進が決まっている寄騎を死なせてしまうわけにもいかず、自分の隠し子を育ててくれる寄騎に危険な任務を任せることも怯んでしまうなど、精彩を欠きかねない状況です。それでも何とか小牧長久手の戦いをくぐり抜けます。戦力的には互角だったものの、秀吉軍を圧倒します。それは「信長憎し」という怒りの力が旧武田武士の力を倍化させたのでしょう。それは家康の寛容さが引き寄せた力、ということなのでしょう。それにしても家康は本当にずっと綱渡りだったんだなあ、と感じます。今川に人質とされ、今川が倒れた後は武田の猛攻にさらされ、信玄の死にぎりぎり救われたものの、同盟者の信長は恐ろしいほど疑り深い男で細心の注意が必要だったはずです。信長が本能寺の変で倒れ、1番の同盟者である家康の立場は非常に危ういものでした。そこを何とか乗り切り、ついに5ヶ国の太守になりました。しかし、出る杭は打たれる、とばかりに秀吉に目を付けられます。絶妙なバランス感覚がなければとても生き残れなかったでしょう。そんな家康の人生を元百姓の茂兵衛視点から見るというのは中々楽しい小説ですね。さて、ラストで家康から主命と言われて聞かれた問いに素直に答えてしまう茂兵衛。それは大恩ある平八郎に対する裏切りにもあたる回答でした。前々から少しずつ平八郎と方向性の違いを感じていた茂兵衛は遂に平八郎と仲違いしてしまうのでしょうか。次巻も楽しみです!