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プロフィール

麻生 百合之介

麻生 百合之介

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2007年12月14日
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知らない街を 歩いてみたい



ど~こか遠~くへ 行き~た~い♪



知らない海を~ ながめて~い~たい♪



ど~こか遠~くへ 行き~た~い♪



遠~い~街~♪ 遠~い~海~♪ 夢~は~る~か~ 一人旅~♪




麻生百合之介世界の旅~君は南の空にウソ十字星を見たか~  序章








神無月弐拾壱日 酉の刻之頃





『あ痛痛痛痛~ッ(T▽T)!!』


 
 「か、硬いですねぇ・・指が入っていきませんよ。」



 それは神無月初めの三連休の最後の日であった。


 御庭番・麻生百合之介は、その日、今年になって引っ越した街の近くにある整体医院で体を解していた。その前の三連休、久しびしの休みに草庵でゴロゴロしていた時、さあ、もう寝ようかなと思って立ち上がった瞬間、息が詰まるほどの激痛が腰に来た。以前、同様の現象が起こった時、腰痛に悩んでいる御奉公先の先輩に相談した所、


 ”偶に長期の休みを取って毎日ゴロゴロしていると、腰の筋肉が弱って腰痛になったりする”

 
 と聞いていたので、腰の筋肉が弱っているのだと勘違いした御庭番は、もう深夜だと言うのに、買ったばかりの訓練着に着替えて、腹筋・背筋に飽き足らず外に出て階段登り降りまでして、寝返りを打つことすらできない激痛に泣きながら寝床についた。


 翌朝になって少し痛みが和らいだので、御庭番はまだ痛む腰を庇いながら御奉公先に向かったのだが、午前中一杯で再起不能に。

 御奉公先の上士に事情を説明し、部下に肩を駆りながら早駕籠に放り込まれた御庭番は、そのまま奉公先の最寄の駅前にある藪医院に向かった。待合室で一刻以上も待たされた挙句、診察の際、容赦無く腰を捻られて出た結論が、




ギックリ腰


「ギックリ腰ですな。」





「ま、弐、参日もすれば治るでしょう。薬と軟膏を出しておきます故、服用して下さい。お大事に。」


 冷めた口調でお決まりの決め科白を言う医師の診察室を出て処方箋を貰い、草庵に戻って薬を服用しつつ、二日間御奉公を休んだが、それでも腰痛が治まらなかったので、とうとう整体のお世話になったと言う訳なのである。




『ぐっ!くくぅ~・・・』



「普段身体動かしてます?こんなに身体が硬い人も珍しいですよ。」御庭番より若僧の整体師に説教されても返す言葉も無い。御庭番は毎晩毎晩残業残業また残業で腰を動かしている余裕等無かったのである。


『い、以前は山に登っておったんでござるが、こ、ここんとこ御無沙汰で御座ってな・・・。』



「あー、腰とか膝とか痛め易いんですよねー。また山に行く予定とかあります?」



『さ、左様さ。実は近々ニュージーランドに行く予定で。



「え(゜▽゜;)?その腰で?」



『うむ。実は十年間の精勤の褒美として、藩から伍日間の休みを貰えそうなので、もう手続きしちゃった。。』



「そ、そうですか・・・。まあ、南半球は今から夏だから、腰には良いかもしれませんけど・・・。」



『今更止める事はできぬ。何しろ今止めたらキャンセル料100%だからの。』



 御庭番は藩が休みをくれるかどうか怪しかったので、直前まで旅行の予約をしていなかった。本来半年から参箇月月前には申し込みをし、壱箇月前にはもう、金を払って全ての手続きが完了している段階と言う時期に申し込みをしたのである。ニュージーランドに行こうと思ったのも、ほんの数日前のことであり、旅行代理店が慌てて飛行機の手配から、御庭番が考案した旅程表の調整をしてくれたのだった。今回御庭番が独り旅の行き先に選んだのはニュージーランドの南島にあるミルフォードサウンド。そう―





世界遺産ですが何か?

世界一美しい散歩道と言われるトレッキングコースでございます。



 ミルフォードサウンドは、ニュージランドの南島の南西部にあるフィヨルド地形の景勝地であり、ニュージランド政府が徹底的にその美しい自然を保護・管理している為、入山できるのは一日に伍十人限定と言う、選ばれし人々のみが歩くことのできるコースである。当初は案内人無しのコースを独りで歩こうかと思ったのだが、御庭番が申し込もうとした時は既に予約で一杯で、旅行代理店の薦めで、案内人付きのコースに何とか滑り込みで入ることができたのであった。



「ニュージーランドにはどの位いらっしゃるんです?」



『長月に連休があるでござろう。前後の土日と絡めると怒涛の十連休になるから十日間じゃ。実は藩の上士の華燭の典があるのだがどうせ呼ばれないからな。』


 御庭番の奉公先の上士・銭田堀衛門は、齢四十路のハゲちゃびんであるが、壱五歳も齢下の娘を嫁に貰うことになった。堀衛門殿の嫁御は、以前御庭番と同じ奉公先に勤めていたので、実は旧知の仲である。堀衛門と以前呑んだ時に”お前等は呼ばない”と言っていたので、これが御庭番を海外逃亡させるキッカケと言えばキッカケであった。


 「へぇ、十年の精勤に勤労感謝の日絡めて海外旅行なんて洒落てますねぇ。でも、独りで海外行くのって不安じゃないんですか?」


 『男児たるもの、海外の一つや二つ独りで行けんでどうする。女子供ならいざ知らず、拙者を襲う物好きなんざ海外にもおらんであろうが。ハッハッハッ!って、痛痛痛痛ッ!』



「いや。。。漢独りで寂しくないのかなって思って。。。」









そりは余計なお世話だコラ(T▽T)。




 一時間程身体を解した後、腰痛も大分軽くなった。御庭番は若僧整体師に高い金子を払って、家路に戻った。





神無月弐拾伍日之頃




”腰痛と言うより、全身に疲れが溜まってますね。筋肉に溜まった乳酸を解したので、弐、参日は疲れがドッと噴き出して、倦怠感が出ますから”


 と言う若僧整体師の言葉通り、全身物凄い倦怠感に襲われたが、根性出して御奉公先に向かった。その日は毎月恒例の御庭番評定と宴会もあり、幹事を仰せつかった御庭番は、吐き気を催す位の倦怠感があっても、休むことはできなかったのであった。御庭番は旅行代理店と密かに連絡を取り、”今日入金する”と約束をしていたので、出仕時間を少し遅らせて、両替商に寄って、大金を払って来ていた。金子を振り込んでから出仕した後、評定は申の刻頃から始まり、結論が出ないまま半刻で終わった。御庭番が他の御庭番衆を引率し、宴を開く店に向かって、戌の刻には宴が始まった。宴は一刻程続き、やがてお開きとなった。銘々帰宅する者、”もう一軒”と叫んでいる者、既に立ったまま寝ている者、様々な酔っ払いが繁華街に屯している。御庭番はこの日大金を払っていたので、もう一軒行く程の金子は持ち合わせておらず、草庵に戻ろうとしていた。





時に





「おい、百合之介。」



 と、御庭番の袖を掴むゴツイ手が伸びて来た。声を掛けて来たのは誰あろう、ウワサのアイツ・銭田堀衛門である。



「ちょっといいか」



『は?』


すると、堀衛門はどんどん人気の無い所に御庭番を連れて行くじゃあーりませんか(T▽T)。





何か嫌な予感がします(--;)



 まさか襲われることはあるまいと思っていたが、やはり暗闇の中で人気の無い所に拉致されたのでは正直ビビリます。御庭番が堀衛門と対峙すると、夜のネオンの光が、堀衛門の頭の上に落ちて輝いている。



「あのさー、カミさんがやっぱりお前にも結婚式に来て貰いたいって言っているんだよ。結婚式、お前来る?







・・・・・(゜ー゜;)。。。







はい(T▽T)?





 あのですね、皆さん。結婚式の招待状って、普通弐箇月前とか参箇月前には貰っていません?しかも前に呑んだ時に”お前ら(注:御庭番衆)は呼ばない”って言ってただろこのハゲちゃびんめが。

 御庭番だってですね、独身貴族の星とも言うべき、説教ばっかり垂れてても世話になっている上士の華燭の典を心から祝いたいと思っていたとですよ。







しかしキャンセル料100%をどうしたものか
(T▽T)





御庭番は堀衛門から其の言葉を聞いた瞬間膝から崩れ落ち、



『ちょ・・・ちょっと無理ッス(T▽T)。。。



と、力無く答えた。



「え?あ、そう。じゃ、いいよ。そう言えば休むとか言ってたもんな。まあ、俺の結婚式よりも大事な用があるんなら仕方無いな。判った。ヨメさんに言っておくよ。」





あのですね、上士?





なんでそんな眼をするんですか
(T▽T)?

(拙者が悪いのか、拙者が?)




『い、一応ちょっと考えさせて下され。』



「いいよ無理しなくても。じゃあ、俺はもう一軒行って来るから。」



と言って堀衛門は去って行った。御庭番はホロ酔い気分も一発で冷めたまま、冬の北風が吹き抜ける繁華街に独り佇んでいた。




さあ、『究極の選択』に迫られた御庭番の決断は如何相成りますでしょうか。続きは次回をご覧下さいはあと





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最終更新日  2007年12月15日 02時27分51秒
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