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長月壱拾質日 亥之刻 之頃 日中は汗ばむ程の陽気とは言え、陽が落ちれば暖房を入れる程温度差が激しいクィーンズタウン。御庭番は、ホテルのバルコニーで途方に暮れていた。時刻は既に23:00。幾ら陽が落ちるのが遅いとは言え、人通りは日中のそれと比べればめっきり少ない。ニュージランドに着いたその日から、窓ぶっ壊して部屋に乱入するのも憚られるので、御庭番は何とか穏便にこの危機を脱しなければならなかった。 ふと、下を見ると、1階下のバルコニーに人影が見える。どうやら1階のバルコニーは、部屋続きになっているらしく、人影は階下の宿泊客と思われた。だが、日本人ではありません。どうやってこの状況を説明して助けを呼んだらいいか、迷った挙句 (T▽T)!! と大声で叫んでみたのでござるがシカトしやがったぞこのジンガイめが。2、3回声を掛けたが、気がつかないフリして部屋に戻ってしまいました。(あんなに目と鼻の先にいたのだから聞こえねー筈がねー。) 他にもホテルの前の通りを歩いていたヤンキーに声掛けてみたのだが、誰も気づいて下さりません(T▽T)。こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎて行き、半袖シャツ姿の御庭番の身体はしんしんと冷えて行った。 明日の集合時間は8:30。その時間までに今日の説明会が開催されたアルティメットハイクス社に行かないと、この旅の最大の目的であるミルフォードサウンドのトランピングに参加できません。 それより何より、この寒さに耐えて寝るのイヤ過ぎだろ。 御庭番は遂に腹を括り、ある方法でこの状況を脱出することに決めたそれは― バルコニーから下の階に 降りて行くしかないじゃん。 御庭番はバルコニーの横に上の階から下に伸びている雨樋を掴んだ。御庭番の体重に耐え得るか不安であったが、思った以上にしっかりしていたので― 脱出開始。 3階から2階のバルコニーまではおよそ3m程度の高さ。山登りのフリークライミングからすれば、この程度の高さを降りることは御庭番には容易であった。 むしろ問題になるのは人に見られやしないかと言うことです。 だが、幸いなことに深夜であったので、往来の人通りは少なく、時折ホテルの前をヘッドライトを点した車が物凄いスピードで走り去って行くのみ。 無事階下のバルコニーに下りた御庭番、しかしここで新たな問題が。 2階のバルコニーは複数の部屋に跨る広いテラスの様になっていて、そのテラスの周囲を囲う様にして、排水溝があるのみ。御庭番が降りたのはテラスのど真ん中で、5部屋の内、2部屋はまだ室内の照明が点いている。テラスをウロウロしながら雨樋を探したりしていたら、挙動不審人物として、警察に通報されてしまいそうです。かと言って、テラスから勝手に他人の部屋に入って行ったらただの変態だろ。どっちにしても明日のニュージーランドの新聞のベタ記事に載ってしまいかねません。 非常階段って無い (゜▽゜;)? これだけ大きなホテル。テラスも広いのだから、きっと非常階段もある筈。右か左か迷ったが、御庭番の部屋の位置からして近いのはホテルに向かって右の方。しかし、左側の部屋は二つとも明かりが漏れているじゃあーりませんか(T▽T)。 しかし、ここでまごまごしている方が危うい。御庭番は、ここでも苦渋の決断をしなくてはならない!! さあ、行くぞ!! の 惨!! (頼むから”惨め”と読んでくれるな) 御庭番は風の様に広いテラスを横切り、テラスの端っこまで人に気づかれずに辿り着くことができた。が― 今度は非常階段がありません (T▽T)。 (嗚呼・・オチまみれの人生) (こ、ここまでかっ(T▽T)!!) と思ったが、よく見ると、手摺りが付いている壁の向こう側に暗くて良く見えないが、階段の様な物が見える。どうやら影の中の階段は下の階まで続いているらしい。その暗闇の中にぼんやりと見える階段に降りる為、御庭番は手摺りを果敢に乗り越えた。ここまで来たらもう一か八かではない。やれるのかーッ!をいっ!!と言う気持ちである!! 脚が届かなかったんだなコレが (T▽T) レセプションがあるB1階は、ホテルのロビーがある為、宿泊フロアより階層が高いのです。恐らく6m以上の高さであったでしょう。こっから落っこちたら (ニュージランドまで来て骨折ってトランピング参加しなければこれがホントの骨折り損) 御庭番は両手でテラスの手摺りを掴んだまま、必死で脚を伸ばしてもがいていた。しかし、無情にも脚は地面に触れることができない!! もう駄目かと思った時、暗闇に慣れた御庭番の眼に― 綺麗なお花が見えるじゃありませんか。 最初は暗かったので良く見えなかったが、どうやら御庭番が飛び降りようとした階段の所は花壇になっているらしい。花の位置からして、足元の花壇までは残り50cm程度。地獄に仏とは良く言ったモンだ。御庭番が勇を鼓舞して、己の全体重を支えていた掌を離すとあっさりと着地。そのまま階段まで飛び降り、正面の入り口まで廻って、レセプションのカウンターに飛び込んだ。 『ぃ・・・ぃくすきゅーずみぃ。まぃ るぅーむず ばるこにー ぃず ろっくど。いてぃず のっ ぽっしぼー つぅ えんたぁ だ るぅむ。ぷりーず れんと みぃ あなだきー?』 血相変えて外から飛び込んで来た半袖漢に、レセプションのシンディーは最初怪訝な表情をしていたが、事情を理解したらしく笑いを堪えながら新しい鍵を作ってくれた。こうして御庭番は222号室の新しい鍵を手に入れ、よーやっと奇蹟の生還を果たしたのである。 部屋に戻って室内に置いてあったルームキーを持ち、新たに作って貰った鍵はレセプションに返して、再び魔の222号室に戻った御庭番は、事件の現場検証を行ったのだが、バルコニーに続く横引きの扉は、上から下にハンドルを下ろして施錠するタイプでは無く、下から上にハンドルを上げて施錠するタイプつまり― (T▽T) (・・・・もう寝よう。。。) 時計の針は0:00を廻っている。御庭番は全てを忘れる為に日本から連れてきたトモダチのシーバスリーガルを呑んで泣きながらベッドに潜り込んだ。こうして御庭番のニュージランド一日目の夜は更けて言ったのであった―。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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